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2016.04.25 議員活動

現職議員が語る二元代表制のリアル(下)

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絶望から希望へ、地方議会の未来は

――最後に、全国の「政策派」議員の皆さんに一言お願いします。
黒川 いろいろ絶望的な話をしたけれど、せっかく議員になったのだから、前向きにやるしかないわけです。5年、10年で世の中が変わるなんて思わない、自分一人の力で変わるなんて思わないで、大きな流れがだんだん自分の方に近寄ってくると思えば、いろいろ言うべきことはあるし、やるべきこともある。倦(う)まずたゆまずやっていくことではないかと、自分自身にも言い聞かせたいと思います。
 それと、簡単に自爆しないこと。長持ちするようにやっていった方がいいのかなと思います。半田さんみたいに偽悪趣味的(笑)な議員もいるけれど、三鷹というまちの中でこんなことを公で言ってくれる人なんてそうそういない。やはり地域の貴重な人材には変わりない。あと、仕事というプライドを持つことが大事だと思いますね。
鷹羽 対立からはやはり何も生まれない。どうせ与野党の構造の中で自分は相手にされないというのが本音であったとしても、それをひがみ根性にしてもいけないし、与野党対立を引きずっていてはだめだと思います。まあ、実態として腹の中でわきまえておくとしても、それを対立にしてはいけない。でも、丸め込まれる必要はない。
 また、1期目の皆さんとよく言うのですが、だいたいの人は自分の方がおかしいのかと思ってしまうんですね。でも当たって砕けたら元も子もないですから、これは言わなければいけないというときのためにストックはしておきましょう。どうしてもこれは言わなければというときは、砕けようが何だろうが、しっかりかみつく。そうでないときは、バランスを見ながらやっていくことですね。
 そして、石を投げ続けること。脈々と続く、お代官様と庄屋さんの文化の中で平和にやってきている世界なんです。私たちの仕事はそこに石を投げ込むこと。石を投げ込んで、波紋が起きるところまでで、ある意味いいと思っています。そんな役どころと思っておけばいいのかなと思います。
半田 私は以前、銀行に勤めていましたが、およそ3年ごとに転勤命令が出ました。3年ごとに住むところが変わるわけです。そうした転勤族にとって、4年に一度の地方選挙にどんな意味があるのか。人は移動の自由があり、かつ会社の転勤命令などで、意思に関係なく転居の必要も発生する。毎日の生活に追われて手一杯の中で、唐突に選挙があるわけです。そんな状況では自治もへったくれもない。やれ選挙だ、投票率だ、民主主義だといわれても、そんなの大きなお世話です。何よりも会社との関係が良好であればいい。課長に一杯酒をつげればいい。家に帰って、母ちゃんの機嫌がよければそれでいい。これが現実です。20年後、30年後の未来まで議員が責任をとれるなんて思っていません。
 そんな状況の中、いったい地方議員に何ができるのか。2期目、3期目は、だいたい壁にぶち当たります。私は悩んだ末に、我々の本番は、議会の一般質問で市長にお願いすることではなく、決算予算の委員会の場できちんと調査をして、情報をつかんだ上で、行政に問題提起をしていく。これこそが、地方議員がやらなければいけない仕事だという、自分の哲学を打ち立てました。そのために、おのれの頭で考え続けることが本当に大切だと思っています。新聞を見たり、ラジオを聞いたり、テレビを見たりして、何か疑問に思うことがあった。あれ、俺はこう思うのにな。いや、あいつはこういうふうに言っている。比較検証しながら、自分なりに理論づける。批判がきたら、その批判を受け止め、さらに練り上げていく。
 地方議員は皆さん悩みが多いでしょう。ときにはSNSを利用して悩みを持っている人同士で、愚痴を言ったり、実際に会って酒を飲んだり、横のつながりをつくったり、こうして一緒に雑誌で対談したり、今後は一緒に本を書いたりもしてみたい。これまでになかった、未来につながる横のネットワークを広げていきたいですね。
――本日は三人三様の本音トーク、ありがとうございました。政策に至る議員の道は厳しいと思いますが、これからのご活躍を応援しています。(編集部)

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〈プロフィール〉

鷹羽登久子

鷹羽登久子 たかば・とくこ
大府市議会議員。1966年愛知県知多郡美浜町生まれ、知多郡東浦町で育つ。結婚して大府市へ。元夫の転勤で広島市安佐南区、福岡市東区に延べ6年。大府市に戻り現在に至る。
学歴:東浦町立片葩小学校、東浦中学校、愛知県立刈谷北高等学校、愛知淑徳短期大学国文学科卒業(女子は4年制大学に行ったら就職できないといわれていた頃でした)。
職歴:【正規雇用又はフルタイム】河合塾予算管理室に新卒で就職。育児休業制度がなかった時代、出産を機に退職。夫実家の家業従事。自動車部品メーカーの事務正社員。飲料ベンダー会社の経理事務。【非正規】アクセサリーショップ、食品製造加工会社、ダスキンハーティ(交換に定期訪問する人)、スーパーの早朝品出し、ブックオフ倉庫で古本の仕分けやピッキング、コールセンター派遣(非正規は掛け持ちのものもありました。出産で一度正規ルートを外れると、生活のために雇ってくれるところを転々とするしかない、の典型な経歴ですね)。
成人した3人の子は独立し、今は保護猫と同居。
ホームページ http://teamtokuko.jimdo.com/
Facebook https://www.facebook.com/TakabaTokuko/
ツイッター https://twitter.com/takaba_tokuko

黒川滋

黒川滋 くろかわ・しげる
2011年12月~朝霞市議会議員、2期目。保育・介護・都市交通など都市の安心に関わる課題に取り組む。1970年生まれ。18歳まで朝霞市で育つ。高校生のときに学生運動のまねごとをしていたときの仲間の誘いで政治に接点を持ち始める。1989年進学を機に、バブル難民として札幌市で独居を始め、そのまま札幌の老舗文具卸売業に就職。9年間に選挙の支援や社会的な運動と関わりながら、北海道の市民運動、労働運動、政治が一体となって社会改革に取り組む西欧社会民主主義的な風土を体験。1998年自治体職員や公共サービスで働く人の労働組合、自治労中央本部の職員に転職。福祉や臨時・非常勤職員の運動を仕事に。2011年11月退職し、朝霞市議会議員に立候補し、12月に当選、2015年12月1,400票で2回目の当選。
ブログ「きょうも歩く」 http://kurokawashigeru.air-nifty.com/
ツイッター https://twitter.com/kurokawashigeru

半田伸明

半田伸明 はんだ・のぶあき
三鷹市議会議員。1970年福岡生まれ。11歳で三鷹市大沢台小学校に転入。三鷹第七中学校卒業。中央大学法学部法律学科入学。大学では憲法研究会に所属。特に地方自治を勉強。卒業後、あさひ銀行(現りそな銀行)入行。中小企業の財務分析に明け暮れる。財務分析能力は地方自治の健全化のための大きな武器と考える。2003年33歳で三鷹市議選に初当選。翌年、借金予算案に賛成する民主党三鷹と決別し離党。以来、政党や組織、しがらみに全く関係ない完全無所属を貫く。選挙カーを使わず、選挙ポスターも自費作成するなど、選挙に税金を使わないスタイルで、2015年には4期目の当選。妻と、10歳、6歳の息子とアパート暮らし。
ブログ http://ameblo.jp/handanobuaki/
ツイッター https://twitter.com/handa_nobuaki

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