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2016.04.25 議員活動

現職議員が語る二元代表制のリアル(下)

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地方創生は全国共通ではない

――さて、次に国の地方施策の目玉といわれている「地方創生」について、皆さんの議会ではどのような議論が行われているかお聞かせください。
鷹羽 そもそも地方創生と打ち出したからといって、自治体に改めて新しい計画を1個つくってこいということ自体が問題だと思います。
 すでに各自治体では総合計画や個別計画を作成し、その中に自治体の状況に合わせた内容を織り込んで動いているわけです。その上さらに、計画を出して初めて地方創生の交付金が下りるから、いろいろな計画がつぎはぎになってしまう。
――議会としては、それぞれの計画をどのように整理されていますか。
黒川 議会は、そういう計画の整合性に関する審査を放棄してしまっています。地方創生予算で子ども・子育て支援の担当やシティプロモーションなどの現場の職員のスキルは上がったとしても、人口減少のような複雑な問題に対しても旧態依然とした議員の発言は、マタハラ的になってしまいがちです。
鷹羽 国が地方創生で旗を振っている「消滅自治体」向けの内容と、都市部の政策課題にはすごく温度差を感じます。縮減社会しか前提に考えられていない。地域循環型社会を目標に掲げても、都市部に行けば行くほど朽ち果てています。資金循環や地域コミュニティが崩壊しており、共助など成り立たない。そこに、地域のことは地域で決定してくれと言われても、難しいと思います。
半田 これでは地方分権ではなく、国家主権の押しつけですね。もし私が市長だったら、地方創生で望むことは、ほぼ100%規制緩和です。
 だから、地方創生をやりなさいと言われて、やる必然性は実はないということを論証できる首長が出るのではないかと思いますが、なかなかいないですね。みんなお金が欲しいから、言われたとおり、何十年後に人口を何倍にしますなどと出してしまうのです。国主導で地方創生をやること自体が、実は国家主権だということを、地方議会はいま一度認識しておく必要があると思います。
黒川 朝霞市は東京のベッドタウンで、選挙というと都市型の天下国家の政策が話題になりがちですが、これは本来の自治の問題ではありません。私は、朝霞市の地方創生に関して、「もし災害等で東京が消滅したら」を考えることなども話題にしました。
半田 そのとおりだと思う反面、消滅するなら消滅してもいいのではないかと思う。少し過激な言い方ですが、例えばうちの市の人口が半減して消滅したら困ると言っているのは誰かという話。
黒川 ロジック的には面白い話ですが、そうではなく実際に災害が起きた場合に住民を避難させたり、生活の支援をするのは市の職員の皆さんです。朝霞市の防災計画では地震と火事しか想定していない。例えば、大災害が起きて東京が機能停止になったと仮定して、1か月以上も食料も水も供給できなくなったら、そのときにどうすべきか、「地方創生」は、そういうことも考えるチャンスなのだろうと思います。そういうときに愛郷心で踏みとどまれみたいなことを言えるのかと。自分の自治体はもう終わりです、とにかく逃げろと、逃げることを市は助けられるのか。
 「地方創生」というのは、自分のまちはいったいどのようにお金や人が入ってきているのかということを再認識し、そこを議論するよい機会です。出生率がどれぐらい増えるかとか、そんなことを日本中で議論してもしようがない。自分の自治体の極限状態を想定することをやらなければいけない。朝霞市は東京のベッドタウンだからこそ、東京が消滅したらどうしたらいいのかを真剣に議論しなくてはならないわけです。
鷹羽 結局、地方創生そのものが国策なんですよね。地方創生の看板には地方と書いてあるけれど、国策として東京一極集中では困るし、このまま、いわゆる消滅自治体といわれた郡部がどんどん細っていって、それを維持するために配ってやる金がもう国にはない。
半田 正直、創生されたら困る。
黒川 私は、そういう都会の被害妄想的なことをいっていてもしようがないと思う。農村でいうと、縮小均衡の状況は徐々にできてきていると自分の父の郷里などを見ても思います。人間関係が濃くなってきているし、いろいろなことをみんながやるようになっている。対して、うちのベッドタウンなどはそんなことをやらない。どちらに未来があるかと考えたら……。
鷹羽 議会や地方自治というか、住民自治、地域自治の力ですね。日本は、国の統治が行き渡っている国だと思うんですよね。
黒川 国の統治が行き渡っていて、末端がそれに恭順する仕組み。これは1940年代にできた仕組みなんです。そんな中でも「日本は戦争中のように自治を否定した時代でも、結局そこにはそこここでみんな自治をやっている仕組みがあった」というようなことをおっしゃる先生もいます。
 もとからあった地域自治の仕組みを国家が上手に利用したわけで、自治の仕組み自体はそんなに簡単に壊れるようなものではないだろうと思うのです。
――それは力強い言葉ですね。
黒川 ただ、歴史のないベッドタウンは問題なんだと思う。アメリカほどではないけれど、ニュータウンやマンション群のゲーテッドタウンで自治ができるのか。例えば保育所にしても、企業がつくってくれたらというように、民間会社に生活のいろいろなことを寄りかかろうとしている傾向があります。
鷹羽 町村部では、議員としてどう政策立案をして、どう政策提言をするかというのとは全く違う次元で、地域自治が生きているがゆえに、庄屋さん、お代官様の仕組みが確実に残っている。
半田 例えば、会津などでは人足という制度があって、道路の補修や植木のせん定などに毎週必ず駆り出される。
――川さらいや、赤い羽根募金の集金など、地区や班をつくって当番で回している地域はたくさんありますね。
半田 そういう生まれながらの自治というのは、仕組みとしては残っていて、そこに強制的に入らされているという現実がありますよね。そういう根本の自治のあり方の議論と、国の地方創生のあり方の議論では、当然次元が違う話だと思いますが。

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