八王子市議会議員/全国フェミニスト議員連盟会員 陣内やすこ
えっ!? 議会でもセクハラ? とんでもない!!
「全国フェミニスト議員連盟」が2015年7月に発行した「自治体議会における性差別体験アンケート報告集」は、大きな反響を呼んでいます。言論の府でもある議会において、女性議員たちが「女のくせに生意気な質問をして」、「家で飯はつくってんのか!」などといった言葉の暴力、そして様々な性差別にかなりの割合でさらされていることを、データで「見える化」したからです。当連盟は、日本の政策決定の場である議会にあまりにも少ない女性議員を増やしていくため、1992年に全国の市民や議員でつくった超党派の会員組織です。フェミニズムに根づいた政治と市民の活動をサポートしています。
日本での男女平等の取組は大変遅れており、世界経済フォーラムが2014年に公表したジェンダーギャップ指数は、142か国中104位です。ジェンダーギャップ指数とは、男女の格差の指数で、2006年の「世界経済フォーラム(ダボス会議)」で創設されたものです。男女格差の解消が世界経済の発展につながるとして、格差解消に役立てる資料として国別・地域別に経済・政治・教育・健康維持の4項目を算出根拠としているのですが、特に政治の分野において、日本はなんと129位という低さです。
女性の議員にフォーカスしてみると、女性議員比率を公表している列国議会同盟(IPU)の統計によれば、2015年1月1日現在、日本の女性議員比率は9.5%で、190か国中113位、先進国の中で最低水準です。IPUのデータは、衆議院の女性議員数を根拠にしていますが、地方議会も似たり寄ったり。内閣府男女共同参画局が公表した「女性の政治参画マップ2015」によると、都道府県議会においては、かろうじて女性ゼロ議会はなくなったものの、佐賀県、石川県、香川県においては、女性議員はたったの1人です。市区町村議会の平均は11.8%ですが、なんと女性議員が1人もいない「女性ゼロ議会」は、2割にも及んでいることも明らかになっています(2015年7月共同通信調べ)。
つまり、今まで背広姿の男性ばかりであった議会に、女性が入っていくことによって、まさに排除・嫌がらせのターゲットとなっていったわけです。男女平等は憲法にも定められているにもかかわらず、議会という政策決定の場が著しく男女平等とかけ離れていることから、政策のゆがみだけでなく女性議員当事者にもセクシュアルハラスメント(セクハラ)として攻撃が向けられる、という構図ができ上がってきているのです。
なかったことにしない――発端は都議会セクハラヤジ事件
2014年6月18日、東京都議会において、女性議員が「女性の妊娠・出産をめぐる都の支援体制」についての一般質問をしているときに、議場から「早く結婚した方がいいんじゃないか」、「自分が産んでから」、「産めないのか」などのヤジが浴びせられ、議場から嘲笑がわきました。議長(男性)は、その不規則発言を制することもしませんでした。どうして知らない人から、公の議場という場で、結婚する/しない、子どもを産む/産まないなどといった個人的なことを揶揄(やゆ)されなければならないのか、あまりの理不尽さに、全国の女たち(男たち)は憤りました。多くの直接的な抗議の声ばかりでなく、抗議の署名が4,260筆、複数の請願・陳情が都議会に寄せられたことがそれを証明しています。
私たち全国フェミニスト議員連盟は、「女性は子どもを産んで当たり前、といった考えを放置しては、女性の政治参加が一層阻まれかねない」との問題意識から、5日後、「東京都議会セクシュアルハラスメント発言に対する抗議および要請」を都議会に提出しました。それとともに、他の自治体議会でも同様なことがあるとの思いから、その実態を明らかにしようとアンケート調査を行うこととしました。
民主的なジェンダー平等な議会文化をつくっていくためにも、最も遅れている女性の政治参画を阻む要因を取り除くためにも、自治体議会における性差別の実態を明らかにし、社会に問題提起し、少しでもジェンダー平等な議会を目指す、これがアンケートの依頼文に書いた目的です。
調査結果の概要
7月12日、全国フェミニスト議員連盟サマーセミナー in 佐渡を皮切りにアンケート調査を開始しました。当連盟の会員(約200人)にメール・ホームページで呼びかけるとともに、女性都議会議員25人全員、並びに東京市区女性議員404人に議会事務局を通して依頼。また、研修や集会などで直接手渡しをするなどの方法で、配布総数は500通以上に及びました。わずか1か月半ほどの期間でしたが、143通の回答が得られました。
そしてその結果は、議員あるいは職員から性に基づく嫌がらせや不快な言動を受けたことがある割合は52%。なんと半数以上に上るというものでした。しかも、被害の回数が数えきれないくらい、としたものが、被害経験者の2割近くに上ったことは驚くべきことでした。そして、特に注目すべきことは、1期目のときに性差別被害に遭っている議員が多いという結果でした。
また、母数は少ないのですが、女性議員1人の自治体の回答者が8人いて、そのうち75%に当たる6人が、「被害あり」と答えています。女性議員比率と被害体験との関係は明確ではありませんが、女性議員比率が10%未満の議会において、性差別体験議員の比率が73%であることからも、女性議員の少なさが性差別被害の可能性を高めていると考えられます。自分たち(男性)の聖域・居場所に侵入してくる異分子だから「嫌がらせをしてもいい」、あるいは「はじめにガツンとやって大きな顔をさせないぞ」といった、男性議員たちの暗黙の了解があるといってもいいでしょう。
具体的な事例は多岐にわたっています。胸を触る、ズボンの上からお尻をなで「いいケツだな」というなどの身体接触は、民間企業であれば首にもなりかねないレッドカードものです。「女に何ができるんだ」、「女の子なんだからおとなしくしていなさい」といった威嚇や見下し発言は一番多かったものです。女性議員を対等な同僚として認識していない証拠であり、また、「黙れ、そこの女」、「女の分際で!」という発言からも分かるように、女性蔑視から抜け切れていないといえます。「家事はどうなっている?」、「コンパニオンがいるから」といった性別役割分業の押し付けも多くありました。女性だからといって、懇親会などの場面でお酒をつがせることを強要したり、平気で買い物に行かせたりする光景が目に浮かびます。
集団的セクハラの事例として、“議員の控室でお茶をいれていると、男性議員が話しかけてきて、腰に近い背中に触れた。それを見た他の男性議員が「セクハラか? やられている方が喜んでいるから違うな」といって、部屋中が笑いになった”という記述があり、大勢の中で笑いものにされるという、その女性の痛々しさが手にとるように伝わってきます。
また、“「セクハラです」というと、「褒めたのが悪いのかね」”と、被害をないものにする構造も報告されています。集計作業は「こんな行為をする人が議員をやっていられるんだ!」、「あるよね、こういったこと、ほんとひどいんだから」というまさに驚きと怒りの連続でした。しかし、男性議員にとっては「何で、いけないの」といったように、性差別行為や発言に無自覚であるといえます。
被害に遭った場所は、本会議場以外にも委員会や他の会議の折、視察先や移動のバスの中、庁舎内や廊下など、どこでもあり、といった状況です。
自分自身でなくても同僚の女性議員が性被害に遭っていることを見聞きした経験、男性議員への性差別を見聞きした経験なども、併せて聞きました。
議会の内外で起こる性差別行為に対して、女性議員たちは、どう対処しているのでしょうか。差別的発言に対して、日常的に取り組んでいることとして、おおむね半数の人が何らかの取組を行っていると答えています。その場での抗議が一番多く、そのほか、議会の一般質問で男女平等政策をたびたび取り上げたり、セクハラ防止研修の要望や傍聴を呼びかけるなど、市民と一緒の対応が目指されています。
調査結果からいえること
予想していたとはいえ、日常的にセクハラに直面している女性議員の多さが明らかになりました。私たちは、何ともやるせない思いでいっぱいになりました。特に1期目で女性が1人や2人の議会でのセクハラ被害が多いことから、「お前が来るところではないんだぞ」といった脅しを感じます。
議会の中で感じる、目に見えない男性たちの奇妙な共存ネットワーク、そこから女性議員ははじかれています。市民の負託を受けて、同じように選挙で当選してきたにもかかわらず、対等な同僚議員ではなく性的対象としての「女」という位置付けともいえます。だから、抱きついたり触ったりといった身体接触や「女のくせに」といった侮蔑発言などが、公然と容認されてしまっているのです。
そんな中、男性化することで、あるいは女性役割を積極的に担ってしまうことで、自分の居場所を見いだす女性議員もいます。しかし、女性議員が複数化していくことで、「私はわたし」との主張が存在感を持ってきます。これも、ただ女性議員が増えていくことでその存在感が得られるのではなく、一つひとつのセクハラ発言に対し、その場で抗議していく、あるいは、議会の中で男女平等施策を積極的に取り上げていくといった努力によって得られているものだということも、調査から読み取れました。
また、「何がセクハラか?」ということに関し、自らの性差別被害に対して感度の高い人は、他の人の性差別被害に対しても感度が高くなっている傾向が見られたことから、性差別の実例を可視化することの重要性にも改めて気づかされました。
そして、さらに重要なこととして、「被害者」でも「加害者」でもない「第三者」の存在が、セクハラ防止に必要であるという視点でした。報告集への寄稿で、東京経済大学准教授の澁谷知美さんは、「ハラスメントや暴力問題にかかわっている当事者は、被害者や加害者だけではない。第三者が暴力に対して黙っていれば、暴力は容認されたこととなり、さらに蔓延する。反対に第三者が批判の声を上げれば、暴力の抑止力になる」としています。
アンケートからも、「傍観する第三者」、「ハラスメントを積極的に認める第三者」の姿が浮かび上がってきます。前述の集団的セクハラの場面でのはやし立てる傍観者や都議会セクハラヤジでの制止しない議長や一緒に嘲笑する男性議員たちなどがそうです。
次のようなアンケート記述などにおいても、第三者の抑止力のなさが如実です。
“会議後の懇親を兼ねた酒が入った夕食のときに、当時の助役が股間にビールびんを挟み、卑わいな踊りをしたので抗議をすると、他の議員が「まあまあここは余興だから……」といって制止した。”
一方、「抑止力となる第三者」の存在がないわけではないという希望もありました。議員同士の酒席で、腰に手を回したり、抱きつきそうになった男性議員に対し、回答者は振りほどいたのですが、同時に、全員男性である他の議員たちが、「こらー」と加害者を制したというのです。澁谷さんから、まさに第三者の対応として大変理想的なもの、と評されています。
女性議員を増やし、孤立化させない。積極的に男女平等施策や人権問題を取り上げて話題にしていく。何がセクハラか、男性だけでなく女性も敏感になっていく。セクハラ被害の「抑止力となる第三者」を増やす。こんなことが、アンケート調査から見えてきた「組織(議会)の自浄能力」を高めるすべといえます。
女性議員が議会で活躍できるには
私たちは、今回のアンケート結果を受けて、全国都道府県議会議長会、全国市議会議長会、全国町村議会議長会(以下「三議長会」という)の各宛てに、「性差別や人権侵害のない、女性が安心して参画できる議会にすることを求める意見書」を提出し、また、各所属議会でも働きかける活動を提起しました。
この意見書では、要求項目のひとつに、会議欠席理由として「産休」を明記し、母体保護のため、産前産後の16週の休暇を認めるよう求めました。
これらの働きかけもあって、2015年5月、三議長会は、女性議員が出産を理由に議会を欠席することができるよう、各議会会議規則のモデルとなる標準議会会議規則を改正しました。大きな一歩です。
また、ハラスメントを防止し、国際基準である「ジェンダーに配慮した議会」への認識を深める研修等の実施も意見書の中で求めたのですが、議会のルールは各議会それぞれなので、これからの取組といえます。各議会で議会改革の取組が進んでいますが、ハラスメント研修の実施をきちんと明文化していく必要があります。
市民に開かれた議会にしていくことも重要です。今回の都議会セクハラヤジ問題が大きな社会問題となった背景には、SNSやテレビ中継を通して、議会でこんなひどいことが行われている、ということを多くの市民が見て、怒りを共有したからです。議会でどんなことが行われているのか、常に市民に対して明らかにしていくなど、議会の透明性を高めていくことが、「組織の自浄能力」を高めることにもなっていきます。
そして、何といっても、議会や政治を男性の聖域にしないで、女性議員を増やしていくことに尽きます。どうやって女性議員を増やしていくかについては、クオータ制(割当制)の導入など、仕組みとしての取組が要です。
私自身、4期目の市議会議員です。立候補の動機は、男女平等、自分たちの暮らしの実感を政策にしていく、という思いからです。所属議会の女性議員比率は25%で、なかなか増えません。そんな中で、セクハラ研修を実施することを提起はしているのですが、「積極的にやる必要はない」といった意見も多く、理解を得るにはまだまだの状況です。しかし、この報告集を各議会等に購入していただき、「これもセクハラなんだ」といった理解から進めていきたいです。
ぜひ、多くの議員並びに市民の方に、この報告集を手にとっていただき、女性議員が安心して仕事のできる議会にするよう、働きかけていただきたいと思います。
●報告集の申込方法
info@afer.jp まで「報告集購入希望」の旨をご連絡ください。
頒価 500円(送料別)

