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2015.09.10 議員活動

気がつけば、天職

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流山市議会議員 加藤啓子

議員2期目始動中

 写真は大学生に議員の仕事を説明している姿である。全くといっていいほど政治に興味のない若者にどうやったら興味を持ってもらえるか。街頭に立ち目にするのは、ポケットティッシュには手を伸ばすが、大事な市政情報には知らん顔の人たちの姿である。そんな日本の社会人に私は危機感を持つ。政治は私たちの生活のほとんどのことを決めている。興味を持たなかったら一部の意見だけでどんどん大事なことが決められていき、後で反対しても間に合わない。自分たちの未来は自分たちの手でつくり、頭で考えてほしいと願う。

「議員の仕事」について起業家を目指す若者に講演する筆者(国立オリンピック記念青少年総合センターにて)「議員の仕事」について起業家を目指す若者に講演する筆者(国立オリンピック記念青少年総合センターにて)

 そういう私も、特に政治に興味を持っていたわけではない。民間企業勤務が長かったのだが、たまたま市の公民館で働くことになったときに、あまりにも民間企業の常識とかけ離れた市役所の体制に驚いた。文句を言うなら自分でやらねばという気持ちで、自分で何か変えることができるかもしれないと思い、地盤・看板・かばんがない状態で立候補した。皆さんのご支援のみで当選したのが5年前。それからは毎回、一般質問に登壇し、様々な提案をしてきた。
 私たちの住んでいる流山市は、市民参加が大変進んだ街である。市の業務をいろいろな形で市民が担っている。自分が関わることで街が変わっていくのを見るのは本当に楽しい。やりがいのある仕事である。若い世代にも仕事で疲れ果ててばかりいないで、地域に目を向けて自分たちの手で自分たちの街を住みやすくしてほしいと思い、市政勉強会をこの4年間(正確にいえば議員になる2年前から6年間)続けている。今年の統一地方選挙で、その勉強会の仲間から平成生まれの議員(なんと息子と同い年)が誕生した。
 人生というのは思わぬ展開があるものだ。自分のライバルを増やす活動なんて、「余裕だね」と言われるが、ライバルと考えるか仲間と考えるかである。後輩に負けない票をとることができてほっとする暇もなく、2期目は委員会で役職がつき、様々な議会活動で忙しくしているが、充実した毎日である。

走り続けた20年

 私自身は子どもの頃から「女性は経済的に自立しなければいけない」と思っていた。このように思う背景には、幼い頃に母のところにかかってくる叔母からの電話ではないかと推測する。「夫が飲むと暴力をふるうが、子どもたちのために別れられない」という内容の電話が知らず知らずのうちに、幼い私に「経済的に自立した女性」でありたいと思わせてきたと思う。
 就職は「定年まで勤められる会社」で「女性の管理職がいるところ」という基準で探し、初の女性部長のいる大手損害保険会社へ入社した。「女性の部長を目指すぞ!」と意気込んでいたが、その夢はわずか入社1か月で崩れた。初の女性部長は「企業の宣伝広告塔」であり、初めて参加した組合の会合では、結婚後、肩たたきにあった女性社員の問題が取り上げられていた。対外的なイメージと実態が乖離(かいり)している現実に直面した20歳の秋であった。
 次の年の昭和58年からは女性の総合職入社が始まり、四大卒だというだけで短大卒の私たちの先を行く女性が現れた。負けず嫌いの私は、仕事と子育てをしながら放送大学を卒業した。四大卒の資格ができたら総合職になる切符が手に入ると思い込んだのだ。総合職の女性はその後どうなったか。ほとんどの女性が、家庭と仕事との両立に苦しみ退職してしまった。その中で、私は一般職でありながら組合に掛け合い「時間短縮制度」などを提案し、育児休職取得第1号となり、3人の子どもを育てながら20年間仕事を続けた。男性には外に7人の敵がいるというが、女性には同性の敵も存在し、子どもを育てながらの仕事は精神的にも肉体的にも私をタフな人間に育て上げた。
 先日、「あのときはなんで10時に来て4時に帰るという特権をあなただけが使うのか理解できなかったが、あのときあなたが頑張ってくれたから今の働くママは当たり前のように時短がとれる」と言われたときは涙が出た。改革の成果が出るのは時間がかかる。

次の世代のために何をするか

 退職まであと20年間働くつもりが、義母のがんによる入院、夫の単身赴任で退職を決意した。当時40歳の私は、退職するということは、今まで頑張ってきたことが一気に失われるゼロからの出発と思っていた。しかし振り返ってみると20年間の仕事で得たもの、頑張ってきたことは何ひとつ無駄にはなっていなかった。全て「経験」という形で私を大きく支えている。
 自分のためでなく次の世代のために今何をするのかということを考えることは、とても大事な次の世代へのバトンの引継ぎである。人間社会は複雑であるが、次世代に思いを致しながら、もっと自然のままにシンプルに生きていくことこそが本来の理にかなった生き方ではないのだろうか。これは、男性・女性、仕事をする・しないにかかわらず、全ての人生にいえることだと思う。「自分の人生の指針」がしっかりしてさえいれば、どんな環境においてもぶれることはない。自然に気持ちの赴くままに流されていいんだと、そうすれば行き着くところにたどり着くと最近よく思う。私も会社員時代は「仕事をやめざるを得なくなって」とか「会社の中で自分の立ち位置が分からない」とかいろいろな言い訳を並べ立てていたが、環境はどうあれ、自分がやろうと思えば夢をかなえる方策はあるはずである。
 人生がつらいと嘆く人より面白いと楽しむ人が増えたら、どんなに世の中はよくなるであろうか。そのために政治は何をするのか常に考えている。女性は結婚、育児、介護で自分の夢を追いにくいといわれるが、確かにまだまだ大手の会社以外は仕事を続ける環境は十分でない。しかし、環境のせいにしていたら自分の夢なんて追える時間はいつまでたってもつくれない。一番大事なことは、私が子どもの頃に思った「女性の経済的自立」ではなく、「精神的自立」であると考える。ちゃんと大地に根を張って生きれば、どんな嵐が来ても倒れない。親が何でもやってあげる環境ではなく、自分で開拓する精神、生き延びていく方法をこれからは一番学んでいかなければならないのではないだろうか。

政治の責務

 誰でも平和に暮らしたいと願う。そのために政治家は、戦争するために法を整備するのではなく、戦争をしないための法整備をしなければならない。政治の大事な責務・目的は、「平和で幸せだと感じる人を増やしていく」ことだが、1人でできることは限られる。だからこそ仲間をつくり、問題を一緒に解決していくことが大事である。
 とかく議員は個人プレーが多くなるが、本来は党派を超えて議論し、同じ目標に向かってさらによい政策を打ち出していくことが求められる。後輩を育てることも大事である。自分のために議員でいるのではない。何のために今、議員でいるのかを毎日確認しながら進んでいきたい。
 今年3月、明治大学専門職大学院ガバナンス科を卒業した。この歳になって政治を勉強した。学費も目が飛び出るほどかかったが、いただいた報酬から払って夜仕事が終わってから都内まで通った。働きながら単位をとるためにレポートを書き、夜中遅くまで勉強した。いろいろな自治体の議員や息子と同じくらいの歳の若者や大企業の社長さんや自治体の首長、課長等異業種交流のできるゼミで「少子対策について」をテーマにリサーチペーパーを書いた。2万字を書くために文献を読み、選挙が始まる1か月前に卒業した。政策立案についての専門職の資格をいただいた。

未来を創る議会へ

 執行部でなく、議会がちゃんと政策をつくれるような体制をこれからはとっていかなければならない時代となった。議会は執行部の追認機関ではない。二元代表制をきちんと担い、市民の声を反映させられる市政運営となるようこれからも尽力したい。そのときに心がけたいのは、肩ひじ張らず、自然に身を委ねてしなやかにフツーの女性がフツーに政治をしている世の中でありたいということである。私たちみんな同じ時代に生まれた地球の子どもたちなのだから。まずは相手の意見を受け入れてみる。それがこの地球から争いごとをなくしていく大きな一歩になるはずである。
 今、私たちは当たり前のように選挙権を手にしている。しかし歴史を振り返れば一部の特権であった時代があり、さらに女性に選挙権が与えられたのは市川房枝先生等が勝ち取ってくれたからである。その大事な選挙権を無駄にすることなく、自分のため、未来の子どもたちのために使って自分の思いを託せる人を選んでほしい。思いを託せる人がいなければ、ぜひ立候補も考えていただきたい。未来はあなたの手で変えることができるのだから。

加藤啓子

この記事の著者

加藤啓子

流山市議会議員 昭和36年西宮市に生まれる。3歳から25歳まで野田市で過ごす。平成2年から流山市向小金在住。東葛飾高校、立教女学院短期大学卒業後、昭和57年住友海上火災保険株式会社に入社。勤務しながら放送大学を卒業。平成14年に退職。その後、流山市教育委員会東部公民館生涯学習専門員委員、流山市男女共同参画審議会委員等を務める。平成23年に初当選を果たし、現在2期目。平成27年3月、明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科を卒業。26歳を筆頭に3人の子の母。好きな言葉は、「人事を尽して天命を待つ」。 公式ウェブサイトhttp://keikokato.net

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