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2015.08.25 政策研究

地域のつながりが命を守る ~自治体が主役 自殺対策最前線~

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自殺の多くは「追い込まれた末の死」

 自殺の多くは「追い込まれた末の死」である。自殺で亡くなる人の多くは、自ら死を積極的に選んでいるというよりも、死を選ばざるを得ない状況に追い込まれて亡くなっている。人を死に追いやる要因は決して単純ではなく、私たちが遺族の方々と協力して行った実態調査から、人が自殺に追い込まれるまでのプロセスが明らかになってきた。

図2 自殺の危機経路図2 自殺の危機経路

 自殺で亡くなった523人について、その一人ひとりが自殺に至るまでの経路を調査・分析したところ、自殺で亡くなった人は、平均すると要因を4つ複合的に抱えていたことが分かった。
 例えば、「失業」がきっかけで「生活苦」に陥り、「多重債務」を抱えて「うつ状態」になり、自殺に追い込まれていく。あるいは、「高校中退」がきっかけで不安定な職にしか就けず、「生活苦」になり「借金」を抱えて、「家庭内の人間関係」も悪化して自殺。さらには、小さい頃に「虐待」を受けた経験のある人が、結婚して「夫からの暴力」を受けたことがきっかけで「精神疾患」になり、「離婚」して「生活苦」に陥って自殺といったように、要因が重なる中で「生きるのが困難な状況」に追い込まれて、それで亡くなっているのである。

 要因の連鎖の仕方に着目したところ、社会経済的な問題がきっかけとなり、それが労働や生活の問題に連鎖し、さらにそれらが家庭や健康の問題に連鎖していった先で自殺が起きていることも分かった(「図3 自殺要因の連鎖図」において、それぞれの要因の下に記されている数値は「自殺要因の複合度」を表している。1点台は、自殺の危機経路の最初の方に抱え込まれやすい要因で、数値が高くなればなるほど、要因が連鎖を繰り返した先で抱え込まれやすい要因ということになる。自殺が「5.0」となっているのは、自殺の手前に平均4.0個の要因が連鎖しているという意味)。

図3 自殺要因の連鎖図図3 自殺要因の連鎖図

自殺対策とは「包括的な生きる支援」

 ところが、自殺対策はこうした要因の連鎖に合わせたものになっていない。個々の要因に対しては、国や自治体、あるいは民間団体や専門家が様々な対策を行っているが、それらの多くは別々に行われており、互いに連携しているとは言い難い。
 自殺は平均4つの要因が連鎖して起きているわけだから、自殺対策は、単純にいえば、平均4つの相談機関が連携して行う、若しくは平均4つの支援策を連動させなければならない。プロセスで起きている自殺に対しては、当然プロセスで対応していく必要があるということだ。
 当事者が抱えている問題の組合せに応じて、支援する側が、行政と民間の壁や行政内の縦割りの壁、さらには様々な専門分野の壁を越えて、連携すること。自殺対策とは、そうやって誰もが生きる道を選択できるように支援すること、つまりは「包括的な生きる支援」なのである。

清水康之

この記事の著者

清水康之

NPO法人 自殺対策支援センター ライフリンク代表 元NHK報道ディレクター。自死遺児たちの取材をきっかけに、自殺対策の重要性を認識。2004年にNHKを退職し、ライフリンクを設立。10万人署名運動等を通して2006年の「自殺対策基本法」成立に大きく貢献する。自殺対策の「つなぎ役」として日々全国を奔走中。自殺対策全国民間ネットワーク代表。元内閣府参与(自殺対策担当)。内閣府「自殺対策官民連携協働会議」委員。Twitter:@yasushimizu

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