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2015.08.25 政策研究

地域のつながりが命を守る ~自治体が主役 自殺対策最前線~

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NPO法人自殺対策支援センターライフリンク代表 清水康之

自殺対策は地域の時代へ

 自殺対策は今、地域の時代を迎えている。「誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して」というメッセージを副題に掲げる自殺総合対策大綱が平成24年8月に改訂され、その中で「今後は、地域レベルの実践的な取組を中心とする自殺対策へと転換を図っていく」とうたわれた。
 さらに、本年6月2日、参議院厚生労働委員会において「自殺総合対策の更なる推進を求める決議」が全会一致で採択され、その中に「都道府県及び市町村(特別区を含む。)に、具体的な数値目標や施策の工程表などを盛り込んだ『いのち支える自殺対策行動計画』の策定を義務付けること」が盛り込まれた。超党派議員による「自殺対策を推進する議員の会(議連)」が現在、自殺対策基本法の改正について協議しており、この決議の内容がどこまで法案に反映されるか未定だが、いずれにしても自殺対策は今、国レベルから地域レベルへと急速に転換を始めている。

6月2日 参議院厚生労働委員会で「自殺総合対策の更なる推進を求める決議」が全会一致で採択6月2日 参議院厚生労働委員会で「自殺総合対策の更なる推進を求める決議」が全会一致で採択

 逆の見方をすれば、住民の命を支える取組でもある自殺対策は今、それぞれの地域が試される時代になってきているということだ。自殺対策を積極的に推進する地域においては自殺に追い込まれるリスクが減少し、そうでない地域においては自殺のリスクが高止まりをする。そうした地域間格差が、今後広がることも懸念される。
 この時代、それぞれの地域において、自殺の問題とどう向き合い、対策をどう推進すべきか。先進的な取組を行っている自治体の事例等を交えながら考えていく。

日本の自殺の実相

 そもそも日本ではどれくらいの人が自殺で亡くなっているのか。日本の自殺は、平成9年までは2万人台の前半で推移していたが、平成10年に年間ベースで8,000人以上急増し、年間自殺者数が3万人を突破。その後、14年間も高止まりを続けてきた。
 平成9年といえば、北海道拓殖銀行や山一証券などの大手金融機関が相次いで破綻した年であり、その影響で、その年度末、つまり平成10年3月に、日銀の短観が急激に悪化して倒産件数が急増。失業率が高まる中、社会経済状況の悪化にひきずられるようにして、日本の自殺は急増に転じた。
 実際に、このとき特に急増したのが、働き盛りの中高年男性の自殺であった。平成9年から10年にかけて増加した8,000人強の自殺者のうち、実に60%(5,000人)を30~60代の男性が占めている。

図1 自殺者数の推移(自殺統計)図1 自殺者数の推移(自殺統計)

 当時の自殺急増の背景には社会経済的な問題が深く関わっていることは容易に推察できるわけだが、当時は「自殺は個人的な問題」「自殺は選択された死」といった見方が強く、自殺対策が社会的な取組として行われることはなかった。
 ちなみに、諸外国と比較すると、日本の自殺率は世界で8番目に高く(平成23年)、アメリカの約2倍、イギリスやイタリアの約3倍と、先進国の中で突出して高い状況にある。世界屈指の経済大国である日本は、同時に世界屈指の自殺大国でもある。

清水康之

この記事の著者

清水康之

NPO法人 自殺対策支援センター ライフリンク代表 元NHK報道ディレクター。自死遺児たちの取材をきっかけに、自殺対策の重要性を認識。2004年にNHKを退職し、ライフリンクを設立。10万人署名運動等を通して2006年の「自殺対策基本法」成立に大きく貢献する。自殺対策の「つなぎ役」として日々全国を奔走中。自殺対策全国民間ネットワーク代表。元内閣府参与(自殺対策担当)。内閣府「自殺対策官民連携協働会議」委員。Twitter:@yasushimizu

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