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2015.06.25 議会運営

新人議員と会議の原則

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東京大学名誉教授 大森彌

見知らぬ集団の一員になる

 自治体議会は、基本的には4年ごとに再構成される。再構成されるが、実際には、全員が入れ替わることはないから、新たに発足した議会には、新旧でいえば、現職、元職、新人といった議員が参集することになる。現職で再選した議員同士は、「やあ、やあ。引き続きよろしく」ということになる。勝手知った議会へ戻ってきたという感じであろう。
 これに対して、新人議員は、見知らぬ集団の一員になるのであるから、気負いと不安が入り混じった気分になるのはもっともである。どこの世界でも同じであるが、議員が参集する議会という世界にも、その振る舞い方についてのルール・慣習がある。新人議員は、それらを習得して一人前の議会人になっていく。議会の会議という職場で、会議という仕事を通じて、新人議員は「議員らしく」なっていく。
 今回は、これを「会議の原則」と関係付けて考えてみたい。それは一種の「職場研修」である。所属会派のメンバーからコーチを受けることはあるが、自己研さん・自主トレが基本であり、本人の自覚と意欲が決定的である。選挙で選ばれたという特権的な仲間意識を払拭し、1人になっても恥ずかしくない議会人として振る舞うといった気概と言論の力を発揮してほしいものである。

新人議員の割合

 ところで、自治体議会の選挙で、どれくらいの新人が当選するのか、当然ながら、各地によって、各選挙によって異なるが、一遍に全員が入れ替わることはない。概して、再選議員が多い。
 2015年4月の第18回統一地方選挙における前半戦の41道府県議選の当選者数は2,284人、現職は1,738人(約76%)、元職は70人(3%)、新人は476人(21%)であった(朝日新聞2015年4月13日)。
 後半戦の議員選では当選者に占める新人の割合は市議選22.1%、区議選18.6%、町村議選25.3%で、いずれも前回から減少した。当選者全員が現職の議会も11あった(毎日新聞2015年4月28日、東京朝刊)。
 各議会によって事情が異なるが、議員の約2割が新人として当選している。これにより、議員の平均年齢が下がれば、世代交代が進むことになる。この新陳代謝は、「議会を変えよう」という民意の反映かもしれない。少なくとも、新人議員には議会に新風を吹かせてほしいという期待が託されているといえるかもしれない。

法人の議事機関になる

 議員になるということは、地方公共団体という法人の機関、議事機関(議決機関)になるということであり、議事機関に託されている任務を的確に遂行する責務を負っているということである。建前でいえば、議員選挙のときに、住民は、ある候補者が、この議事機関としての任務を十全に遂行してくれるものとして1票を投じている。だから、当選後は、その期待に応えて言動しなければならない。
 議事機関に与えられている任務とは、地方自治法96条に規定されているように、条例を設け又は改廃すること、予算を定めること、決算を認定すること、法律又はこれに基づく政令に規定するものを除くほか、地方税の賦課徴収又は分担金、使用料、加入金若しくは手数料の徴収に関することなどの議決である。議会は、自治体の条例、税金の使いみちを決定する権力を有している。議会とは複数の人間が集まって、この権力を行使する機関である。
 選挙管理委員会から当選証書を、議会事務局から議員バッジをもらい、新議員誕生ということになるが、議員の本務は議会活動であるから、どのように振る舞えばよいか知っていなければならない。この振る舞い方を具体的に成文法的に規定しているのが、地方自治法の下に設けられている会議規則、委員会条例である。
 その中には議員活動に関する規定もあり、これらの意味を学習し、適宜、使いこなせるようにならなければならない。それによって、新人議員は、「なかなかだな」、「頼りになりそうだ」といった評判をとり、「侮れないぞ」、「厄介かもしれない」といった警戒心を抱かれるかもしれない。

大森彌(東京大学名誉教授)

この記事の著者

大森彌(東京大学名誉教授)

東京大学名誉教授 1940年生まれ。東京大学大学院修了、法学博士。1984年東京大学教養学部教授、1996年東京大学大学院総合文化研究科教授、同年同研究科長・教養学部長、2000年東京大学定年退官、千葉大学法学部教授、東京大学名誉教授、2005年千葉大学定年退官。地方分権推進委員会専門委員(くらしづくり部会長)、日本行政学会理事長、自治体学会代表運営委員、川崎市行財政改革委員会会長、富山県行政改革推進会議会長代理、都道府県議長会都道府県議会制度研究会座長、内閣府独立行政法人評価委員会委員長等を歴任。社会保障審議会会長(介護給付費分科会会長)、地域活性化センター全国地域リーダー養成塾塾長、NPO地域ケア政策ネットワーク代表理事などを務める。著書に、『人口厳守時代を生き抜く自治体』(第一法規、2017年)、『自治体の長とそれを支える人びと』(第一法規、2016年)、『自治体職員再論』(ぎょうせい、2015年)、『政権交代と自治の潮流』(第一法規、2011年)、『変化に挑戦する自治体』(第一法規、2008年)、『官のシステム』(東京大学出版会、2006年)ほか。

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