地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2015.05.25 政策研究

待ったなしの公共施設マネジメント、議会は何をすべきか

LINEで送る

三菱UFJリサーチ&コンサルティング コンセンサス・デザイン室長 西尾真治

深刻化する公共施設の老朽化問題
~国民生活の安全・安心に直結する公共施設の維持・更新が財政的に困難

 公共施設の老朽化が進行しており、深刻さを増している。平成24年12月に発生した笹子トンネルの天井板崩落事故を契機として、この問題への注目度が一気に高まった。笹子トンネルは昭和52年に開通しており、事故が起こったときは開通から35年が経過していた。施設ができてから長期間が経過する中で、ずさんな点検などで施設の劣化が進んだことにより、大事故につながったと考えられている。
 笹子トンネルと同様、高度経済成長期後期以降の1960年代~70年代に多くの公共施設が整備されている。一般に、コンクリートの建造物の耐用年数は60年程度といわれる。天井や外壁などの非構造部材や設備類の耐用年数はさらに短く、点検や手入れが十分でなければ、老朽化とともに事故の危険性も高まる。すでに十分な修繕や改修を行う予算が確保できず、危険性の高まった古い橋を通行止めにするような事例も増えつつある。今後、高度経済成長期後期以降に建設された多くの公共施設が一斉に建替え・更新の時期を迎えると、その経費を全て賄えるだけの財源はとても確保できない。「国土交通白書2012」における国土交通省の試算によると、今後50年間に必要となるインフラの維持管理・更新費の約16%が不足するとの推計値も出されている。
 自治体においては、事態はさらに深刻であり、将来コストが現状の2~3倍以上に上ると推計している自治体が多い。古い橋を通行止めにするケースについても、国や政令市が管理する橋ではそういったケースはほとんど見られず、市町村が管理する橋で通行止めが大幅に増加しており、小規模な自治体ほどより先鋭的に問題が顕在化しつつある。

【公共施設マネジメントとは】
 一般に「公共施設」という場合には、行政が保有するいわゆるハコモノ(庁舎、学校、図書館などの公共建築物)を指すことが多い。しかし、いわゆるインフラ(道路、橋りょう、上下水道などの土木構造物)についても、老朽化の問題は同様に深刻化している。
 総務省は、「公共施設等」という表現で、ハコモノとインフラの両方を捉えて、一体的な対策をとることを自治体に要請している。そこで、本稿においても、「公共施設」という場合には、ハコモノとインフラの両方を含めた広義の概念として捉えることとする。
 また、自治体が自ら保有する公共施設の状況を把握し、それらを維持管理・更新するための将来コストを推計した上で、中長期的に適切に維持管理・更新していくため、施設の再配置や統廃合を含めた総合的な管理を行うことを「公共施設マネジメント」と呼ぶこととする。

この記事の著者

西尾 真治

三菱UFJリサーチ&コンサルティング コンセンサス・デザイン室長

Copyright © DAI-ICHI HOKI co.ltd. All Rights Reserved.

印刷する

今日は何の日?

2024年 517

ゾルゲ事件(昭和17年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る