主体的に政治に関わろうとしない若者が増えていくことは民主主義社会日本の将来の危機。
若年層の投票率が、他の世代に比べて低いことは近年始まったことではありませんし、日本に限った話でもありません。自らの生活は自分で賄うことができる状況だったり、年金を受け取ったり、医療機関にかかる等政治に頼ることが少ない若者の投票率が低いことは、ある程度仕方のないことかもしれません。
しかし、今の日本において若者が投票に行かない理由は、これまでと少し変わってきているように感じます。投票に行かない理由として「どうせ、数の少ない若者の意見は通らないから投票に行かない」という声を多く聞きます。少子高齢化の現状だからこそ出てきた、新しいタイプの選挙棄権理由です。若者世代は世代人口が少なく、いくら投票率が高くなっても、投票者数では高齢世代を超えることが難しい現状があります。そして、その結果、高齢者に配慮した予算配分や政策実施が行われる、いわゆる「シルバーデモクラシー」の状況になっていると近年盛んにいわれています。もちろん、投票に行く人が高齢者の方が多いからといって、常に高齢者を優遇した政治が行われているわけではありません。しかし、投票率が高く、接点も多い高齢者にどのように捉えられるかを念頭に置きながら政治が行われている面もあることは否定できません。
このまま若年層の投票率が低いままで、主体的に政治に関わろうとしない若者が増えていくことは、民主主義社会日本の将来の危機を招きます。人口減少社会という新たな状況を乗り越えていくためには、将来をつくり担う存在である若者が主体的に政治に参画する必要があります。民主主義は多様な存在が政治に参画することでその正当性を持ち、力を発揮しています。人口減少という社会の大きな転換期を乗り切るためにも、今こそ若者の投票率向上を目指す必要があります。
若者に、政治は自分たちの力でつくっていくことができるものであり、それが必要であることを感じてほしい。
では、若者の社会・政治への意識はどのようなものであるかを整理するために、いくつかのデータを紹介します。
「自国のために役立つと思うようなことをしたいですか?」──。この問いに対し、日本人の若者の54.5%は「はい」と肯定的に答えます。この調査は内閣府が昨夏に公開した「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」⑴の1項目で、日本・韓国・アメリカ・英国・ドイツ・フランス・スウェーデンの13歳から29歳の若者に対し行われたものです。上記の問いに対して、肯定的に答えた割合は調査対象7か国の中で日本(54.5%)が、最も高い数字です。また、2015年の成人式の際にマクロミル社が新成人を対象に行った調査⑵によれば、約7割の新成人が自分たちの世代が“日本を変えていきたい”と思っているそうです。若者は日本の社会・将来を考えているし、何かやってやろうとも考えているという意識が見て取れます。
しかし、同時に両調査の他の項目からは、若者の社会・政治への不信感・無力感も伝わってきます。前述の内閣府の調査によると、「私の参加により、変えてほしい社会現象が少し変えられるかもしれない」との問いに対して、肯定的に答えた日本人の割合はわずか30.2%と調査7か国の中で最も低い数字となります。国のために何かしたいと多くの若者が思っているにもかかわらず、自分の力では社会を変えられないと諦めてしまっている現状です。また、前述の新成人対象のアンケート(マクロミル社)によると、81%がこれからの日本の政治に「期待できない」と答え、91%が「国民年金は、将来、自分がもらえるか不安」と回答します。
「何かやりたいけれど、どうせ自分たちでは何もできやしない」と諦めている若者。政治への期待を持っていない若者。そんな彼らに、政治は自分たちの力でつくっていくことができるものであり、それが必要であることを感じてもらわなければなりません。そして、政治に携わる人は、若者に対してそう思わせるように働きかけなければなりません。
若者の投票率が低いことと、政治が若者を後回しにするようになったこと。このどちらが先に起こったのかを論ずることは、鶏が先か卵が先かを論ずることと同様で、現状の解決策とは全く関係ありません。若年層の投票率の低さに対して、問題意識を持っている各々が各々のできることを行い、問題の解決につなぐ必要があります。
その解決のタイミングとしては、4月に行われる統一地方選は大いなる好機です。国政選挙とはまた違う、街・地域の政治・議員を決める地方選挙。少し前置きが長くなりましたが、本稿ではこの選挙で若者を巻き込む方法を考えてみたいと思います。