マニフェストは役割をまだ終えていない
明るい選挙推進協会の「統一地方選挙全国意識調査」によると、「候補者の情報を得るのに役に立った情報媒体」で、2007年には「マニフェスト」の回答がトップだったが、2011年には5位に転落した。民主党マニフェストの失敗で、今や「守られないもの」となりつつあるが、マニフェストは役割を終えたか? 答えは「No」である。
2003年の北川正恭氏(当研究所初代所長)の提唱以来、今年で12年目を迎えたが、2014年末の衆院選ではほぼ全ての政党が「マニフェスト」を出し、特に地方政治でのローカル・マニフェスト導入・浸透が著しい。政令市・一般市の首長ウェブサイトのうち約7割がマニフェストや政策集を掲載しており、約4割は検証もしている。マニフェスト型の行政経営を進めるさいたま市や千葉市では、選挙に強い事例も出てきた。マニフェストが導入したPDCAサイクルは、特に行政経営においては根付いたといっても過言ではない。
しかし、それは為政者側の話である。マニフェストは有権者に届いているのだろうか。
どうしてマニフェストが読まれないのか
マニフェストを読まない・参考にしない理由として、「争点がない」、「出てこない・手に入らない」、「わかりづらい」といった意見が多数。
マニフェストは候補者と有権者をつなぐものへ
早稲田大学マニフェスト研究所では、2015年2月、約1,000人の有権者に対して政策型選挙に関するインターネット調査を実施した。それによると、有権者の4割強が「政策」をもとに投票判断をしていると回答したが、前述のとおり、マニフェストは参考にされていない。「マニフェストが読まれていない、参考にならない理由」も聞いたところ、「争点が書かれていない、手に入らない、わかりづらい」ことが原因だという声が多かった。また、「今後の地方選挙でマニフェストを読む条件」として、「具体的な政策が書かれている」、「地域の課題がわかりやすく説明されている」、「比較できる新聞・テレビ・インターネットサイトがある」という回答が多数だった。
有権者は「政策」で判断したいが現実のマニフェストは、「争点がない、わかりづらい」など不十分である。今後は、具体的な政策や地域の課題が、候補者ごとに比較できることが重要である。特に、新聞やテレビなど報道機関の役割は大きい。
マニフェストの役割は、候補者と有権者をつなぐものへと、変わる必要がある。