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2015.03.10 選挙

マニフェストスイッチプロジェクト始動~今からでも間に合う、マニフェストのつくり方~

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マニフェストは役割をまだ終えていない

 明るい選挙推進協会の「統一地方選挙全国意識調査」によると、「候補者の情報を得るのに役に立った情報媒体」で、2007年には「マニフェスト」の回答がトップだったが、2011年には5位に転落した。民主党マニフェストの失敗で、今や「守られないもの」となりつつあるが、マニフェストは役割を終えたか? 答えは「No」である。
 2003年の北川正恭氏(当研究所初代所長)の提唱以来、今年で12年目を迎えたが、2014年末の衆院選ではほぼ全ての政党が「マニフェスト」を出し、特に地方政治でのローカル・マニフェスト導入・浸透が著しい。政令市・一般市の首長ウェブサイトのうち約7割がマニフェストや政策集を掲載しており、約4割は検証もしている。マニフェスト型の行政経営を進めるさいたま市や千葉市では、選挙に強い事例も出てきた。マニフェストが導入したPDCAサイクルは、特に行政経営においては根付いたといっても過言ではない。
 しかし、それは為政者側の話である。マニフェストは有権者に届いているのだろうか。

どうしてマニフェストが読まれないのか
マニフェストを読まない・参考にしない理由として、「争点がない」、「出てこない・手に入らない」、「わかりづらい」といった意見が多数。

早稲田大学マニフェスト研究所マニフェスト調査部会「マニフェスト型選挙に関する調査~マニフェストスイッチ調査①~」早稲田大学マニフェスト研究所マニフェスト調査部会「マニフェスト型選挙に関する調査~マニフェストスイッチ調査①~」

マニフェストは候補者と有権者をつなぐものへ

 早稲田大学マニフェスト研究所では、2015年2月、約1,000人の有権者に対して政策型選挙に関するインターネット調査を実施した。それによると、有権者の4割強が「政策」をもとに投票判断をしていると回答したが、前述のとおり、マニフェストは参考にされていない。「マニフェストが読まれていない、参考にならない理由」も聞いたところ、「争点が書かれていない、手に入らない、わかりづらい」ことが原因だという声が多かった。また、「今後の地方選挙でマニフェストを読む条件」として、「具体的な政策が書かれている」、「地域の課題がわかりやすく説明されている」、「比較できる新聞・テレビ・インターネットサイトがある」という回答が多数だった。
 有権者は「政策」で判断したいが現実のマニフェストは、「争点がない、わかりづらい」など不十分である。今後は、具体的な政策や地域の課題が、候補者ごとに比較できることが重要である。特に、新聞やテレビなど報道機関の役割は大きい。
 マニフェストの役割は、候補者と有権者をつなぐものへと、変わる必要がある。

マニフェストスイッチプロジェクトとは

 本プロジェクトでは、マニフェストの共通フォーマットを作成し、政策情報をデータベースに一元化。オープンデータとして利活用が可能になる。有権者やアプリ開発者、報道機関、研究者などが政策・人柄の比較、ボートマッチ、活動状況の評価、主権者教育などでの活用ができるようになる。今回の運動のねらいは、これまで選挙で「なんとなく選んでいた人」を、「政策で選ぶ人」に変え、「政策型選挙」に少しでも近づけることだ。

マニフェストスイッチプロジェクトとは?
マニフェストを作成した候補者がマニフェストを登録し、インターネット上でオープンデータとして利活用できるプラットフォームです。

図2

 

「なんとなく選ぶ」から「政策で選ぶ」へ
有権者や民間・技術者・報道機関が、自由にマニフェストを参照・利活用できるようになり、政策や人柄の比較が簡単にできるようになります。

図3

 

マニフェストの効果は、選挙が終わってからこそ
選挙のときに掲げたマニフェストをもとに政策を実行していく段階こそが、マニフェスト型政治の真骨頂です。千葉市や厚木市、牧之原市など、選挙時に掲げたマニフェストをもとにPDCAサイクルを導入し、住民・行政とのビジョン共有・目標達成型の行政運営を実現させている自治体が増えています。

図4

共通フォーマットの書き方

 プロジェクトの共通フォーマットへの記入の際は、投票依頼等をしないなど公職選挙法の違反に十分注意し、「検証」を念頭に「わかりやすく」、「具体的に」、「はっきりと」書くことが望ましい。「政治家を志した理由」では、ご自身の経験や実績などを踏まえ、政治家を志す理由や思いを。「地域のありたい姿」で、今の地域の姿を踏まえ、目指す地域のありたい姿・ビジョンを。「解決したい課題」では、地域のありたい姿を実現するために、解決したい課題を明らかにし、それを「解決するための行動・政策」で、どのように解決するか、期待できる効果、実現可能性など、具体的に提示いただく。その際は、「数値目標、期限、予算、財源、手段」などの要素を取り入れることで、具体性や説得力、検証可能性を高めることができる。最後に、「政策10分野への注力度」で、どの政策分野に関心があり、今後の活動を注力していくか入力してもらいたい。

共通フォーマットにエントリーするだけで、あなたのマニフェストができる
フォーマットは首長と議員で異なります。議員は、①政治家を志した理由、②地域のありたい姿、③解決したい課題、④解決するための行動・政策、⑤政策10分野への注力度などを記入します。

図5

有権者に、候補者に、日本にスイッチを!

 2003年の統一地方選挙で北川正恭氏が掲げたスローガン「お願いから約束へ」から、今年で4回目の統一地方選挙となる。まだ十分に機能していないマニフェストをバージョンアップし、選挙を変え、地域を変え、日本を変える。これは、社会が大きく変化しつつある中で、政治家が、行政が、有権者が、様々な主体がそれぞれの役割を果たし、成し遂げていくことだと思う。スイッチという言葉には、オン/オフやシフトチェンジという意味もある。立ち位置を変え、スイッチが「オン」した仲間とともに、これまで以上に多くの協力者・団体を巻き込み、実行していきたい。

共通フォーマットの入力や他候補者のマニフェストが参照できる、マニフェストスイッチプロジェクトの公式ページは、コチラから
http://manifestojapan.com/

青木佑一

この記事の著者

青木佑一

早稲田大学マニフェスト研究所議会改革調査部会 1985年東京都生まれ。早稲田大学社会科学部卒、同大大学院公共経営研究科修了。選挙サイト、世論調査会社勤務を経て、株式会社パイプドビッツ「政治山」で行政・議会・議員を対象に記者職、選挙情勢調査・分析に従事。現在、早稲田大学マニフェスト研究所で議会改革、選挙事務改革、人材マネジメント部会を担当。 Facebook:yuichi0613

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