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2014.09.10 議員活動

誰もが輝く地域社会へ

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板橋区議会議員 井上温子

私が議員になった理由

 もともと、全く興味のなかった政治。そして、何となく嫌いだった政治家。そんな私が区議会議員になった理由は、地域コミュニティづくりの延長線上にありました。
 「政治に期待したって、何も変わらない」、そう思い、「NPO活動で社会を変えたい!」と活動してきました。しかし、地域でNPO活動をすればするほど、本当に困った人を助けられるのは「福祉」であると実感し、社会を変えるにはお金の流れを変えることや埋もれてしまっている声を行政に届けること、利権やしがらみによらない政治判断が必要だと考えるようになりました。
 また、政治に一部の声しか届いていないことは、投票率を見れば明らかです。有権者の5割以下の信任しか受けない選挙結果も数多く、昔の私を含め「政治に期待できないと考えている人たち」が「投票に行かないこと」も大きな社会問題であると気がつきました。
 前回2011年の板橋区議会議員選挙では、20~30代の投票率が約22~35%と特に低い状況です。「若者は政治に無関心」と断定してしまえば簡単ですが、「なぜ政治に関心を持たないのか」、「なぜ無関心でいられるのか」ということを考えることが必要だと思います。多くの若者にとって、自分たちの住む地域は「寝に帰る場所」でしかない、という現実があります。住んでいる地域のことをよく知らなければ、まちの行政や政治にも関心が湧かなくて当然です。私自身、地域の中に多様な仲間ができたことがきっかけで、地域での生活実態ができ、地域をよく知るようになり愛着を持ち始めました。また、自分とは違った世代や国の人、障がいがある方と出会い知り合うことで、それぞれが抱える社会課題についても理解し共感できるようになりました。この「地域に仲間ができる」→「地域に愛着を持つ」という流れが、今の社会に抜け落ちているのではないでしょうか。
 一人暮らしや核家族の家庭が増え、周囲から孤立しがちな地域社会では、他人のことや地域のことを考える余裕が生まれにくくなりますが、地域で多様な人たちが集える場をつくることを通して、新たな"地域での支え合いの仕組み"が創れるのではないか、それが若者の政治関心の喚起にもつながり、また埋もれている声を行政に届けることにもつながるのではないかと考えました。

地域の交流拠点「地域リビング プラスワン」の実践

 私が選挙で掲げた理念は、「誰もが輝く地域社会へ」。そしてその理念を実現するための象徴政策として訴えたのは、「地域の交流拠点を生活圏内に設置すること」です。赤ちゃんからお年寄りまで、国籍や障がいのあるなしを問わず集える場づくりをすることで、多様性が尊重され、まちに仲間ができ、互いの特性を生かし合って支え合える=活躍できるまちづくりが広がっていくと考えています。
 地域の交流拠点の普及のため、実践と政策提言をしてきました。「NPOをする議員」です。2013年には、NPOとして「地域リビング プラスワン(以下「地域リビング」といいます)」というコミュニティスペースを高島平団地の一角に開設しました。ここは、赤ちゃんから高齢者、障がい者、外国人も一緒に過ごせる"リビング"です。
 「地域リビング」では、一人暮らしの高齢者が毎日のように通っていて、赤ちゃんを笑顔であやしたり、留学生の生活相談等をしたりしています。知的障がいのある方は福祉作業所がお休みのときに食事づくりをして過ごしたり、重度心身障がいのある方も一緒に音楽を楽しんだりします。多様な人が集うからこそ、互いにできることを出し合い、支え合いが生まれています。
 こういうコミュニティスペースの必要性を、いくら議会で提案しても、地域が育っていなければ実現しません。そこで、板橋区でコミュニティスペースを運営する人たちのネットワークづくりを進めながら、こういった活動

赤ちゃんから高齢者まで皆が集う「地域リビング」赤ちゃんから高齢者まで皆が集う「地域リビング」

の「見える化」をし、民意をつくり出していくことから始めています。運営者と行政との橋渡しをし、新たな地域福祉の拠点として位置付けていきたいと考えています。
 こういった地域の居場所づくりの必要性は、国も認識し始めています。例えば、来年度から介護保険法の改正が施行されますが、今回の法改正に向けた厚生労働省社会保障審議会では、「コミュニティサロン」という言葉が、初めて使用されました。まずは高齢者向けのサロンが注目されていますが、今後、縦割り型の対象別施設主義を見直し、多様な人々が集うコミュニティスペースを軸とした地域包括ケアの実践が求められるでしょう。地域の居場所づくりは、高齢者だけでなく、子育て中の方から障がい者、若者や生活困窮者支援にも求められています。

政策づくりも"住民参加"で
~地域の交流は自治の拠点に~

 地域の交流拠点は自治の拠点にもなると考えています。新たなコミュニティが生み出される場となり、地域での支え合いが始まるきっかけとなります。国・地方ともに財政が豊かでない今、「自分たちで何ができるか」と地域住民が当事者意識を持って動けるよう、ボトムアップの行政運営が求められます。トップダウン手法の行政運営は、住民は「参加」ではなく「これをやってほしい、あれをやってほしい」と、「要望」を上げることになり、行政コストの増大が続きます。一方で、住民参加型のまちづくりでは住民自身が担い手になり、自治力が向上していきます。
 私自身の議員活動も、住民と一緒に学び合いながら進めています。具体的には、住民参加型で政策づくりをする「あつ研」を月に2回、飲んだり食べたりしながら気軽に日常のことを語り合う「あつBar」を月1回開催しています。現在「あつ研」には、介護保険部会とキャリア教育部会があり、それぞれの方向性を定め、ゴールは一般質問での政策提言としています。今まで、特別養護老人ホームに見学へ行ったり、サービス付高齢者住宅の専門家、介護保険制度を取材し続けてきたジャーナリスト、生活保護世帯の支援をするNPOの方等をお呼びしたりしてきました。それぞれの生活に即した学びとなるため、継続してご参加いただける方が増えてきました。
 このように、定期的に住民に開かれた場づくりをすることで、日常的に考えを共有でき、議会の進捗情報や視察に行った報告も、時差なく情報提供が可能になりました。

議員の多様化で地域課題解決を

 新たな地域の交流拠点の設置や住民参加型のまちづくりによって、自治力が向上していくとともに、議員も多様化していくと、地域課題解決が進むのではないでしょうか。地方議会は、国政のざっくりとした政策では解決しきれない、抜け落ちてしまった課題を解決する役割があり、誰もが輝ける地域社会を目指すためには、おのずと多様なバックグラウンドを持った議員が必要になると考えます。
 しかし現実は、議員の大多数が党や組織の判断で動いています。党所属や組織を持っている方が議員になること自体は当然のことではありますが、課題は、有権者には組織や政党に属していない人の方が多いにもかかわらず、議会には無所属議員や組織に頼らない議員が少なすぎるということです。結果、二元代表制のはずの地方議会において、与党・野党といった構図となり、少数の思いがなかなか反映されなかったり、少数意見を聞かず、やじが横行したりします。
 この現状を打開するには、「政治の話はタブー」を改め、誰もが普通に政治について語り合える地域社会づくりが必要ではないでしょうか。誰もが輝く地域社会に向けて、地域の交流拠点の普及による住民自治力の向上と政治参加の促進に努めていきます。

井上温子(板橋区議会議員)

この記事の著者

井上温子(板橋区議会議員)

板橋区議会議員 1984年東京都青梅市生まれ。大東文化大学環境創造学部卒。同大みらいネット高島平事務局、コミュニティカフェ運営や学生ボランティアコーディネートを経験。NPO法人ドリームタウン代表、地域リビング開設。2011年板橋区議初当選(無所属)。

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