東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学) 金井利之
はじめに
自治体の多様性をどのように分析・記述するかは、前回(第72回=2026年3月25日号)で論じたとおり、分析・記述する者の主観に依存する。その意味で、多様性は構築されたものであって、どのように構築するかそれ自体が、自治体運営そのものの一部でもあり、政治紛争の対象になり得る。さらにいえば、政治紛争になっていない状態であっても、それは客観的に存在するのではなく、こうした分析・記述自体が支配的存在として、抑圧的あるいは無意識的に、当事者たちの間で流布されているということもできる。そのため、当事者であろうと第三者であろうと、ある多様性を分析・記述すること自体が、政治的な含意を持たざるを得ないのである。
もちろん、この連載の筆者は、特定の自治体の運営に携わっているわけではないし、また、それに影響を及ぼそうとしているわけではないので、政治紛争や紛争抑圧に関わっているわけではない。あくまで、一般的にあり得る多様性の分析・記述をするだけである。個々の自治体で、具体的にどのような多様性が認識され、また、認識されないかは、それ自体で重要な実証テーマである。しかし、以下の論述は、あくまで一般的な可能性を指摘するだけである。
都市と農村との二項区分
自治体の多様性を考えるときに、しばしば思い浮かぶのが、「都市(city, town)」と「農村(village, country)」である。もっとも、このような違いを表現する用語は、ほかにもたくさんあり、それぞれが微妙に異なっているともいえる。都鄙(とひ)区分というように、「都」に対置されるのは、「辺鄙」の「鄙(ひな)」ということもある。「都(みやこ)」の側も、「都市」、「都城」だけでなく、「都会」のこともあろう。これ以外にも、「市部(borough)」と「郡部(country)」という対置もある。さらに、「農村」のほかにも、「田園」、「郊外」とか「地方」とか「辺地」とか「僻地(へきち)」とか「田舎」とか「辺境」とか「奥地」とかいろいろである。しかも、「都市」に対置されるのが「農業」、「農村」という「農」とは限らず、「漁村」や「離島」もあれば、「山間」、「山間地」などの「山村」もあれば、「里」を含めた「中山間地」ということもあろう。
何を対句に採用するかはともかく、都市的(urban)地域と農村的(rural)地域との違いがある。そして、都市と農村は、しばしば、二項対立的に截然(せつぜん)と峻別(しゅんべつ)できるとは限らず、徐々に遷移していくことも多い。そうなると、都市と農村の二区分ではなく、準都市的=郊外的(suburban)を含めて、多段階で多様な地域が見られることになる。もちろん、どのように都市と農村を識別するかは、主観的な構築の産物であることは繰り返すまでもない。
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