地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2017.07.25 仕事術

【最終回】第8回 包括外部監査の監査結果を有効利用しているか

LINEで送る

包括外部監査報告書の中身を見てみよう

 多くの自治体では、包括外部監査契約を締結していないため、そもそも包括外部監査契約がどのようなテーマを選択しているのか、その報告書の中身はどうなっているのか、ご存じない方も多いと思われる。そこで、平成19年度から10年以上包括外部監査契約を締結し、現在も実施している、東京都町田市の包括外部監査契約のテーマを確認する(表)。
 町田市の包括外部監査契約で選択したテーマは、我が市が複数回実施したテーマとほぼ重複する。テーマを見ると、やはり我が市の監査基準でいうところの「行政監査」に近い内容である。テーマ選定は、包括外部監査人に任せられているが、やはりいずれの自治体においても課題が共通するためか、また、包括外部監査人相互間の情報交流も盛んに行われているせいか、テーマ重複が多いようである。もちろん、それが悪いということではなく、選ばれたテーマは、それだけ自治体にとって重要な課題であることを示している。そのため、町田市で取り上げられたテーマが、議員としても課題とするべきテーマであることはいうまでもないことだ。

表 東京都町田市における包括外部監査テーマ表 東京都町田市における包括外部監査テーマ

 監査委員会との違いは、報告書の充実度の違いであろう。平成25年度町田市包括外部監査報告書「債権の管理等に関する事務の執行について」(以下「町田市報告書」という)を例に挙げて解説しよう。町田市報告書は、誰でも簡単にウェブ上から入手することができる(参考文献)。総頁数は203頁。対して、我が市の本年度の行政監査結果報告書は21頁。かけている費用と時間が違うので当たり前だが、町田市報告書は、用語解説が充実しており、行政についてそれほど基礎的な理解がない読者であっても分かりやすい。やはり市民に見られることを前提として記述しているのだろう。市民だけでなく当然、議員にとっても有用である。ちなみに、町田市の場合は、我が市のように定期的な行政監査は行っていないようだ。おそらく定期的な行政監査は、包括外部監査の役割としているのだろう。
 町田市報告書は、用語解説だけでなく、「債権管理事務の流れ」として、事務執行に当たってのフローも説明されている。また、他市との比較や具体的なケースへの言及がなされているなど、うまく利用すれば、1回分の一般質問のネタとなる要素が含まれているといえよう。もちろん、町田市以外の議員であっても、町田市報告書の分析の視点で自分の所属する自治体の質問を組み立てることも可能だ。私や同僚議員も、我が市の包括外部監査報告書をネタに何度か一般質問を行ったことがある。ぜひとも、これを機会に読者には、町田市に限らず、他市の包括外部監査報告書のご一読を強くオススメする。
 これだけ有用な包括外部監査契約であるが、実際には広がりを見せていないようだ。その最大の理由は、高い費用と人材確保の困難さにあるといえよう。我が市の場合も、包括外部監査人に対して、年間約1,000万円をお支払いしていた。また、監査人は、弁護士や公認会計士など、専門性のある人材に任せることが多いため、その確保も課題のようだ。そのため、ある程度の規模以上の自治体に契約締結が限定されてくるのだろう。
 結局、外部監査制度の導入だけでは、まだまだ監査制度の充実が不十分という反省から、今次の地方自治法の改正に至ったのだろう。制度の改正も重要だが、本来は今ある制度、例えば包括外部監査制度など、もう少し磨きをかけることが重要であると思うのだが。

 さて、この連載も、我が市の包括外部監査契約のように、ひとまず休止とさせていただく。理由は、ネタが尽きたということもあるが、私が、この7月から現役の監査委員ではなくなったためである。辞めたくなかったのだが、議会の掟(おきて)では、1年交代である。心残りは、3年の間、一度も住民監査請求の審査に立ち会えなかったことだ。住民監査請求で、あと1回原稿を書きたかったのだが。元来、我が市は、住民監査請求はあまり活発ではない。また、請求がなかったということは、それだけ日常の監査が機能していたということの表れと、好意的に解釈したい。
 本年、7月29日に、議選監査委員のあり方をテーマとした勉強会が開催されるという情報が入ってきた。議員NAVIでも連載されている江藤俊昭先生が市民と議員の条例づくり交流会議2017にて、「議選監査委員と議会のチェック機能」をテーマに基調講演をされる。基調講演後には、議選監査経験者である議員等が参加して、パネルディスカッションなども行われるようである。関心があれば参加を検討してはいかがだろうか。詳細はホームページ(http://jourei.jp/)でご確認を。
 では、また。


■参考文献
◇町田市「包括外部監査の結果と措置進捗状況」(https://www.city.machida.tokyo.jp/shisei/gyousei/keiei/gaibukansa/kekka_shintyoku.html

この記事の著者

木田弥(人口30万人を超える自治体議会議員)

人口30万人を超える自治体議会の議員として活動中。

Copyright © DAI-ICHI HOKI co.ltd. All Rights Reserved.

印刷する

今日は何の日?

2024年 5 2

野茂英雄がメジャーリーグ初登板(平成7年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る