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2016.09.12 政策研究

前進するNPO活動!!~NPO活動の一層の健全な発展を図るとともに、NPO法人の運営の透明性を確保するためのNPO法改正~

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衆議院法制局第五部第二課参事 皆川治之

Ⅰ はじめに

 第190回国会において、特定非営利活動促進法の一部を改正する法律(平成28年法律70号。以下「改正法」という)が成立しました。
 本稿は、改正法の背景と経緯、その内容、改正法を受け所轄庁(1)において想定される業務上の対応等について、解説を加えるものです。文中に引用した条文番号は、特段の言及のない限り、改正法の条文番号を指します(2)
 なお、文中意見にわたる部分は筆者の個人的見解であることをお断りしておきます。

Ⅱ 改正法の背景と経緯

 特定非営利活動促進法(以下「NPO法」という)は、平成7年の阪神・淡路大震災後に、ボランティア活動等を支援する新たな法人制度として制定され、平成10年に施行されました。
 その後数度の改正を経て、平成23年改正では、所轄庁の変更、認定事務の移行等の制度改革が行われたところです。
 今般の改正は、この平成23年改正法附則19条の検討規定に基づき、特定非営利活動法人(以下「NPO法人」という)関係団体の要望を踏まえて、超党派の「NPO議員連盟」(共同代表:中谷元衆議院議員・江田五月参議院議員、事務局長:岸本周平衆議院議員)において検討が行われ、取りまとめられたものです。
 改正法は、平成28年5月18日に西村康稔衆議院内閣委員長により提案され、衆参両院での審議を経て、同年6月1日に可決され、成立しました。なお、改正法は、6月7日に公布されています。

Ⅲ 改正法の内容

1 NPO法人制度に関する事項
(1)認証申請の添付書類の縦覧期間の短縮等(10条2項及び3項)
① 趣旨
 NPO法人の迅速な設立を可能とするため、所轄庁が行う認証申請の添付書類の縦覧期間を現行の「2月間」から「1月間」に短縮するとともに、現行の公告(所轄庁の公報への掲載が通例)に加えて「インターネットの利用による公表」を措置し、所轄庁がそのいずれかを選択できるようにしたものです。あわせて、申請書類の軽微な不備の補正期間を「1月間」から「2週間」に短縮しています。

特定非営利活動促進法の一部を改正する法律 概要

② 申請情報の周知方法の追加と縦覧期間短縮の考え方(2項)
イ インターネットの利用による公表
 インターネットの利用による公表を選択できるようにしたのは、所轄庁における公告の頻度が様々であることを踏まえ、縦覧期間の短縮に伴う所轄庁側の公告手続の負担を緩和するとともに、申請情報をより短時間で住民に周知できるようにするためです。
 これにより、公報への掲載によらずとも、例えば、所轄庁のNPOポータルサイト等において、申請情報を公表することで足りることとなります。
ロ 1月間
 今般の縦覧期間の短縮は、当初はNPO法人関係団体からの要望により、国家戦略特別区域法24条の3のNPO法特例を参考に2週間へと短縮する方向で検討されていましたが、同特例は認証件数の少ない所轄庁からの要望によるものであり、認証件数の多い所轄庁では対応が困難であったことから、NPO法人側の期間短縮の要請と所轄庁側の負担とを考慮し、1月間とされました。
 これにより、所轄庁によるトータルの認証審査期間は、縦覧期間の1月間と引き続きの審査期間の2月間とを合わせて、計3月間へと短縮されます。
③ 軽微な不備の補正許容期間の短縮(3項)
 現行法では、申請書類の軽微な不備の補正が許容される期間は、縦覧期間の半分とされている(現行1月間)ところですが、縦覧期間の1月間への短縮に伴って、軽微な不備の補正許容期間を2週間としたものです。
④ 施行日及び経過措置(附則1条柱書及び2条)
 10条2項及び3項の改正規定は公布の日(平成28年6月7日)から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日(平成29年4月1日予定)から施行されますが、改正後の10条2項及び3項の規定は同日以後の認証の申請から適用されることとなります。

(2)貸借対照表の公告及びその方法(28条の2)
① 趣旨
 現行法はNPO法人に対し、「資産の総額(3)」の登記を義務付けており(7条1項並びに組合等登記令(昭和39年政令29号)2条2項6号及び別表)、その趣旨は、①法人の透明性を高めること、②債権者を保護し、取引の安全と円滑が図られることにあるとされています。このため、NPO法人は、毎事業年度終了後2月以内に資産の総額の変更登記を行うことが求められており(同令3条3項)、これがNPO法28条1項により毎事業年度終了後3月以内の貸借対照表の作成を義務付けられている法人側の負担となっていました。
 また、当該貸借対照表は、法人事務所での備置き・閲覧への対応が義務付けられている(同項及び同条3項)ため、重ねて登記を求める実益もないのが現状でした。
 他方、NPO法人と隣接する一般社団法人については、資産の総額の登記は不要とされている一方で、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律において、貸借対照表の公告を義務付けるとともに、公告の方法として、①官報に掲載する方法、②時事に関する事項を掲載する日刊紙に掲載する方法、③電子公告、④主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示する方法が定められています(同法128条及び331条)。
 そこで、改正法では、資産の総額の登記に係るNPO法人の負担を軽減するため、一般社団法人と同様に、貸借対照表の公告を義務付けることとしました。これに伴い、別途、組合等登記令の改正が行われ、NPO法人の登記事項から資産の総額が削除されることになります。
② 貸借対照表の公告義務と公告の方法(1項)
イ 貸借対照表の公告の始期
 28条の2第1項では、NPO法人は、「前条〔注:28条〕第1項の規定による前事業年度の貸借対照表の作成後遅滞なく」公告しなければならないとされています。
 これは、28条1項の規定により、NPO法人が法人内部における手続を経て、毎事業年度初めの3月以内に貸借対照表を作成した後すぐに公告すべき旨を定めるものです。
 なお、「遅滞なく」は、正当な又は合理的な遅滞は許されるものと解されますが、これら以外の場合には、遅滞により義務違反となり、過料の対象となります(80条7号)。
ロ 貸借対照表の公告の方法
 28条の2第1項において、貸借対照表は「次に掲げる方法のうち定款で定める方法」により公告するとされており、NPO法人は同項各号の方法のうちから、貸借対照表の公告の方法を定款で定める必要があります。
 このように定款の必要的記載事項としたのは、利害関係人等に対して、貸借対照表の具体的な公告方法を十分周知させる必要があるためです。
ハ 具体的方法
(イ)官報に掲載する方法(1号)
 官報の公告欄に掲載する方法です。
(ロ)時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法(2号)
 日刊でない週刊新聞や特定種類の営業者のために当該営業の市況を報ずる業界新聞であってはいけません。また、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙である限り、いわゆる全国紙、地方紙の別は問いません。日刊新聞紙を選択する場合は、定款に「○○新聞」というように具体的な新聞名を記載することになります。
(ハ)電子公告(3号)
 電子公告とは、不特定多数の者が閲覧できるよう、インターネットのウェブサイトに公告事項を掲載する公告方法を指します。
 電子公告を選択するNPO法人は、公告が掲載されるウェブサイトを自ら決定しなければなりませんが、当該ウェブサイトは、当該NPO法人自体が管理運営するものでも、第三者が管理運営するものでも差し支えありません。
 したがって、所轄庁や内閣府が運営するポータルサイトを利用して公告することも可能です。定款には、「当法人のホームページ」や「内閣府NPOポータルサイト」など具体的に記載することになります。
(ニ)内閣府令で定める方法(4号)
 一般社団法人と同様に、内閣府令において、NPO法人の主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示する方法を定める予定です。

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この記事の著者

皆川治之

平成18年衆議院法制局に入局。第190回国会で議員立法により成立した改正NPO法の立案を補佐。http://www.shugiin.go.jp/housei/

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