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2016.08.10 議会改革

第1回 中尾修さん(元栗山町議会事務局長)~人口減少時代の今だからこそ取り組むべき議会改革~

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 北海道栗山町議会での議会基本条例制定から10年。この間、700を超える数の議会基本条例が制定され、議会改革の取組が進んでいます。議会改革は今や第2ステージに突入したといわれる一方で、議会改革にこれから取り組むといった議会も全体の半数を数える状況です。取組が先行している議会も、これからの議会も、今後の議会改革をさらに進めていく上で、議会・議員を支える事務局職員の存在は不可欠です。栗山町議会で議会改革を裏から支えた、元議会事務局長の中尾修さん(東京財団研究員/早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員)にお話を伺いました。

中尾修氏中尾修氏

議会基本条例制定の背景にあった、活発な議論をする風土

――栗山町は、全国に先駆けて議会改革をいち早く進め、議会基本条例を制定した自治体として有名になりました。こういった先進的な取組が実現できた背景は何だったのでしょうか。

 私論ですが、これには栗山町の歴史的な経緯が関係していると思います。北海道はアメリカのようにいろいろな地域の人たちが入植してきたことにより開拓されてきた土地柄です。つまり、バックグラウンドを異にする人々の間でのルールの擦り合わせが必要で、その際に様々な議論がなされてきたということがあります。
 そのような経緯に加え、栗山町は農業を基幹産業としながらも、商工業、サラリーマン勤労層とバランスのとれた構成にありました。一方、1次産業が主力産業である、あるいは、有名なメーカーの企業城下町であるといった、産業が一本化されているような自治体では、住民の大多数が同じ方向を向いており利害も一致しているため、調整も少ないのです。これが栗山町の場合には、様々な分野の利益代表が集まって、議会を形成していました。このため、議論をしないと物事が決まらないという状況にあったのが実態です。
 これらが今でいう議会改革の要素である「議員間の自由討議」や「住民の参加」、そして結果としての議会基本条例を制定する土壌となったのだと考えています。

――中尾さんご自身のことをお聞きします。自治体に就職され、議会事務局でのお仕事に就かれるまでというのは、どういった内容のお仕事をされていたのですか?
 採用されてからの2年間は、議会とは全く関係のない予防接種や成人病予防など保健関係の業務を担当していました。当時は、役所ではこんな仕事もするものなのかと驚きもありましたね。その後は、税務や健康保険関係、支所の業務を経験しました。
 私が役場に入庁した頃は、議会が開かれる前の職員、特に管理職の緊張感は相当なものでしたよ。議員からどのような質問が出てくるのか、どこまで追及されるものかと。  議員の質問は、執行部職員を鍛えます。こういった首長と議会(議員)の緊張関係は、自治体運営にとって非常に健全だと感じますね。私自身は、昭和61年に議会事務局に異動となりました。

――議会事務局での仕事では、それまでの執行部での仕事と違いを感じるようなことはありましたか?
 議会事務局では議事係長に就き、6年間仕事をしました。議事運営は当然ですが、出張の手配など議員の方のお世話をすることも多かったと思います。それまでの執行部での仕事とは全く違いました。ただ、それぞれの議員との信頼関係をつくるという意味でも、そういった事務局の裏方の仕事はとても大事と考え、熱心に取り組んだのを覚えています。
 また、議員が24名おり(編集部注:現在は12名)、議員それぞれが大変個性豊かな方々でした。当時の地方議員というのは、良い意味でも悪い意味でも地域代表的な要素が強く、各地域の利益配分をどのように調整していくのかといった議論が多かったように思います。
 こうして議会事務局に6年間勤務した後、9年間のインターバルがあり、その後また議会事務局に戻ることになりました。

――1回目の着任と2回目の着任とで議会事務局での仕事には変化がありましたか?
 私自身の議会事務局での仕事に変化があったかというと、そこまでの大きな変化ということではなかったですが、やはり議会基本条例の検討・制定前と後では、いろいろな面で議会全体に大きな変化がありました。
 議会基本条例ができるまでの議会は、どうしても執行部の追認機関という要素が強かったように思います。ある特定の議案について感情的な対立から首長とぶつかるようなことはまれにあっても、議案の修正をしたり、議会側から政策提案を積極的に行ったりというような雰囲気はなかったといえます。
 それが、議会基本条例の制定後には、議会提案条例も出てくるようになりましたし、様々な変化がありました。例えば研修のことでいえば、それまでは系統議長会(編集部注:町村議会にとっては全国町村議会議長会、市議会にとっては全国市議会議長会、都道府県議会にとっては全国都道府県議長会)の研修を受けるだけだったところが、公的なもの、民間主催のもの含め様々な研修を受けて研さんを積むようになりました。
 また、多くの自治体から栗山町への視察が増えました。以前は、県―町、県―市など、別系統の自治体がクロスして視察に行き来するようなことは全くなかったのですが、そういった状況が変わり、自治体の規模や市町村に関係なく、良いものを取り入れるといった風潮に変わりました。
 あとは、民間シンクタンクや大学、学会などがこぞって地方議会を研究対象としてスポットライトを当て始めることになったのも、議会基本条例制定の影響によるものだと思いますね。

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