地方自治ジャーナリスト 相川俊英
「学ぶ議会」と「議員の自由討議」を柱に据えた議会改革を推進し、その目覚ましい成果で地方議会関係者らから高く評価されているのが、長野県飯綱町議会だ。議会力と議員力の向上を目標に掲げて10年前から議会改革に取り組む飯綱町議会は、今や、本来の役割を果たす地方議会の模範事例のひとつとみられており、全国各地から視察が殺到する状態が続いている。
そんな飯綱町の議会改革を議長として主導してきた寺島渉氏が、今年10月をもって議員生活に自らピリオドを打った。議員を引退し、一住民として新たな活動に乗り出す道を選択したのである。その直後の11月2日、寺島氏は「第12回マニフェスト大賞」のグランプリに選ばれた。長年にわたる議会改革の努力と成果を評価されての栄誉である。引退に花を添える形となったグランプリ受賞に喜びを隠せない寺島氏に議会改革の歩みを振り返っていただき、地方議会や地方議員、住民自治への思いも語ってもらった。
――10月をもって地方議員としての活動に終止符を打ちました。68歳での引退を惜しむ声が町内外から聞こえてきますが。
私の議員生活は7期26年半にも及びまして、議長は8年も務めました。引退の理由はその長さです。飯綱町の議会改革は一定の到達点までたどり着けたと自負しています。議員間で討議を重ねる仕組みをしっかりつくり、議会本来の役割を果たすための改革が定着しました。議会も人間の集まり、組織ですから、持続的に前進するためには指導者の交代が必要になるときがあります。それは避けられません。辞めた後の心配がないわけではありませんが、(いつまでもいると)変な意味で私に頼ってしまいます。一時的には停滞や後退もあるかもしれませんが、新しく議会に参加してくる人たちの新鮮なエネルギーを引き出すことで、さらに前進してほしいと思っています。
――ご自身としてはすべてをやりきったという思いなのでしょうか。
飯綱町議会の議会力アップは果たせたと思いますが、議会が存在する限り、議会改革にゴールはありません。それに大きな課題として飯綱町議会の議員力のアップが残されたままです。正直にいいますと、(議長席で)一般質問を聞いていて、“やれやれ”と思うような質問もたくさんありました。学習会や研修会、全員協議会などの場で議員同士の意見交換を重ねてきましたが、議論する力はなかなか向上しません。一方的に自説を主張する人やへ理屈ばかりいう人がいまして、60代や70代の議員の意識を変えることはとても難しいなと痛感しました。議員個々が自力で学び、成長するのはそうたやすいものではないと思います。
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