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2016.04.25 議会改革

第31次地方制度調査会と住民自治(下)

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山梨学院大学大学院社会科学研究科長・法学部教授 江藤俊昭

 2016年3月16日、第31次地方制度調査会の答申(「人口減少社会に的確に対応する地方行政体制及びガバナンスのあり方に関する答申」)が出ました。地方議会制度や監査委員制度、従来の議会改革との関連や地方自治法の今後の改正動向等につき、江藤俊昭山梨学院大学大学院社会科学研究科長・法学部教授にご寄稿いただきました。2回に分けて掲載します。

目次
(上)
1 31次地制調答申をめぐる評価
2 諮問と答申の構図
3 答申に含まれている議会改革の到達点Ⅰ
  ――三議長会からの提案に関する答申の制度改革――
(下)
4 答申に含まれている議会改革の到達点Ⅱ
5 議会と監査委員制度改革
6 地方制度調査会のもう一歩

4 答申に含まれている議会改革の到達点Ⅱ

(1)議会の位置づけの低さ
 議会の位置づけは、すぐ後に指摘するように議会改革の到達点を踏まえつつも、従来の答申よりも明確ではないというよりも低い。26次、29次地制調答申においてそれぞれ明記されていた「住民自治の根幹」としての議会という表現はどこにも見られない。
 また、住民自治の構図(議会の位置)の曖昧さもある。第3章の「第3 適切な役割分担によるガバナンス」の論述順は、首長、監査委員等、議会、住民となっている。自治法の構成順序(住民、議会、首長、監査委員)と異なることを明記しておきたい。自治法では、住民や議会が中核となっている。
 このことと関連して、議会の役割(機能)について明確にされていない。たしかに、「人口減少社会において増大する合意形成が困難な課題について民主的に合意形成を進めていく上で、議決による団体意思の決定機能をはじめとして、監視機能や政策形成機能等を担う議会の役割は重要である」と、団体意思の決定機能、監視機能だけではなく政策形成機能を担うことを明示している。「議会は、多様な民意を反映しつつ、団体意思の決定を行う機能と、執行機関の監視を行う機能を担っている」(29次地制調答申)よりも一歩進めている(29次地制調答申でも、議会事務局の充実にあたって「議会の政策形成機能や監視機能を補佐する体制」という指摘はある)。しかし、すぐその後の結論部分では「団体意思を決定し、執行機関を監視する役割等を担う議会が……」となり、政策形成機能は省みられなくなる。
 また、答申では内部統制が重要なテーマである。「内部統制体制の整備及び運用の責任の所在」を明確にすることも重要である。そこで、「長と議会の二元代表制の下において、地方公共団体の事務を適正に執行する義務と責任は、基本的に事務の管理執行権を有する長にあることから、内部統制体制を整備及び運用する権限と責任は長にあると考えるべきである」と結論づけられている。執行する義務と責任は首長にあるからといって、なぜ「内部統制体制を整備及び運用する権限と責任」が首長にあることになるのであろうか。たしかに、その「運用する権限と責任」は首長にあるといってもよい。しかし、「内部統制体制の整備」まで首長の権限と責任があるということにはだいぶ距離がある。ちなみに、執行機関において首長の直近以下の内部組織およびその分掌する事務はそもそも条例で定めること(自治法158①)になっていることと、この表現は矛盾していないのだろうか。なお、後述するように、31次地制調答申では議選の監査委員制度の選択制が提起されている。これは運用ではなく整備にあたる。条例で定めることになるが、議会が責任を持つ事項である。
 以上のような議会の役割(機能)を考慮すれば、「住民自治の根幹」からの逸脱とまではいえないまでも評価・位置づけの揺らぎが生じている。監査制度や議会制度が主として答申内容に盛り込まれていた29次地制調でも総会が開催される2回前の専門小委員会では、「今後の地方行政体制のあり方に関する答申(案)」となっていた(総会では「今後の基礎自治体及び監査・議会制度のあり方に関する答申」となっている)。議会は断じて行政体制ではない。その観点からすれば、31次地制調答申は、議会を「ガバナンスのあり方」の中で議論していることは順当である。とはいえ、ここで指摘したように、行政主導が強調されていて、議会の役割・位置づけの軽視の傾向は見られる。

(2)議会改革の到達点の確認
 31次地制調答申に基づいた議会に直接かかわる法改正はそれほど多くはないことはすでに指摘した(決算不認定の際の首長の対応措置)。それ以外の指摘は、すでに今日の議会改革で試みられている事項が多い。とはいえ、ここで提起されている事項の多くは、今日の議会改革の到達点を確認することでもある。
 その際、それらは先駆議会で苦悩の末に実践されてきた改革の確認であることを強調し過ぎることはない。自治法解釈を総務省で行うわけでもなければ、地制調が解釈権を有しているわけでもないことを前提として、地制調が提起する議会改革の到達点を確認することにしよう。

① 広域連携における議会の役割
 31次地制調答申は、広域連携を強調している。広域連携は、連携中枢都市圏などシステムを議論することが多い。この答申では、広域連携における議会の役割にもスポットを当てている。
 1つは、議員同士の信頼関係を創り出すことである。「首長同士の信頼関係も重要であるが、相互依存関係を前提とした信頼関係は、議会同士においても同様に重要である」。その上で、住民、企業やNPO等、多様な構成員からなる協議・懇談の場を設けることとともに、議会や首長は、住民に対して個別の事務ごとではなく、圏域全体のまちづくりの方向性を示す中で説明責任を果たすというものである。
 定住自立圏として脚光を浴びている「南信州定住自立圏」は、そもそも南信州広域連合が根づき、構成自治体の議会の交流があった。その意味で、広域連携において、議員同士の連携は重要である。
 もう1つは、広域連携の構成自治体の議会が積極的に広域連携で行われている行政サービスを監視し政策提言を行うことの重要性の指摘である。「圏域での取組について、例えば、委員会を設ける等により不断にチェックすることが必要である」というものである。
 広域連携によって提供する行政サービス(およびその体制)について、当該自治体の議会でも議論することを躊躇(ちゅうちょ)する場合も少なくない。当該自治体に関すること以外は、一般・代表者質問にはなじまないという申し合わせ等を持つ議会もあるからである。住民に密接にかかわるサービスであってもである。たしかに、構成自治体の議会においてその首長に対して、広域連合や一部事務組合に関する質問をしたとしても、別の自治体(特別地方公共団体)の事務に関することなので答弁できないことは了解できる。しかし、委託や共同設置等の共同処理については、当該議会で質問も可能である。どちらにせよ、広域連合・一部事務組合やその他の広域連携の事務に関する事項について構成自治体の議会、とりわけ委員会等でしっかりと監視・政策提言をすべきである。
 広域連合や一部事務組合といった特別地方公共団体では、議会において今日の議会改革の到達点を活用するとともに、広域連携の構成自治体の議会、とりわけ委員会で積極的に議論し監視や政策提言を行うことが重要である。ときには、参考人として関係自治体の首長等、広域連合や一部事務組合の理事等を呼ぶこともできる(6)
 このように、答申が住民自治の原則から広域連携にかかわる議会の対応を指摘したことは重要である。

② 議会改革が認知されている
 さまざまな努力で行われている議会改革の到達点が列挙されている。
 まず、議決事件の対象の拡大である。「議会が団体意思決定機能や政策形成機能、監視機能を効果的に発揮するため、地方自治法第96条第2項に基づき、地方公共団体の基幹的な計画等を議決事件に追加する等の取組を積極的に進めることが必要である」という。総務省が自治法96条1項の事項を「必要的議決事件」、同条2項を「任意的議決事件」と区分し、後者の意義を強調したのは、29次地制調での議論の中であった。2000年に福島県月舘町(現伊達市)が基本計画を議決事件に追加したことから広がったが、隔世の感がある動向である。
 また、情報発信については、「議会活動に対する住民の理解を深めるため、ホームページ等を通じた議会情報の提供や議案等に対する住民の意見聴取、議会自らが行う議会活動の評価等、ICTを積極的に活用しつつ情報発信等の充実を図っていくべきである」という指摘がある。重要なことではあるが、議会ではすでにさまざまな試みがある。
 さらに、「意思決定過程への住民参加」として、議会への住民参加(公聴会、参考人、専門的事項に係る調査制度等の積極的活用)とともに、議場外への住民参加(住民への報告や住民との意見交換の実施等)を提案している。これも、すでに多くの議会で試みられている重要な取り組みである。ただし、こうした住民参加は何も「意思決定過程」だけにかかわるわけではなく、監視・評価にも密接にかかわることも指摘しておこう。

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江藤俊明(山梨学院大学大学院社会科学研究科長・法学部教授)

この記事の著者

江藤俊明(山梨学院大学大学院社会科学研究科長・法学部教授)

山梨学院大学大学院研究科長・法学部教授 博士(政治学、中央大学) 1956年東京都生まれ。 1986(昭和61)年中央大学大学院法学研究科博士後期課程満期退学。専攻は地域政治論。 三重県議会議会改革諮問会議会長、鳥取県智頭町行財政改革審議会会長、第29次・第30次地方制度調査会委員等を歴任。現在、マニフェスト大賞審査委員、議会サポーター・アドバイザー(栗山町、芽室町、滝沢市、山陽小野田市)、地方自治研究機構評議委員など。 主な著書に、『続 自治体議会学』(仮タイトル)(ぎょうせい(近刊))『自治体議会の政策サイクル』(編著、公人の友社)『Q&A 地方議会改革の最前線』(編著、学陽書房、2015年)『自治体議会学』(ぎょうせい、2012年)等多数。現在『ガバナンス』(ぎょうせい刊)連載中。

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