たちかわ・財政を考える会会長 加藤良重
たちかわ・財政を考える会
(1)設立の経緯
平成19年の夕張市の財政破綻を受けて、全国的に自治体財政への関心が高まって、市民が自分たちのまちの財政を学ぶ動きが広がりました。立川市においても、遅ればせながら平成24年度から26年度にかけて、市民交流大学・市民企画講座として財政に関する講座・講演会が実施されました。この講座の参加メンバーが中心になって、自治体財政のことをさらに学んで、我がまちの財政について考え議論しながら財政白書づくりに挑んでみようということになりました。そこで、平成26年4月1日に「たちかわ・財政を考える会」を立ち上げて、活動を始めました。会員は市議会議員も含めて23人ですが、今後も広く参加を呼びかけていくことにしています。
(2)主な活動事例
会の発足から白書の発行までの1年10か月の間に次のような活動を行いました。
① 学習会
② 資料の収集・集計
③ 原稿分担執筆・図表の作成
④ 定例会
⑤ 共同編集会議
⑥ 完成発表会
まずは学習会として、市の出前講座を活用し、予算・決算などの学習会を計4回実施しました。さらに計算や図表づくりのためのエクセル勉強会を、会員の指導で計4回行いました。
さらに、市政情報コーナー、図書館、インターネットなどでの資料収集及びこれらの集計、市内を回っての写真撮影などを行いました。
財政白書の原稿については、執筆・図表の作成を分担して行いました。本文10人、インタビュー3人、「私のひとこと」コーナーを16人に分担して原稿を執筆し、エクセルを使いこなせる会員と共同して図表を作成しました。
また白書の制作のための定例会を定期的に開催し(計15回)、この場で企画、進捗状況の確認、意識合わせ、意見交換を行いました。白書は、A4判・79頁・カラー印刷で600冊を発行し、1冊500円で有償頒布することとしました。印刷製本費は、総額51万2,600円(1冊当たり854円)で、立川市の協働のまちづくり推進事業補助金25万円と宗教団体の市民活動公募助成15万円に応募するとともに、会員の「債券」(1口5,000円)購入費(31口)で賄いました。なお、債券購入費の返済については頒布代金を充てることにしています。
財政白書の編集過程では、多くの会員が参加する場である共同編集会議も実施し、原稿の検討を計14回行いました。装丁・割付け、図表の作成などの編集作業も会員自らの手により行いました。
最終的に平成27年12月1日付けで財政白書を発行しました。同年12月7日に「完成発表会」を行い、会員を含めて市民・議員・自治体職員など、予想を超える67人の参加がありました。
たちかわ市民財政白書の概要
財政白書の書名を「市民からみた立川市の財政―知っておきたい税金の使われ方―」としていますが、通称を「たちかわ市民財政白書」としました。全7章の構成で、原稿を検討し合う中で、追加・修正を繰り返しました。
第1章の「立川市はどんなまち」では、我がまちの歴史や特徴と長期総合計画に基づく将来像などについてまとめました。第2章の「財政をよりよく理解するために」では、広く自治体環境の変化、自治体の役割・政策・計画、財政に関する基本的事項などを簡潔に説明しています。この章は、個別原稿を検討する中で追加されたものです。第3章の「歳出の状況―政策実現の経費―」では、歳出を政策実現の経費として捉え、歳出全体を目的別・性質別にみた上で、金額の多寡ではなく福祉・都市づくりなど重要課題となっている個別分野の現状を把握・分析し、課題を提起しました。第4章の「歳入の状況―財源の確保―」では、財源の種類と歳入全体の状況をみた上で、主な財源について現状を把握・分析し、課題も提起しました。第5章の「お金のやり繰り」では、借金・積立金、特別会計繰出金及び競輪事業を財源となるお金のやり繰りと捉えてその現状を把握・分析し、課題を提起しました。第6章の「財政運営の実績」では、決算について、財政力指数や経常収支比率など4つの代表的な財政指標に絞り、また資産・負債及び行政サービスのコストの状況を財務諸表からみました。終章の「市民が望む財政運営(提言)」では、我がまちの財政運営について市民からみて望ましいあり方を考え、当初「課題」としていたものを「提言」としました。
たちかわ市民財政白書づくりの特徴
立川市では「やさしい財政白書」を毎年度発行し、希望する市民に無償配布し、中学3年生全員には副教材として配布されています。そこで、この白書に「屋上屋を重ねる」ことのないよう主権者・納税者である市民の立場からの視点・論点で「たちかわ市民財政白書」づくりに取り組みました。この財政白書の特徴点と考えられることを挙げてみます。
◯多層な市民の多様な参加形態での市民手づくりの「共同作品」です。
会員は、年齢(40~80歳代)、性別、職業歴、各種地域活動・市民活動歴などの異なる市民によって構成されています。白書づくりには、会員が検討会への出席・発言、資料の収集・集計・印刷、原稿の執筆、図表の作成、取材、写真撮影、編集、宣伝、配本など多様な形態で参加しています。例えば、資料については、市政情報コーナーにおいて立川市及び東京の類似団体9市の決算カードを中心に何人もの参加で選択・コピーをし、地域学習館で印刷・製本して会員に配付しました。また、市内巡りによる写真撮影、原稿の分担執筆、原稿の検討や校正などを多くの会員の協働で行いました。
◯「地方自治」と「生涯学習」の実践の場となっています。
財政白書づくりで、我がまち立川の歴史・政策・財政についてともに学ぶことは生涯学習の実践であるとともに、自らの地域のことを知り、課題や解決策を考えるということは「地方自治」の出発点の活動でもあります。今後、この白書をテキストとして、さらに広く市民の参加を呼びかけて学習を深め、市民が誇りの持てるよりよい立川のまちづくりの活動に結びつけていきたいと考えています。
◯主権者・納税者である市民の立場・視点から税金の使われ方をみています。
①書名の「市民からみた」が市民の立場を明らかにしています。書名は何回も書き直しています。内容は「財政」に限定せず、行政(政策の立案・実施)にも言及した「行財政白書」ともいうべきものになっています。②立川の歴史、財政をよりよく理解するための基本的事項、提言など「白書」としては異色のものとなっています。③「まず政策ありき」で政策の実現経費としての歳出を先行させています。「出ずるを量って入るを制する」との考え方に基づいています。④執筆者の原稿を最大限に尊重することとしたために個別項目の切り口・書きぶり・内容などで個性を出しています。⑤できる限り文章の分かりやすさを心がけ、図表を多用しています(図43点、表24点)。図表については出典資料から独自に集計・作成しています。⑥「決算カード」を基本資料として、10年間の経年変化と他市比較(東京26市・類似団体、全国類似団体)を共同作業により集計しています。資料編に決算カードとその説明、集計数値の一部抜粋を載せています。⑦「立川市の財政」としていますが、自治体に共通する部分が多いので、全国の自治体の参考にもなります。また、多くの市民・議員・自治体職員の共通認識としたい内容となるよう心がけました。さらに、行政当局にとっては言いにくいことについても言及するようにしています。⑧終章に「市民が望む財政運営(提言)」として、自治体・議会への改善策・政策の提言を行っています。
今後の活動の展望
白書をつくって終わりとするのではなく、今回の白書づくりを次のステップへのバネとして、多くの市民・議員・自治体職員が財政に関する知識・情報を共有し、課題を共通認識とするために、次のような活動を展望しています。
(1)白書の普及活動
いろいろな機会を捉えて、多くの市民・議員・自治体職員に「たちかわ市民財政白書」の普及活動を進めていきます。
(2)学習会の開催
この財政白書を基本テキストとして、不足するところを補いながら、広く市民・議員・自治体職員に参加を呼びかけて学習会を継続的に実施していきます。
(3)資料集の作成と2弾目の白書づくり
学習会の補足資料などを整理・集約して、資料集を作成します。また、2~3年後をメドに2弾目の「たちかわ市民財政白書」の発行を目指します。
(4)行政の刷新・改革の提言
主権者・納税者としての市民の立場から、必要に応じて、議会や首長などに対して行政の刷新・改革のための要望や政策の提言・提案を行っていきます。

