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2015.09.10 選挙

1票の実感が持てる政治を~未来有権者調査結果から見えるもの~

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早稲田大学マニフェスト研究所事務局次長 青木佑一

 6月の通常国会で公職選挙法が改正され、2016年夏の参議院議員選挙から選挙権が満18歳以上へ拡大されることが決まった。超党派の政策型地方議員で構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」は「18歳選挙権」時代を前に未成年者を「未来の有権者」と捉え、彼ら・彼女らの政治参加を推進するために自らの立場で何ができるかを探るため「未来有権者調査」を実施した。2015年7月22日から7月30日まで、全国の15歳から19歳の男女から932回答をインターネット調査で収集した。その結果のうち、特徴的なところだけを紹介したい。
 結論からいうと、年を重ねるにつれ増加する政治への「悪い思い込み」に支配される前に、主権者教育や地方議員などの普段の活動で「良いイメージ」が持てるような環境づくりが重要だということを強調したい。

政治との距離感、有権者ほど悪いイメージはない

 まずQ2「政治意識」やQ6「地方議員のイメージ」について聞いているので紹介する。それによると、15~19歳の政治関心を持つ層は「強くそう思う+少しそう思う」を足すと約半数おり、「投票したい」と考える割合も49.5%もいる。「政治は必要」、「政治によって世の中は変わる」と考える人も6割近くいて、政治の有用性も理解している。しかし、最も注目すべきは、「自分の1票で世の中は変わる」、「政治は若者の方を向いている」とは思っていない点だ。特に男性よりも女性の方がその傾向が強い。今の若年層の政治離れ、政治不信の根幹には、政治との「距離感」、「無力感」があることをしっかり押さえることが必要だ。

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 次に「地方議員のイメージ」について、未来有権者の回答と昨年夏に全国の有権者1,000人に調査した結果との比較を見ていく。ここからうかがえるのは、「未来有権者」は今の有権者ほど顕著に地方議員に対する悪いイメージを持っていないことだ。年齢ごとのクロス集計をとると、年齢を重ねるごとに有権者の持つイメージに近づいていくことも分かった。

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要因はメディアのニュースやインターネットの情報、周囲の大人の声など様々あると思うが、彼ら・彼女らが年齢を重ね情報に触れることで「悪い思い込み」に支配されるとしたら大きな問題である。

「実行力」「政策」を求める態度、新聞よりテレビ志向

 新たに増える約240万人の未来有権者たちは、選挙の際にどのように判断するのだろうか。「資質」について聞くと、大人の有権者と同じで、「実行力・行動力」、「政策・提言」、そして「人柄」の回答が多かった。一方、「情報入手の手段」について聞くと「テレビ報道」、「マニフェスト(選挙公約)」、「街頭演説」が上位であり、「選挙公報」はあまり参考にされない。新聞よりテレビで情報収集する傾向があるのも、今の有権者と違う点だ。また、選挙判断において必ずしもネットが強いわけではない点は注意が必要だ。ネット=若者のツールという思い込みは捨てるべきで、目的と状況に応じて使い分けるべきだ。

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感動を与える議員の仕事が政治へ目を向けさせるきっかけになる

 以上、調査結果を早足で見てきた。政治との距離感・無力感がある中で求められるのは、政治に触れる機会の創出と政治で現実が変わる経験だ。悪いイメージを持っていない年代だからこそ、未来の有権者が「悪い思い込み」に支配されず「良い思い込み」を持てるよう、地域課題を考える場や模擬議会や模擬選挙、そして議員など政治家の普段の活動が重要になってくる。
 「18歳選挙権」は、より政治や社会のことを考え、触れる機会が増えることが期待されており、主に高校生へ向けて社会を担う一員としての知識と態度を育む「主権者教育」に注目が集まる。8月現在、主に文科省によって副教材がつくられており、地域課題を見つけ議論することや、模擬選挙や模擬議会などの実践事例も記載される予定だ。
 これまで教育と政治・選挙は、政治的中立性・公平性を理由に「分断」されてきたといえる。しかし、それは未来の有権者としての彼ら・彼女らの立ち位置に立ったものとは必ずしもいえない。本来的には、実際の地域課題を若い彼ら・彼女らの意見を対話でまとめ、議会や行政へ提言し、実際に予算がついて実施されるべきであり、かつ、模擬選挙も周りの大人と同じように実際の選挙期間中に本物の立候補者情報や政策を使って模擬選挙をすることが望ましい。大事なことは実社会とのつながりであり、子ども相手だからとごまかさないことだ。
 そして、未成年者に最も距離が近い地方議員や議会こそが彼ら・彼女らへ感動を与える仕事をし「信頼される議会になる」ことで、未来有権者は地域社会や政治に目を向け、投票にも行くようになるだろう。

まずは今の有権者が政治を信じられる環境を整えること

 「若者向けの政策がなく、選べなかった」、「消去法で選挙の投票先を選ぶと、消極的な支持にしかならないことに気づいた」。
 早稲田大学マニフェスト研究所は、埼玉県知事選で「マニフェストスイッチ型模擬選挙」を県内高校で実施したが、これは投票を終えた高校生の口から出た言葉である。私たちは、この言葉をしっかり受け止めないといけない。そもそも昨今の投票率低下を若年層の投票率に求めること自体が「悪い思い込み」だ。世代別投票率という「割合」にだまされてはいけない。「実数」で見れば、投票率の低下は、明らかに中高年齢層が投票に行かなくなったことが原因である。本当の意味で若年層の「政治離れ」、「政治不信」を変えたいと願うなら、まずは今の有権者が政治を信じられる環境を整えることだ。そのうち最も重要なもののひとつは、選挙を政策で選び投票することだろう。未来の有権者が政治を信頼して社会に参画できるよう、私たちにできることはたくさんある。

調査概要
調査方法:インターネット調査
調査期間:2015年7月22日~7月30日
調査対象:全国の15~19歳の男女
有効回答 932回答
※15~19歳と登録してあるモニターに対して男女半数に回答依頼。男女比が男性55%、女性46%であるため、全体の集計結果に男性のバイアスを割り引いて考える必要がある。

調査設問一覧
Q1 あなたの普段の支持政党を教えてください。
Q2 18歳へ投票年齢が引き下げられ、来年7月の参議院議員選挙から18歳から投票できるようになりました。あなたは政治に関心がありますか。また、投票権を得たら選挙で投票したいと思いますか。加えて、政治に対するイメージも教えてください。
Q3 政治に関わる職業について聞きます。あなたは総理大臣や、約700人いる国会議員のうち1人以上の名前を知っていますか。また、あなたの住んでいる地域にいる選挙で選ばれた衆議院議員、参議院議員、知事、都道府県議会議員、市区町村長、市区町村議員のうち1人以上の名前を知っていますか。当てはまるものを教えてください。
Q4 政治に関わる職業の人たちが、それぞれどのような仕事をしているか、知っていますか。
Q5 政治に関わる職業の人たちに直接会ったり、応援したいと思いますか。当てはまるものにすべてチェックを入れてください。
Q6 地方議会(都道府県議会、市区町村議会)の議員について、あなたが持つ印象を教えてください。
Q7 あなたが投票権を得たら、選挙の立候補者への投票先を決める際に【参考にしたい情報入手の手段】を教えてください。
Q8 あなたが投票権を得たら、選挙で候補者を選ぶ際に【重視したい資質・理由】は何ですか。

■調査結果資料
http://www.maniken.jp/gikai/date/150908LMresearch_PR.pdf

青木佑一

この記事の著者

青木佑一

早稲田大学マニフェスト研究所事務局次長 1985年東京都生まれ。早稲田大学社会科学部卒、同大大学院公共経営研究科修了。選挙サイト、世論調査会社勤務を経て、株式会社パイプドビッツ「政治山」で行政・議会・議員を対象に記者職、選挙情勢調査・分析に従事。現在、早稲田大学マニフェスト研究所で議会改革、選挙事務改革、人材マネジメント部会、政策のオープンデータ化「マニフェストスイッチプロジェクト」を担当。 Facebook:yuichi0613

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