「実行力」「政策」を求める態度、新聞よりテレビ志向
新たに増える約240万人の未来有権者たちは、選挙の際にどのように判断するのだろうか。「資質」について聞くと、大人の有権者と同じで、「実行力・行動力」、「政策・提言」、そして「人柄」の回答が多かった。一方、「情報入手の手段」について聞くと「テレビ報道」、「マニフェスト(選挙公約)」、「街頭演説」が上位であり、「選挙公報」はあまり参考にされない。新聞よりテレビで情報収集する傾向があるのも、今の有権者と違う点だ。また、選挙判断において必ずしもネットが強いわけではない点は注意が必要だ。ネット=若者のツールという思い込みは捨てるべきで、目的と状況に応じて使い分けるべきだ。
感動を与える議員の仕事が政治へ目を向けさせるきっかけになる
以上、調査結果を早足で見てきた。政治との距離感・無力感がある中で求められるのは、政治に触れる機会の創出と政治で現実が変わる経験だ。悪いイメージを持っていない年代だからこそ、未来の有権者が「悪い思い込み」に支配されず「良い思い込み」を持てるよう、地域課題を考える場や模擬議会や模擬選挙、そして議員など政治家の普段の活動が重要になってくる。
「18歳選挙権」は、より政治や社会のことを考え、触れる機会が増えることが期待されており、主に高校生へ向けて社会を担う一員としての知識と態度を育む「主権者教育」に注目が集まる。8月現在、主に文科省によって副教材がつくられており、地域課題を見つけ議論することや、模擬選挙や模擬議会などの実践事例も記載される予定だ。
これまで教育と政治・選挙は、政治的中立性・公平性を理由に「分断」されてきたといえる。しかし、それは未来の有権者としての彼ら・彼女らの立ち位置に立ったものとは必ずしもいえない。本来的には、実際の地域課題を若い彼ら・彼女らの意見を対話でまとめ、議会や行政へ提言し、実際に予算がついて実施されるべきであり、かつ、模擬選挙も周りの大人と同じように実際の選挙期間中に本物の立候補者情報や政策を使って模擬選挙をすることが望ましい。大事なことは実社会とのつながりであり、子ども相手だからとごまかさないことだ。
そして、未成年者に最も距離が近い地方議員や議会こそが彼ら・彼女らへ感動を与える仕事をし「信頼される議会になる」ことで、未来有権者は地域社会や政治に目を向け、投票にも行くようになるだろう。
まずは今の有権者が政治を信じられる環境を整えること
「若者向けの政策がなく、選べなかった」、「消去法で選挙の投票先を選ぶと、消極的な支持にしかならないことに気づいた」。
早稲田大学マニフェスト研究所は、埼玉県知事選で「マニフェストスイッチ型模擬選挙」を県内高校で実施したが、これは投票を終えた高校生の口から出た言葉である。私たちは、この言葉をしっかり受け止めないといけない。そもそも昨今の投票率低下を若年層の投票率に求めること自体が「悪い思い込み」だ。世代別投票率という「割合」にだまされてはいけない。「実数」で見れば、投票率の低下は、明らかに中高年齢層が投票に行かなくなったことが原因である。本当の意味で若年層の「政治離れ」、「政治不信」を変えたいと願うなら、まずは今の有権者が政治を信じられる環境を整えることだ。そのうち最も重要なもののひとつは、選挙を政策で選び投票することだろう。未来の有権者が政治を信頼して社会に参画できるよう、私たちにできることはたくさんある。
調査概要
調査方法:インターネット調査
調査期間:2015年7月22日~7月30日
調査対象:全国の15~19歳の男女
有効回答 932回答
※15~19歳と登録してあるモニターに対して男女半数に回答依頼。男女比が男性55%、女性46%であるため、全体の集計結果に男性のバイアスを割り引いて考える必要がある。
調査設問一覧
Q1 あなたの普段の支持政党を教えてください。
Q2 18歳へ投票年齢が引き下げられ、来年7月の参議院議員選挙から18歳から投票できるようになりました。あなたは政治に関心がありますか。また、投票権を得たら選挙で投票したいと思いますか。加えて、政治に対するイメージも教えてください。
Q3 政治に関わる職業について聞きます。あなたは総理大臣や、約700人いる国会議員のうち1人以上の名前を知っていますか。また、あなたの住んでいる地域にいる選挙で選ばれた衆議院議員、参議院議員、知事、都道府県議会議員、市区町村長、市区町村議員のうち1人以上の名前を知っていますか。当てはまるものを教えてください。
Q4 政治に関わる職業の人たちが、それぞれどのような仕事をしているか、知っていますか。
Q5 政治に関わる職業の人たちに直接会ったり、応援したいと思いますか。当てはまるものにすべてチェックを入れてください。
Q6 地方議会(都道府県議会、市区町村議会)の議員について、あなたが持つ印象を教えてください。
Q7 あなたが投票権を得たら、選挙の立候補者への投票先を決める際に【参考にしたい情報入手の手段】を教えてください。
Q8 あなたが投票権を得たら、選挙で候補者を選ぶ際に【重視したい資質・理由】は何ですか。
■調査結果資料
http://www.maniken.jp/gikai/date/150908LMresearch_PR.pdf