地方選挙には、一般選挙といって都道府県や市区町村(地方公共団体)の議会の議員の全員を選ぶ選挙があり、これには任期満了(4年)だけでなく、議会の解散などによって議員又は当選人の全てがいなくなった場合の選挙も含まれる。
もうひとつが都道府県知事や市区町村長など地方公共団体の長を選ぶ選挙であり、任期満了(4年)のほか、住民の直接請求(リコール)による解職や、不信任議決による失職、死亡、退職、被選挙権の喪失による失職の場合などの選挙も含まれる。その他に設置選挙といって新しく地方公共団体が設置された場合に、その議会の議員と長を選ぶために行われる選挙がある。
統一地方選挙とは、地方公共団体の長と議会の議員の選挙を、全国的に期日を統一して行う選挙で、4年に1度、4月の第2日曜日と第4日曜日に全国の自治体で一斉に首長選と議会選挙を行うことをいう。日本国憲法の施行を控え全国で一斉に地方選挙を実施したことをきっかけに、1947(昭和22)年の第1回から4年ごとに行われ、2015年で18回を数える。統一選挙は選挙への関心を高めて投票率を上げたり、選挙の事務コスト(投開票に関わる人件費、入場券の郵送費、立会人らの報酬など)を抑えたりするのに有効だとされ、できるだけ地方選挙の日程を統一選挙に集中させようとしてきた。
統一地方選挙の投票日は国が閣議決定を経て「地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律」で定めるが、2015年の統一地方選挙は都道府県と政令市の首長・議員選挙は4月12日(前半戦)、それ以外の市区町村の首長・議員選挙は同26日(後半戦)と決められた。
2015年統一地方選挙では、知事選は北海道、神奈川、福井、三重、奈良、鳥取、島根、徳島、福岡、大分の10道県、政令市長選は札幌、相模原、静岡、浜松、広島の5市で、都道府県議会選では茨城、東京、沖縄を除く44道府県で、政令指定都市議会選挙でも静岡、名古屋、北九州を除く17市で選挙が行われる見込みである。
統一地方選挙の「統一率」
統一地方選挙といっているが、首長の任期途中での辞職や死亡、議会の解散、市町村合併などにより任期のズレが発生し、そのために統一的に実施される数は回を経るごとに下がる傾向にある。ただし、首長選挙と議会議員選挙では様子が異なっている。
統一地方選挙の日程で選挙を実施する地方公共団体の全体数に対する実施数の割合=統一率(%)を見ると、都道府県では知事が25.53、議会が87.23、政令指定都市では市長が26.32、議会が78.95、政令指定都市以外の市では市長が11.47、議会が38.20、特別区では区長が56.52、議会が91.30、町村では町村長が12.90、議会が39.87である(総務省報道資料「平成23年統一地方選挙執行予定団体に関する調」)。
都道府県議会・政令指定都市議会議員選挙「統一率」が高いのは、①住民発議による解散請求(リコール)の投票で過半数の賛成により議会が解散された例がほとんどないこと(過去に1例で名古屋市会が2011年2月6日解散、同年3月13日投票)、②都道府県知事、政令指定都市市長の不信任決議案の可決(議員数の3分の2以上の出席で4分の3以上の賛成が必要)に伴う議会の解散の例がないこと(岐阜県、長野県、徳島県、宮崎県で知事の不信任決議案が可決されたが、いずれも知事が議会を解散せず失職又は失職前の辞職を選択した)、③都道府県議会、政令指定都市市議会の自主解散(議員数の4分の3以上出席で5分の4以上の賛成が必要)の例が過去に2例しかないこと(東京都議会が1965年6月14日解散、同年7月23日投票、茨城県議会が1966年12月21日解散、1967年1月8日投票)、④都道府県の統廃合の例がないことなどによっている。
東京の特別区は、市町村の首長・議会議員の選挙と比較して統一地方選挙の日程で実施される割合が高い。区長選が統一地方選挙の日程で実施される割合が高いのは、特別区の廃置分合が1947(昭和22)年8月1日に板橋区から練馬区が分立した1例のみであること、1952(昭和27)年以降区議会が都知事の同意を得て選任することとされた区長が地方自治法改正により公選によって選出されることになり1975(昭和50)年4月の統一地方選挙では23区の全てで区長選が実施されたためである。その後、区長の任期途中での辞職や死亡により統一地方選挙の日程で実施される区長選は13区となっているものの、市町村の首長選挙と比較すると統一地方選挙の日程で実施される割合が高い。
区議会議員選挙が統一地方選挙の日程で実施される割合が高いのは、①住民発議による解散請求(リコール)の投票で過半数の賛成により議会が解散された例がないこと、②区長の不信任決議案の可決(議員数の3分の2以上の出席で4分の3以上の賛成が必要)に伴う議会の解散の例は過去3例(練馬区議会1967年5月解散、同月投票、葛飾区議会1993年9月解散、同年10月投票、足立区議会1999年4月解散、同月投票)しかないこと、③区議会の自主解散(議員数の4分の3以上の出席で5分の4以上の賛成が必要)の例がないこと、④特別区の廃置分合が1947年8月1日に練馬区が板橋区から分立、同年9月20日区長選・区議選が行われた以外にないことによる。
一般市の議会や町村議会の選挙における統一率の低さには大規模な市町村合併が影響を及ぼしていると考えられる。統一地方選挙の「統一率」の向上が課題だといわれるが、「統一率」を上げるためには統一地方選挙で選挙を実施していない首長や議会議員の任期を延長するか短縮するしかない。これには異論も多く、選挙事務コストの削減論ではクリアしにくい自治体ごとの実情が反映している。
下がり続けている統一地方選挙における投票率
統一地方選挙における投票率(%)の推移を見ると、第8回1975年4月選挙では、知事選は71.92、都道府県議選は74.13、市区町村長選は72.60、市区町村議選は75.39であったが、それ以降、若干の変化は見られたが、低下傾向が続き、第17回2011年4月選挙では、それぞれ52.77、48.15、51.54、49.86と落ち込んでいる(公益財団法人明るい選挙推進協会「統一地方選挙の投票率推移」)。「統一」だから投票率を上げられるわけではない。
都道府県議選での投票率の低さが目立っているが、市区町村議選の投票率も5割を切っている。平均投票率は有権者数と投票者数をそれぞれ足し上げた加重平均であるため、人口の多い都市部の傾向が強く出るが、町村長、町村議の選挙でも投票率が落ちており、地域住民の選挙への関心そのものが低下していると見られる。
なぜ有権者は選挙で1票を投じようとするのか。その理由は一般的には有権者の有効性感覚の有無によって説明される。「世の中は変化する、その変化は政治によってかなり左右される、その政治の変化に自分の1票が役立つ」という意識である。
この有効性感覚に訴える投票の呼びかけが「あなたの1票が政治を変える」である。これは、現実の1票差で選挙結果が決まるという意味ではなく、一人ひとりの1票の積み重ねが政治を動かし、世の中を大きく変えるということである。もっとも地方選挙の場合、得票数が1票差どころか同数になることもあるから1票はばかにならない。
地方議会議員の選挙における投票率が首長選挙に比べて低いのは、有権者が1票を投じても議会は変わらないと諦めているからであろうか。有権者の意識には地方議会の存在理由に対する深い疑念が沈潜しているのかもしれない。投票率が低くとも当選した議員が議会を動かすから、議会は制度としては存在し続ける。しかし、それは有権者の一般的支持が弱いという意味で軽い存在だといわれかねない。2015年選挙でも投票率は下がり続けるだろうか。低下しても統一選挙であるがゆえにクローズアップされ、国政の動きにも無視できない影響を与えるかもしれない。
東京都の猪瀬直樹知事が2013年12月辞任し、2014年2月に舛添要一氏が都知事に当選したため、第18回目にして、初めて統一地方選挙で都知事選挙が行われない。各党領袖は告示日の第一声をどこで上げるのであろうか。第18回はインターネット選挙運動が解禁されて初めての統一地方選になる。選挙戦術にICTの駆使能力が反映する。