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2014.09.10 選挙

ノウハウ伝授!住民参加型選挙のツボ

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しがらみのない政治活動はクリーンな選挙から──住民参加型選挙が重要な理由

 「どんな選挙をしたかによって、その後の4年間の議員としての政治姿勢が決まります。従来型の『地盤・看板・かばん』選挙ではない、『住民参加型』選挙、これは、それほど難しいことではありません」
 これは、市川房枝記念会女性と政治センター発行の『住民参加型選挙運動ハンドブック入門編』冒頭に掲げた同ハンドブック編集委員会からのメッセージである。
 選挙は「地盤・看板・かばんの世界」とは、言い古された言葉だが、今、どうだろう。いまだに女性の比率が1割でしかない地方議会にあっては、三バンがなければ選挙などおぼつかない「金と権力の世界」なのか、有権者がその呪縛から逃れられないでいるのか、いずれにしても、選挙や政治に関わることについて、多くの人がマイナスイメージを持つゆえんだろう。
 低い投票率、「どうせ誰がやっても変わらない」、「投票したいと思う人がいない」、これもよく聞く。だが、顧みれば有権者みんなでそう言い合う無責任体質が、この国をここまでおとしめたともいえよう。
 しかし、そうであるなら「変える誰かになればよい」、「投票したいと思う人をみんなで押し出せばよい」、こう考える人も、実はまた多いのではないだろうか。住民参加型選挙は、そうした思いがあれば成立する。
 「どんな選挙をしたかによって、当選後の4年間の動き方が決まる」、すなわち、特定の団体から支援を受けた場合は、その団体のために働き、特定の地域の有力者の支援を受けた場合は、地域住民ではなく有力者のために働く。そのしがらみは強く大きい。
 しがらみをなくしたければ、住民とともに選挙をすればよい。これが住民参加型選挙を勧める理由だ。議員として、どちらを向いて仕事をするのかは重要だ。従来型の政治と決別するには、選挙で借りをつくらないこと、しがらみのないところで勝負をかけ、全ての住民のために働く政策本位の議員を選んでいく。単純だが、明快な政治改革ではないだろうか。
 住民参加型選挙では、チャレンジを思い立った人、それを支えようという人が主体だ。既成概念にとらわれずに、「自分たちの選挙」を考えてみよう。費用はそれほどかからない。それよりも必要なのは「仲間の力」であり、志である。
 公職選挙法にのっとってクリーンに、自分たちの思いを形にしていくことを提案したい。最大のポイントは、仲間づくり、そして楽しみながら進めること。楽しくなければ続かない。

さぁ、「住民参加型選挙」を始めよう

 

STEP1 立候補を思い立ったら

 まず、確認しなければならない点が3つある。
① なぜ立候補するのか(理由)
② 何を目指すのか(理念・政策)
③ 家族の理解を得られるか
 仲間を送り出そうという場合には、
① 女性議員が必要と考えたのはなぜか(理由)
② 何を実現するために送り出すのか(目的)
ここを押さえよう。
 自分自身をタテからヨコ、斜めと、あらゆる角度から俯瞰的に見ながら「地域に愛着を持って、地域の課題に取り組めるか」を考えよう。この作業は困ったとき、悩んだときには支えとなり、原点に戻って考えるときの基となる。
 選挙はひとりではできない。多くの仲間が必要だが、当初は少人数で構わない。何を目指すのか、じっくり話し合おう。ぶつかることもあるだろうが、おそれずに向き合うことで、課題が何か、どこにあるかが見えてくる。こうした作業を積み重ねることが、住民参加型選挙そのものであり、議会に入ってからも一緒に活動を続けていくベースとなることを踏まえよう。
 こうして、志を同じくする人たちを確保したら、後は、楽しみながら周到な準備へと進める。チャート「選挙までの流れ」に沿って、やるべきことを一つひとつ押さえながら、時系列で見ていこう。

図:チャートで見る選挙までの流れの一例(『住民参加型選挙運動ハンドブック入門編』より作成)

STEP2 選挙の遅くとも半年前

♪仲間を募り、誰でも入れるような会をつくろう
♪自分たちが何を目指すのかトコトン話し合おう
♪話し合ったまとめが「リーフレット」になる、会報やホームページで考え方や政策のアピールも!
♪「クリーンな選挙、お金をかけない選挙」を目指して、カンパやイベントで資金づくりを!

 思いついたことは、とりあえず、何でもやってみればよい。ただ、公職選挙法で注意すべき点を挙げておこう。
〈政治活動〉と〈選挙運動〉の違いである。
 〈政治活動〉とは、政策の宣伝普及、政治啓発を行うこと。政治活動は選挙が始まるまでの準備期間に行う。すなわち選挙の告示日前日までの活動である。
 例:「〇〇市議会に女性を送り出そう」、「無所属市民派の議員を増やそう」、「○○政策を進めよう」など。
 〈選挙運動〉とは、特定の候補者を、特定の選挙を目的に、有権者に働きかけること。したがって、選挙が始まった告示日から選挙期間中に、候補者の名前を挙げて、投票を呼びかける。これが選挙運動である。
 例:「〇〇さんを、〇〇市議として送ってください」、「投票日には○○さんをお願いします」など。
 告示前に、名前を挙げて投票依頼をすると「事前運動」となって公職選挙法に抵触する。しかし、立候補を決めるまでの間、友人・知人、親しい人に、「私、選挙に出ようと思うんだけど、あなた、どう思う?」と相談することは認められている。「瀬踏み行為」といわれるものである。
 さて、誰でも入れるような会をつくったら、その会を政治団体として、都道府県の選挙管理委員会に届けよう。届けを出したら、その団体の名前で政治活動、上記の「○○市議会に無所属市民派の女性議員を送り出そう」といった活動ができるようになる。
 政治団体の名称は、例えば筆者の場合では「鈴木のりこ応援団」。いわずもがなで、活動とセットで立候補予定者が分かる仕掛けとなる。
 政治団体は、遅くとも投票日の3~4か月前には届けよう。届出には、規約・代表者・会計責任者が必要で、代表者は立候補予定者がなることもできるが、できれば、本人以外に。規約の書式は選挙管理委員会にあり、簡単なもので十分だ。
 政治団体の名前でリーフレットをつくる。仲間とトコトン話し合った内容を理念・政策としてリーフレットにまとめていこう。立派な印刷でなくても構わない。その目的を具現化する立候補予定者として、リーフレットを友人・知人の手から手に渡し、名前を多くの住民に知ってもらう、これが政治活動ということになる。
 会員は自発的な加入が第一だが、多くは立候補予定者や仲間が関わる活動団体や職場の仲間、友人・知人、ご近所、親戚などに入会を呼びかけ、支援者を増やしていく。
 入会者にはお礼の手紙や電話、今後のイベント予定のチラシや会報などを届けて、さらに、候補者の人となりを知ってもらおう。女性たちの草の根の人脈がモノをいう場面だ。ITに強い仲間がいたらホームページやブログで発信し、政治団体事務所(本人や仲間の自宅でよい)には看板を立ててアピールしよう。
 こうして支援の輪を広げながら、役割を分担し合い、なるべく多くの人でものごとを進めていく参加型の活動、これを習い性にしていくことは重要なポイントだ。
 リーフレットや会報、チラシ等の費用はこの政治団体から支出する。活動は会費や寄附で賄うが、バザーやイベントは政策を広げながら稼ぐ一石三鳥の手段だ。政治団体の収支報告は、年度末に都道府県選挙管理委員会に提出する。

STEP3 2~3か月前から、いよいよ選挙の準備

〈内部で仲間と進める仕事〉

♪選挙運動を進めていくための会をつくって、一役を
♪選挙事務所は自宅でOK
♪選挙はがきの発送先の準備

 政治団体とは別に、選挙運動を担う団体を立ち上げる。全体を統括する事務局長、選挙運動費用収支報告書を作成する出納責任者は必ず決めなければならない。出納責任者は信頼の置ける人を選ぼう。また、選挙事務所の仕切り役も重要。明るい人望のある人を選びたい。
 選挙準備として、期間中に必要な印刷物などの作成があるが、内容はみんなで決めていこう。
 選挙はがきの宛先の準備は、政治団体の入会者の名簿づくりとほぼイコールだが、宛名書きは近しい支援者に依頼することもできる。何枚かずつ預け、書けたら事務所に戻してもらおう。戻ったはがきは重複をチェックし、選挙1週間前には発送限度の枚数に絞っておこう。
 役割は多々あるが、それぞれができそうな一役を担い合い、できればチーフを決めておきたい。組織図・役割分担表も掲示し、選挙までの日程表をつくって、みんなで共有しよう。

〈外部と交渉しながら進める仕事〉

♪選挙ポスター・選挙はがきの作成、選挙カー・看板の手配、選挙事務所の看板づくりなど

① ポスター作成:業者もいるが丸投げはせずに、自分たちでイメージ・キャッチコピーを考えよう。写真は早めにプロに頼むのが無難。
② 選挙運動用はがき:文案、デザインはリーフレットやポスターと共通のイメージが分かりやすい。宛名だけでなく推薦者名を入れる等、プラスアルファの内容にしたい。
③ 選挙カー:車の手配は日数に余裕を持って借用を。軽自動車は乗員が少なくても目立たず小回りも利く。スピーカー等放送設備一式を含めレンタルがお勧めだ。看板にはキャッチコピーを入れ、季節によっては照明も考えよう。

全国キャラバン長崎会場にて選挙期間中の役割分担について説明する筆者全国キャラバン長崎会場にて選挙期間中の役割分担について説明する筆者

STEP4 1か月前、事務手続や様々な手配・確認

♪選挙管理委員会の「事前説明会」がある。いろいろな事務手続、届出書類が必要だが、ここで説明される。仲間と一緒に出席し、分からないことは、選挙管理委員会に問合せを(選挙期間中でも)
♪供託金の納入、選挙公報の原稿作成
♪選挙運動の細部の打合せ

 選挙運動期間中の役割分担とローテーションを決めておく。支援者に役割があることを伝え、参加を呼びかけよう。役割分担の一覧表をつくって、参加する人に名前を書き込んでもらおう。
・ポスターチーム:2人1組でポスターを公営掲示場に貼る。掲示場の地図は選挙管理委員会の事前審査後に配布される。
・電話チーム:名簿をつくり、先方の反応も記そう。かけない選択もあるが、新たな支援者にはかけたい。
・選挙カー運転手の確保:ボランティアでもプロでもよいが地理に詳しい人を。又は地区別案内人を乗せよう。
・車上運動員:候補者、運転手以外に4人まで乗車可。みんなでウグイス嬢になれば、チームワークは抜群だ。
・選挙カーの読み原稿:初日・中盤・終盤・最終日の4パターン。地域・政策・年代なども考えてつくろう。
・街頭演説:アイデアを持ち寄り、短めに政策ごとにいくつかパターンをつくろう。短くても政策は具体的に。
・運動員の食事(弁当):1食1,000円以内(現在)、毎食15人分が上限で1日45食まで。提供は運動員にのみ。

STEP5 1週間前、直前準備

 事前審査を受け、選挙はがきの集約をはじめ、期間中に必要な事項をチェックして最終確認しよう。選挙カーが回る地域や団地訪問など大まかなコースや予定を決め、イベント等があれば立ち寄るのもよい。
 告示前日は最終確認を済ませたら早めに寝よう。

STEP6 いよいよ選挙に突入

 告示日朝、立候補届出を提出。8時半までに到着した人からクジ引きで受付開始。ポスター掲示番号が決まったら事務所に連絡。腕章や街頭演説のときに掲げる標記など「選挙の7つ道具」を受け取って、選挙戦が始まる。
 街頭演説は8時~20時まで。3~5分でテンポよく。聞く人の立場になってプレゼンを。周りに人がいなくても、見えないところで聞く人が必ずいる。TPOを考え、心を込めて自分の言葉でしゃべろう。仲間が応援スピーチをしてもよい。ポスター貼りは速やかに。選挙はがきも早めに発送しよう。
 選挙カーに乗る人、事務所で動く人、心を合わせ元気よく選挙期間を乗り切ろう。

STEP7 選挙が終わったら…当選しても落選しても

 当落どちらにしても、選挙を総括して、仲間や応援してくれた人に報告しよう。選挙事務所の撤収、選挙費用の収支報告など残務整理がある。報告と残務整理を終えるまでが選挙運動と心得よう!
 「当選しても落選しても、私はわたし」。活動の継続は、必ず次につながる。
 当選はゴールではなく、スタート!! これが私たちの合言葉だ。自分たちの手で、まちの未来を創っていくスタートである。

鈴木規子(西尾市議会議員)

この記事の著者

鈴木規子(西尾市議会議員)

西尾市議会議員 1953年生まれ。1975年まで名古屋地方検察庁勤務。1983年から西尾市在住。愛知県男女共同参画審議会委員。「女性を議会に!」ネットワーク活動、高齢者問題から街づくりを考える住民活動、市民派議員のサポーターを経て西尾市議5期。

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