カンファレンスの企画・実施
次に、カンファレンスの企画・実施について。ムラツムギでは「活性化以外の選択肢」や「活性化が難しい地域との向き合い方」といったテーマでのカンファレンスを定期的に行ってきました。カンファレンスは、官公庁、自治体職員をはじめ、デベロッパー、環境関連、まちづくり関連の民間企業職員など、幅広いアクターが集い交流する場となっています。
直近では、2024年4月21日に京都大学にて「活性化が難しい集落に、どう向き合うか?」というカンファレンスを行いました。『撤退と再興の農村戦略』(学芸出版社、2024年)の著者である金沢大学人間社会研究域地域創造学系准教授・林直樹氏、『関係人口をつくる─定住でも交流でもないローカルイノベーション』(木楽舎、2017年)の著者である島根県立大学地域政策学部准教授・田中輝美氏、『日本廃村百選』(秋田文化出版、2020年)の著者である廃村専門家・浅原昭生氏をゲストに迎え、オンライン、対面合わせて70人を超える参加者を集めました。
活性化を志向する風潮が強い中、生活者や仕事として地域づくりに関わる方が活性化一辺倒の地域づくりに問題意識を抱いても、それを口にすることは大変ハードルの高いことです。場合によっては、周囲が活性化を頑張っている中で「お前は諦めるのか?」といった評価を受け、生活しづらくなってしまうことも考えられます。そのような中で、活性化が難しい集落との向き合い方について関心を持つ方が集まるこのカンファレンスは、自身のフィールドでは議論できないことを、職種を超え、専門家を交えて議論できる貴重な場になります。
ムラツムギという特定のフィールドを持たない団体から、この問題にアプローチすることの難しさを日々感じつつも、このようなカンファレンスを通じて生活者と専門家をつなぎ、参加者がそれぞれのフィールドに持ち帰ることができる知識や考え方を得る機会をつくることがムラツムギの役割であると考え、今後も定期的に開催する予定です。
カンファレンスの様子
カンファレンスの様子
「家史」の制作
最後に、家の歴史書である「家史」の制作事業について。家史とは、家を手放す、移築する、解体するといった変化に際して、記憶を記録に残す事業です。これまで、古民家などの個人宅をはじめ、料亭や銭湯といった店を畳む際にも制作してきました。
単に家を手放す、解体するとなると、自分の代で畳む罪悪感や後ろめたさを感じる方も少なくありません。また、形がなくなると思い出までも忘れてしまいそうという声もしばしば耳にします。そこで、「自分の代で終わらせてしまう」という罪悪感ではなく、家史をつくることで「自分は最後にこれを残せた」という誇りや肯定感を持てるようなサポートをしたいという思いで制作しています。
この活動は記憶を記録に残すことで納得のいく最後を迎えられるのではないか、という仮説のもとスタートしました。今後は家に限らず、地域の寺や公共施設、店といった思い出の詰まった場所の存続が難しくなったとき、その場所への感謝を込めて関係者たちが自らアーカイブ活動を行うためのノウハウ提供などへと活動を発展させられたらと考えています。
実際の家史