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特集 過疎に向き合う

2024.05.27 まちづくり・地域づくり

ムラツムギの取組み

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NPO法人ムラツムギ共同代表/株式会社むじょう代表取締役 前田陽汰

はじめに

 ムラツムギは「変化にもっと優しく」という理念のもと設立されたNPO法人です。官僚、学生、過疎地域出身者などバックグラウンドは様々ですが、“右肩上がり一辺倒”のまちづくりに違和感を抱いたメンバーが集い、活動しています。
 これまでの地方創生は、人口増、経済成長こそが正義という風潮が強く、縮退する地域は「消滅可能性都市」や「限界集落」といったネガティブなラベルを貼られてきました。縮退を悪と捉える風潮がはびこることによって、人口減少の行く末から目をそらしてしまう構造が生じているといえます。このような現状に対して、縮退といった変化にも優しいまなざしを向けられる風土をつくろうという考えが「変化にもっと優しく」という理念です。
 人間の終末期においては、延命治療を望まないという選択肢も一般化してきました。それは、生きることを諦めるのではなく、尊厳を持って生き切るという前向きな選択として、社会から理解されつつあるからでしょう。人間が寄り集まって形成された集落にも、延命治療と同義である「右肩上がり志向」を拒否し、穏やかに最期を迎える選択肢があってしかるべきと考えます。
 多くの集落が存続の岐路に立つこれから、活性化を前提としない過疎との共生的アプローチにも希望を見いだしていくことが不可欠であると私たちは考えます。その具体的な方法を探るべく、京都府での住民参加型ワークショップの運営、カンファレンスの実施、「家史」制作等の事業を行っています。ここからは、各事業の取組みについて紹介させていただきます。

住民参加型ワークショップの運営事業

 まず、京都府での住民参加型ワークショップの運営事業について。京都市内のイベントスペースを使って一般向けに「集落のエンディングノートをつくる」というイベントを行いました。
 これは、過疎化が進む集落と関わりのある方々に対し、集落の将来と向き合うきっかけを提供する活動でした。もしも「人」ではなく「集落」を主語としたエンディングノートを書くならどんな目次があるのか? そしてどの順番で書くのが望ましいのか? などを議論しながらワークショップを行いました。参加者は、行政職員、地元企業職員、研究者、住んでいる地域が今まさに過疎化の真っただ中にある方、現役の地域おこし協力隊員などで、年齢層は20代から60代まで様々でした。
 また、生活者の思いや考えにどのように向き合うのか、問いかけの仕方や話をする順序について具体的に議論するべく、過疎化が進む集落の住民の方にインタビューするため、京都府綾部市へフィールドワークも行い、より実践的なエンディングノートづくりを考えました。
 地域の方々に話を伺った感覚としては、最初から集落の終活を真っ正面から語ることはかなりハードルが高い印象でした。移住促進の話題など、これまでの活性化文脈の活動を改めて見つめ直し、現実に即した議論を行うことを入り口に、そこから地域住民の方の本音を吐露する機会をつくることが第1ステップ。次のステップとして維持する物事や手放す物事について踏み込んだ議論を行うことが現実的という印象を受けました。
 集落を主語としたエンディングノートを通じて、集落の共通の価値観や歴史、文化を見つめ直し、集落住民の共通の方針を打ち立てることができると考えています。地域の縮退に関する議論について、すべての地域に汎用的な理論はないからこそ、個々の処方箋へたどり着くためのたたき台として、このエンディングノートをブラッシュアップし、実用的なものへと進化させていこうと考えています。

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