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特集 獣害──共存の模索──

2024.03.11 政策研究

動物行動学から考える獣害対策と美郷町の取組み

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2 被害対策の基本

 鳥獣害対策の基本は、①環境管理、②柵の設置、③適切な捕獲、による総合対策である(図4)。
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図3 野生動物捕獲の整理

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図4 総合対策

(1)環境管理
 環境管理は、野生動物を集落へ誘引している最大の理由である、意図しない餌付け(収穫残渣(ざんさ)、放任果樹、農作物など、無意識の餌付けともいう)と安全なすみか(放棄竹林、耕作放棄地、空き家など)を除去することである。田畑周辺や山際などに放置された作物残渣や放任果樹などは、野生動物にとって最適な餌場になる。野生動物は活動時間のほとんどを餌の探査行動に費やす。例えばイノシシは、1日7、8時間も餌を探し回り、動き回って少しずつ餌を見つけては食べ、やっと1日の必要量を得る。他の野生動物も多分に漏れずこのような生活をしている。山で生活する野生動物は昔からそうやって生きてきた。
 以前は農林業に従事する人が多く、山際の集落も栄え、山の中腹から山際にかけて野生動物との境界域を形成することができた。しかし、ここ二、三十年、農林業が衰え、過疎・高齢化による山の中で働く人の減少、山際集落の縮小などにより、山の中腹にあった人と野生動物の境界「域」は消滅し、今や心もとない境界「線」となって山際の集落や田畑まで後退した。その境界線には、人が放置する収穫残渣や、以前は人が植えて利用していたが今では放置されている農地周辺植の柿、栗、びわ、ゆずなどの放任果樹が一年中豊富に存在する。これらは野生動物にとって、普段山の中で摂食している餌よりも格段に嗜好(しこう)性が高い。短時間(8時間から30分に!)で空腹を満たせるだけでなく、うまいのである。さらに、この場所には耕作放棄地の茂みや放棄竹集落の空き家も存在する。危険を避けて隠れることができ、また繁殖までできる場所を人が知らず知らずのうちに提供している。このような野生動物の餌となるものや安全に隠れられる場所を除去していくことが環境管理である。
 台所の生ごみにハエがたかると生ごみを片付ける。生ごみを放っておいて日本に生息するハエの個体数調査をする人はいない。どうして野生動物の場合は誘因となる餌は放ったらかしにして個体数ばかり数えているのだろうか。
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図5 現在の野生動物は人との距離が近い

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