地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

特集 獣害──共存の模索──

2024.02.13 政策研究

これからの地域社会のための獣害対策~地域政策としての獣害対策~

LINEで送る
 

3 獣害対策と社会的合意形成

 地域の課題を解決するためには、共同体としての地域社会の機能が発揮されるよう支援する「公助」の役割が非常に重要だ。地域社会を構成する住民をまとめ、総意として行動する社会的合意形成が必要となる(図2)。


Tokushu_zu02
出典:山端(2022)
図2 獣害対策に関する「自助」「共助」「公助」
 

 獣害対策のための合意形成にも要点がある。Step1として、集落役員との協議により大きな方向性や集落の課題などをつかむこと。住民の代表として役員を仲間にしていくことがポイントである。
 Step2は、その集落や地域の獣害の原因を正しく把握することである。柵を実踏調査すれば管理の状況が正しいかどうかも分かるし、檻(おり)やワナが正しく管理されているかも分かる。近年は自動撮影カメラも普及しており、その集落の獣害の「原因」が何かをつかみやすい。課題が正しく把握できれば、それに伴って提案内容も定まってくる。捕獲が課題であれば捕獲を、防御が課題であればそれを改善するような提案ができる。まずは現場に足を運び課題を把握することが、ターニングポイントになる。
 同時にStep3として、被害や対策の状況を地図などで可視化する。被害農地、防護柵、潜み場、檻やワナの位置と頭数などが把握できると、その集落の「現状」が見えてくるし、地図化するとそれを住民全体で共有しやすくなる。最近は無料のGISなど良いツールがたくさんあるので活用に値する。
 ここまで準備をしておくと、住民全体への提案や説明であるStep4は成功しやすい。単に説明会で終了するのではなく、Step5の現地点検も併せて、集落の課題を改めて多くの住民と共有する。これはStep2で自らの足で集落の課題を把握できているからこそ可能となる。
 その後、Step6のワークショップで意見をまとめて具体的な「提案」にしていく。Step5で共有できた集落の課題に対し、住民が個人で可能なこと、集落が協働でできること、行政がすべきことを整理していくと、「何をすべきか」の具体的な行動が見えてくる。このワークショップはStep1で役員とも共同で進めることで、より全体の合意形成が進む。
 それに基づき、Step7はいよいよ実践である。交付金なども今はメニューが豊富で、様々な獣害対策が実践可能である。いきなり事業を導入するのではなく、これらStep1~6を踏まえた対策を進めることで、本当に必要なことや集落の運営体制が構築され、成功につながりやすくなる。
 もちろん、事業を導入するだけでなく、その後の研修や実施状況のチェックも重要である。柵の点検ができているか? 檻は管理できているか? それらの把握や技術の研修などがStep8である。
 1年が経過したら、その結果を把握するStep9が重要だ。Step3の地図などを再度作成し、被害が軽減できているか? 捕獲が進んでいるか? 柵が管理できていたか? などを評価する。成果が出ていればそれを継続し、ダメなら改善する。その際には再度、「何をすべきか」Step6のワークショップも取り入れる。
 2回目、3回目になると、非常にスムーズに話し合いも進む。つまり、Step9は次年度に向けた取組みサイクルのStep2~6につながるわけであり、このサイクルが獣害対策のPDCAサイクルである(図3)。



Tokushu_zu03
出典:山端(2022)
図3 獣害に強い集落形成のためのPDCAサイクル

 数年間、こういう取組みを続けてみよう。きっと獣害は当初より軽減できている。そして、必ずそのときにはいつの間にか「地域主体の獣害対策」ができているだろう。


 

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 616

新潟地震(震度6)起こる(昭和39年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る