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2024.01.25 政策研究

辺野古新軍事基地建設をめぐる争訟の意義とその概要

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辺野古軍事基地建設をめぐる争訟の状況

(1)辺野古をめぐる争訟事件のきっかけ
 辺野古の争訟は、今からほぼ30年前、平成7年9月、沖縄県の小学生の少女がアメリカ兵3人に暴行される事件が発生したことが出発点である。同年、日米両政府により「Special Action Committee on Okinawa(沖縄に関する特別行動委員会。略称:SACO)」が設置され、平成8年12月には、SACO最終報告がまとめられた。その中で、沖縄本島東海岸沖の海上に代替施設が完成した後、いくつかの条件が満たされれば、沖縄県宜野湾市にある普天間飛行場がアメリカ軍から返還されることとされた。
 その後、辺野古沖海上基地への移設について、沖縄県では容認派の知事が就任したり、反対派の知事が就任したりするなどし、また、民主党・鳩山政権下での移設をめぐる混乱などが起きていた。

(2)公有水面の埋立承認(平成25年)
 第2次安倍政権が発足すると、国は、軍事基地の辺野古移設が唯一の手段であるとの方針を固めた。
 国が、海上の埋立てをするためには、埋立法42条の規定により、都道府県知事の承認を得る必要がある。そこで、沖縄防衛局長は、平成25年3月、同条に基づく埋立承認を沖縄県知事(当時は仲井眞知事)に申請した。同年12月、仲井眞知事は、国から示された沖縄振興策を評価して、当該埋立てを承認した(埋立承認〔1〕)。

(3)埋立承認の(職権)取消しとこれをめぐる争訟(平成27~28年)
 平成26年、選挙により、辺野古移設反対を公約とした翁長氏が、仲井眞氏を破って、沖縄県知事に就任した。
 翁長知事は第三者委員会の検証を踏まえ、埋立承認〔1〕には瑕疵(かし)(=欠陥)があるとして、平成27年10月、これを職権で取り消した(承認取消し〔1-ア〕)。国は、海上埋立ての工事に着手している。
 国・沖縄県の間でいくつかの審査請求や訴訟が提起されたが取り下げられるなどし、最終的には、平成28年3月、国土交通大臣が承認取消し〔1-ア〕を取り消すよう、是正の指示〔是正指示1-イ〕を行うこととなった(工事はいったん中断)。先に見た図2の状況になったといえる。
 この是正の指示に対して、沖縄県知事は、同月(平成28年3月)、係争委に審査の申出を行った(図3の争訟Ⅱ=C)。だが、同年6月、係争委は、これについて「判断しない」旨の決定をした。
 これを受け、同年7月(平成28年7月)、国土交通大臣は、沖縄県知事が〔是正指示1-イ〕に従わないことを理由として、裁判所に対して違法確認の訴えを提起した(図3の争訟Ⅱ=D)。
 同年12月、最高裁は、知事の不作為の違法を確認した国土交通大臣勝訴の高裁判決を是認して、沖縄県側の上告を退けた(最判平成28年12月20日民集70巻9号2281頁)。この最高裁判決に従って、翁長知事は、承認取消し〔1-ア〕を取り消した。そこで、平成29年2月には、沖縄防衛局は埋立工事を再開した。

(4)埋立承認の撤回とこれをめぐる争訟(平成30~令和4年)
 その後、国による岩礁破砕行為をめぐる県・国の争訟事件も起きたが、ここでは説明を省略する。
 平成30年8月、沖縄県知事は、埋立承認〔1〕の後の事情の変更を理由にして、埋立承認〔1〕の取消しを行った。これは、後発的な事情を理由とするものであり、講学上の「撤回」に当たる。このため、承認取消し〔1-ア〕と混乱しないよう、以下では承認撤回〔1-ウ〕と表記する。この撤回は、同月途中に翁長知事が死去したため、副知事が知事の職務を執行して行ったものである。
 なお、同年9月には翁長知事の後継に当たる玉城氏が選挙で知事に当選した。
 選挙後、沖縄防衛局長は、同年10月、この承認撤回〔1-ウ〕につき国土交通大臣に対して審査請求を行った(3)
 審査請求の審理期間中、平成31年2月には沖縄県で埋立ての賛否を問う住民投票が行われ、52%の投票率の中、埋立て反対が7割を超えた
 しかし、国土交通大臣は平成31年4月、沖縄防衛局長の審査請求を認容し、承認撤回〔1-ウ〕を取り消す裁決を行った(撤回取消裁決〔1-エ〕)。
 沖縄県知事は、まず、撤回取消裁決〔1-エ〕を、自治法上の関与であると法的に構成して、国地方係争処理委員会への審査の申出を経て、令和元年7月、裁判所に提訴した(図4の争訟Ⅱ=C参照)。しかし、最終的に最高裁判所は、令和2年3月、この撤回取消裁決〔1-エ〕は、関与をめぐる争訟手続では争うことができないと、沖縄県知事の訴えを却下した(最判令和2年3月26日民集74巻3号471頁)。
 さらに、沖縄県は、令和元年8月、撤回取消裁決〔1-エ〕につき、行訴法に基づき裁決取消しの抗告訴訟を提起した。この訴えについて、最高裁は、沖縄県には撤回取消裁決〔1-エ〕の取消しの訴えを提起する資格(原告適格)がないとして、沖縄県の訴えを却下した(最判令和4年12月8日民集76巻7号1519頁)。
 

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