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2024.01.25 政策研究

辺野古新軍事基地建設をめぐる争訟の意義とその概要

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県(知事)の権限行使に対する国の介入システム

 自治体の機関は、法律や条例に基づいて、規制的な権限を行使する。以下では、県の機関=知事と表現する。「権限の行使」とはどのようなものかについては、許認可処分や命令などの不利益処分を想起してほしい。また、「権限の行使」には、実際に行使をすること(=作為)だけでなく、行使しないこと(=不作為)も含まれる。
 知事の権限行使が、法律に適合しない場合や不当な場合には、争訟手続等において、次のような法的是正措置が講じられ得る。
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(作成)田中孝男
図1 埋立法に関する知事の権限行使の法的是正手段(Ⅰ)

 第一は、権限行使の名あて人「甲」が、個人や企業などの通常の私人の場合である(図1参照)。この場合、甲は、行審法2条・3条に基づき、審査庁に対して審査請求をすることができる。法律に基づく知事の権限行使が、第一号法定受託事務に関連するものであるときは、その案件に関わる審査請求は、その法律を所管する国の大臣である(自治法255条の2第1項1号(2))。
 辺野古事件で、知事は、埋立法に基づいて権限を行使するが、その権限行使は第一号法定受託事務に属する(埋立法51条参照)。すなわち、知事の甲に対する権限行使が埋立法に基づくものであるときは、その審査請求は、国土交通大臣に対してなされる。この審査請求による解決を、争訟Ⅰ=Aと表記する。国土交通大臣が審査請求に対する認容裁決をすることで、当該権限行使の是正化がなされる。なお、審査請求の審査にあっては、第三者機関(総務省に置かれている「行政不服審査会」)の意見を聞く必要があることもあるが、辺野古事件では国土交通大臣が沖縄防衛局長の審査請求を認容する判断をした。このため、行政不服審査会には当該審査請求の裁決につき諮問がなされず(行審法43条1項7号参照)、行政不服審査会における審議は行われていない。
 争訟Ⅰは、審査請求も後述の行政事件訴訟も、名あて人「甲」が私人である場合を念頭に置くが、「甲」が行政機関の場合であっても、私人と同様の法的立ち場にあるときは、この争訟Ⅰによって紛争解決をなし得る。辺野古事件では、防衛省の機関である沖縄防衛局長が、「甲」の立場で審査請求を国土交通大臣に対して提起したりしている。
 この争訟Ⅰの場合のもう一つの方法として、甲(沖縄防衛局長)は、審査請求ではなく直接裁判所に行訴法3条に基づく抗告訴訟(行政事件訴訟)を提起することもできると考えられる。これを争訟Ⅰ=Bと表記する。ただし、国・沖縄県の間の辺野古事件では、このⅠ=Bタイプの訴訟事件は提起されていない。
 国の機関(法令所管大臣)による、知事の権限行使に対する第二の介入手段は、当該権限の行使に関して自治法に基づく「関与」をすることである(図2参照)。関与には、法的な拘束力のない技術的助言・勧告などもあるが、辺野古事件で関わるのは、第一号法定受託事務の執行に対する法的拘束力を持った強力な関与手段としての「是正の指示」である(自治法245条の7)。
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(作成)田中孝男
図2 埋立法に関する知事の権限行使の法的是正手段(Ⅱ)

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