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2021.09.10 政策研究

教員の勤務時間問題と業務改善の課題

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勤務時間問題と直結する業務とその課題  

 このように学校における教員の業務改善の課題は多岐にわたりますが、これらの中で特に勤務時間の長短に影響するもの(⑧「部活動)と、教員の負担感や多忙感に影響を与えるもの(⑦「校内清掃」、⑨「給食時の対応」、⑭「支援が必要な児童生徒・家庭への対応」)について現状を説明します。  
 近年、かなり注目され、また改善が進められてきたものとして⑧「部活動」の顧問としての業務が挙げられます。部活動の顧問は、自身の経験を活かせるなど、やりがいを持つ教員がいる一方で、経験もなく、自分の専門とは程遠い教員にとっては大きな負担となってきました。平日の勤務時間が長くなるだけでなく、土日出勤が多くなる理由ともなってきました。また、部活動の大会に必ず教員が引率するような規定となっていたこと(現在では見直されました)も負担が大きくなる要因でした。現在では「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」(2018年3月)の整備や「部活動指導員」(学校教育法施行規則78条の2)の配置が進んできており、こうした部活動の負担については、改善の動きが見られてきているといえます。  
 こうした「部活動指導員」のような新たな職員・スタッフを配置して教員の負担を軽減していこうという取組みは、近年の「働き方改革」よりも先んじて議論が進められてきた成果といえます。例えば、スクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)の配置を増やす取組みもなされてきました。これらの新たな職員・スタッフの配置は「チームとしての学校」の構築が提言されて進められてきた取組みといえます。これらSCやSSWの配置が進むことは、先の業務改善の課題でいえば、⑭「支援が必要な児童生徒・家庭への対応」について教員をサポートしようという流れと合致すると指摘できます。つまり、「チームとしての学校」の取組みは、教員の勤務時間の適正化や「働き方改革」の取組みとつながっている流れといえます。  
 上記に述べた部活動は超過勤務と関係してくるという意味で放課後の時間の課題であるといえます。他方、例えば、勤務時間中の問題はどうでしょうか。  
 ⑨「給食時の対応」も「負担軽減が可能な業務」として位置付けられています。その課題としては栄養教諭との連携による負担軽減や「地域ボランティア等の協力」が指摘されています(同答申69~70頁)。しかし、栄養教諭が配置されている学校は全体として見れば少なく、また地域ボランティアの協力については、学校だけで解決できる課題ではないことは明らかです。⑦校内清掃についても「地域ボランティアの参画や民間委託等」(同答申67頁)が指摘されていますが、同様に学校だけでは解決できません。  
 こうした給食や清掃は昼間になされることが多いといえますが、諸外国では教員の業務とされていないところも少なくありません。それ以上に、我が国では業務というよりは、むしろ児童生徒に対する指導の場として位置付けられてきた傾向が強いといえます。
 休憩時間は、勤務時間が6時間を超えて8時間以下である場合には45分、8時間を超える場合には1時間、原則として一斉にあるいは交代制など、その時間を自由に利用させなければなりません。本来であれば法制上、確保されるべき休憩時間が十分にとれていないことは、「平成18年度 教員勤務実態調査」(文部科学省)等の各種調査においても明らかになっています。  

 教員の長時間労働や超過勤務の原因には、勤務時間内における業務の多さ、児童生徒のために放課後や昼間の時間をも費やす使命感や献身さ、さらには制度上、残業時間を十分に把握してこなかったことなど、様々な要因が絡み合い、またこれらが慣習となって続いてきたことが指摘できます。改善のための取組みは、国、地方自治体・教育委員会、学校現場がそれぞれ協力して今後も進められていくことが期待されています。

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