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2021.09.10 政策研究

教員の勤務時間問題と業務改善の課題

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茨城大学大学院教育学研究科教授 加藤崇英

 近年、長時間労働や超過勤務など、教員の勤務時間の問題が指摘されています。なぜ、教員の勤務時間は長くなるのでしょうか。また、そこにはいかなる問題や課題があるといえるでしょうか。

「教職調整額」の支給と教員の労務環境への影響

 戦後間もなく教員の超過勤務は大きな問題となっていました。抜本的な改革が必要となった当時の文部省は、1966(昭和41)年、教員勤務状況調査を実施しました。その結果を基に教員の労働時間に関しては、月平均で約8時間の時間外労働があるとしました。そこで1971(昭和46)年に国公立学校の教員に対し、俸給月額の4%相当の「教職調整額」を支給することにしました(「国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」)。この制度は1972年度(昭和47年度)から適用され、現在に至っています(現在は、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(以下「給特法」といいます))。給特法では、教員の勤務については、勤務時間内か、外かは問わず、また、労働基準法における時間外勤務・休日勤務手当の制度を適用せずに「教職調整額」を支給することになっています。  
 なお、時間外勤務を命ずる場合は、以下の臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限られるとされています。①校外実習その他生徒の実習に関する業務、②修学旅行その他学校の行事に関する業務、③職員会議(設置者の定めるところにより学校に置かれるものをいう)に関する業務、④非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務です(いわゆる「超勤4項目」。「公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令」による)。  
 しかし、実際には、教員の業務の多くは、とても勤務時間内には収まり切らない状況が続いてきました。そのため、上記の「超勤4項目」に該当しない業務に従事している場合は、法解釈的には、校長の職務命令によらない教員の自発的な業務となります。同時に、給特法の適用によって、勤務時間の超過があったかどうかとは関係なく、一般の公務員よりも優遇された形で「4%」が支給されているために残業代は支払われないことになっています。そのため、残業代を支払うために残業時間を計算するということの必要性も生じてきませんでした。こうした教員の労務環境が長らく続いてきたことが、長時間労働や超過勤務の状況を常態化させる一つの要因となってきたことは否めません。

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