3 効果の検証
(1)児童の姿から
第5回の発表会では、第6学年の児童が堂々と発表する姿が数多く見られた。練習やネタづくりの過程で、正解のない問いの答えを探し続けた結果、児童の発想力が引き出され、児童が自分たちなりの最適かつ独自性のある答えを発見することができた。また、日々の暮らしの中で獲得された知識や経験をネタづくりに結びつけられたことで、多面的・多角的に物事を捉えるきっかけになったと考えられる。
F小学校では学芸会における第6学年の劇で、第5回の発表会で披露した漫才を取り入れた場面があった。F小学校第6学年の劇は、児童が台本を作成した。「笑育」で培われた力が少なからず寄与したものと考えられる。同時に、劇に漫才を取り入れたということは、「笑育」が児童にとって大変印象深い活動であったと推察される。
C小学校の第6学年の担任に聞取り調査を実施したところ、「笑育」の活動後、児童間で議論する活動が充実するようになったとの話があった。実際に取組み終了後、C小学校の研究発表における授業の様子を参観したところ、活発に議論する児童の姿があった。「笑育」の成果は、話合い活動の充実にも寄与すると考えられる。
その他、各学校の管理職からは、「児童がつくった漫才を、全校児童の前でも披露したい」との話があった。また、漫才を見ていた担任からは、普段の様子からは見られない児童の姿を見ることができたとの話もあった。
(2)連携機関による分析から
狛江市教育委員会は早稲田大学教育・総合科学学術院、株式会社図書文化社と産学官の連携協定を結んでおり、市内全小・中学校でhyper-QU(調査)を年2回実施している。hyper-QUは学級集団をアセスメントし、個及び集団により適切な支援をするための補助ツールで、学級満足度、学校生活意欲、ソーシャルスキルを客観的に測ることができるものである。今回、同ツールの分析を長年にわたり担当する早稲田大学・河村昭博氏に、第6学年児童を対象とした「笑育」に関するアンケートの作成とhyper-QUの結果のクロス集計を依頼した。河村氏が作成したアンケートは、全20問の構成で、「笑育」の実施前、実施後に同じ項目で調査を実施した(図)。
河村氏から提供された資料から、次の内容が確認された。
ア hyper-QUにおいて学習意欲の向上が図られたほとんどの学級では、人を楽しませようとするための笑い「楽しさ喚起ユーモア」の得点が向上していた(表4)。
イ 人をさげすむような笑い「皮肉・風刺ユーモア」が減少し、被侵害得点が低下したほとんどの学級では、互いに承認し合える雰囲気が生まれ、人間関係が良化した(表5)。
学校では日々、様々な教育活動が展開されているため、一概に「笑育」による効果とは言い切ることはできないが、「笑育」のコンセプトである「人を傷つけない笑い」が、良好な人間関係を築くことに寄与することや、それに伴う学習意欲の向上等、様々な効果があると推察される。「笑育」は個及び集団の支援の一助になると考えられる。