4 条例の概要
(1)本条例の構成
本条例は、前文なし、本則全21か条、附則からなる。章立てはなされていない。また、名称は「杉並区狭あい道路の拡幅に関する条例」であり、旧条例には見られた「整備」の語がなくなっている。条文の見出しにより本条例の構成を示すと以下のとおりとなる。
第1条 目的
第2条 定義
第2条の2 区の責務
第2条の3 区民等の責務 第2条の4 支障物件の設置の禁止
第2条の5 勧告、命令及び公表
第2条の6 代執行
第3条 拡幅整備の事前協議
第4条 拡幅整備
第5条 助成金等
第6条 拡幅整備費及び助成金等の返還
第7条 適用除外
第8条 重点整備路線
第9条 協議会の設置
第10条 協議会の組織
第11条 協議会の会長及び副会長
第12条 協議会の会議
第13条 委員以外の者の出席等
第14条 協力依頼
第15条 実施状況の公表
第16条 委任附則
(2)本条例の内容
本条例のうち2条の2ないし2条の6、8条ないし15条が、本条例で新たに追加された条項であり、3条ないし7条は旧条例をほぼそのまま引き継ぐものとなっている。
本条例の目的規定を見ると、旧条例は「良好な居住環境の確保と災害につよいまちづくり」が目的とされていたが、本条例では「災害及び火災の発生時における円滑な避難及び通行を確保するとともに、良好な居住環境を整備すること」と規定され、避難と通行の確保が前面に出た形になっている。2条の2では狭あい道路の拡幅に関する施策についての周知と施策の計画的な実行が区の責務として、2条の3では狭あい道路の拡幅に努めることが区民等の責務として新たに規定された。
本条例の9条以下では、新たに設置される組織である「杉並区狭あい道路の拡幅に関する協議会」(以下「協議会」という)に関する規定が置かれている。協議会は狭あい道路の拡幅施策の実施に関する必要事項を調査審議する区長の附属機関であり(9条)、委員は7人以内(学識経験者5人以内・関係行政機関の職員2人以内)で、任期は2年である(10条)。
2条の4ないし2条の6が、後退用地における支障物件の設置禁止とその実効性確保に係る条項である(これら条項のみ、平成29年1月1日施行とされている(改正附則1項))。「支障物件」は「土地に定着する工作物その他の避難上及び通行上支障となる物件(容易に移動させることができるもの並びに〔建基〕法第2条第1号に規定する建築物及び〔建基〕法第44条第1項に規定する擁壁を除く。)」として定義付けられている(2条6号)。建築物や擁壁が除かれているのは、建基法9条による対応がなされるものと整理されているのだろう。
2条の4では、2項道路の後退用地に支障物件を設置することを何人に対しても禁止する。もっとも、同条ただし書では、「区長が杉並区狭あい道路の拡幅に関する協議会の意見を聴いて、特に必要があると認めたときは、この限りでない」として例外も想定されている。議会での審議では、電柱や地域のシンボルとなっているような保護樹木(審議会でも議論の対象となっていた)が例として挙がっていた。
2条の5では、区長が支障物件の設置禁止の違反者に対して、除却その他必要な措置をとることを勧告することができることとし(1項)、正当な理由なく勧告に係る措置をとらなかったときは、期限を定めて、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができると規定をする(2項)。
この命令を受けた者が正当な理由なくその命令に従わないときは、区長は、その旨を公表することができる(3項)が、公表をしようとするときは、区長はあらかじめ、当該命令を受けた者に対し、意見を述べ、証拠を提示する機会を与えた上で、協議会の意見を聴かなければならないとされている(4項)。
さらに、命令に従わない旨を公表された者が当該命令に係る措置を履行しない場合において、他の手段によってその履行を確保することが困難であり、かつ、その不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、あらかじめ協議会の意見を聴くことを要件に行政代執行を行うことが可能とされている(2条の6)。
また本条例では、区長が拡幅整備を行う必要性が高いと認められる路線を、あらかじめ協議会の意見を聴いた上で、重点整備路線として指定することができるとされている(8条)。
なお改正附則2項では、施行後3年を目途として本条例の施行状況を勘案し、必要があると認めるときは、本条例の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講じるものとされた。