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2019.03.11 政策研究

鳥取県手話言語条例の立法事実(上)

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山陽学園大学地域マネジメント学部准教授 澤 俊晴

1 はじめに 

 言語とは、「通常の用法において、一般の人間の間で行われる音声と文字による伝達の現象」⑴であり、「音声によって分節された思想表現」⑵とされる。そのため、かつて、言語学の分野では、音声のない「手話」は「言語」と認められてこなかった。近年になって、やっと「手話はそれ自体で立派に1つの言語であると見な」⑶されるようになり、「手話は音声表現を欠くという点を除けば他の自然言語の特徴をすべて備えており、単なる身振り・手振りなどと異なって、複雑かつ抽象的な伝達に用い得る」⑷といわれるようになった。 
 そして、最近の辞典では、手話は「手指や顔の動きを用いる自然言語の一種。日常的な意味で『言語』というと、音声・聴覚による体系を持った音声言語を思い浮かべがちだが、音声言語と同様、手話もまぎれもなく『言語』である。両者は、言語一般に見られる社会的な機能、心理的な機能、言語獲得といった多くの側面を共通して持つ」⑸と記載されるようになっている。 
 このように、現在では、「手話が言語である」ことは、言語学の分野では認知されているといってよい。 
 また、手話には大別して、「耳の聞こえない人々の間で自然発生的に発達した、概念に基礎を置く体系」と「口語言語の構造に忠実に考案された体系」があるとされる⑹。日本では、一般に、前者の自然発生的に発達した体系を「日本手話」といい、「生まれつき耳の聞こえないろう者が使用」⑺する「日本語と異なる独自の文法体型を持つ自然言語である」とされる⑻。 
 それに対し、後者の口語言語に基づく体系を「日本語対応手話」といい、「日本語を獲得した後に失聴した中途失聴者や難聴者が使用」し⑼、「音声日本語を手指によって表した日本語のコード」であり⑽、「『音声日本語』の一種であって、『手話言語』ではない」⑾とされる。 
 このような「手話」を対象とする手話言語条例は、全日本ろうあ連盟のウェブサイト⑿によれば、平成30年9月28日現在で、24道府県、166市区町で制定されている(2018年9月30日確認)。これらの条例の構成は類似しており、具体的には、前文又は目的規定で「手話が言語である」と述べるとともに⒀、基本理念、県や事業者等の責務・役割、普及啓発などを規定する、いわゆる理念型条例⒁となっている。 
 各道府県の手話言語条例の構成が類似している一因は、「手話言語条例」制定の嚆矢となった平成25年10月11日施行の「鳥取県手話言語条例」の構成を他の道府県が継受したことにあると考えられる⒂。 
 また、手話言語条例のような理念型条例は、条例制定直後はマスコミ等にも取り上げられ、予算も手厚く配分される傾向にあるが、年を経るごとに関心は薄くなり、予算も減額されるのが常である。 
 このため、条例制定後、一定の年数を経た時点でも、条例に基づく施策展開が行われているか否かが、条例制定の意義を考える上で重要な意味を持っている。 なお、これまでも「方言」に着目した条例が制定されたことはあったが⒃、「一つの国民、一つの言語、一つの国家」という国民国家概念にも関わる「言語」を正面から取り上げた条例は、「手話言語条例」が初めてだと思われる。しかも、ここ5年のうちに、都道府県の半数近くで制定され、市町村条例も含めて急速に広がっていることから、その立法事実には興味深いものがある。 
 そのため、本稿では、最も早く条例を制定し、条例制定後、すでに5年を経過した鳥取県手話言語条例(平成25年鳥取県条例54号。以下「本条例」という)を取り上げ、条例施行後の取組みや課題をも視野に入れて、本条例の立法事実を検討していくこととする。

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澤 俊晴(山陽学園大学地域マネジメント学部准教授)

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