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立法事実から見た条例づくり

2018.11.12 政策研究

野洲市くらし支えあい条例(下)─消費者安全のための法環境を条例が先導して創造する─

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(2)市長による処分等の求めの必要性と内容合理性
ア 小規模自治体ゆえの必要性
 野洲市の市民生活相談課は、市民生活全般にわたる相談窓口であるが、消費者行政を担当するのは3人であって、しかも他の用務を兼務していることから、人的資源としては不十分であり、条例により処分権限を創設して権限行使を行うことは困難である。
 そこで、こうした自治体にとって、市長が国や都道府県等の行政機関に処分等を求めることを条例上の仕組みとしたことは、組織環境(19)という立法事実からも正当化される。
イ 消費者行政に内在する必要性と内容合理性
 消費者安全法は、消費者被害の拡大を防止するため、消費者事故等に関する情報があれば直ちに通知することを、関係省庁にも都道府県や市町村にも義務付け、消費者庁へ情報集約することを求めている。さらに、同法や特商法等が「何人も」原因調査や適当な措置を求めることができると規定し、権限発動の端緒となる情報の提供を広く求めている。PIO-NETもそうした要請に応えるものである。このことは、消費者行政では、消費者被害が拡散していく中で、いち早く情報収集することの重要性を物語っており、そうした中では、本条例の市長による処分等の求めは、国や都道府県等の行政機関にとっても必要なものであるということができる。
 なお、行政手続法等の「何人も」求めることができる仕組みは、申出人個人の権利利益を保護するための主観的制度ではないので(20)、「市長が」市民に代わって行うことに問題はないはずである。
ウ 処分等の結果を公表する必要性
 本条例では、処分等を求めるだけでは終わらず、その結果についての通知を求め、その通知内容等を公表するとしている。これまで、権限を有する行政機関が法違反の事実を把握しても、適時適切な処分等を行わず、消費者被害を拡大させてしまったことがあり(21)、今後もそのおそれがないとはいえないからである。この被害拡大の事実は、市長の求めに対し、国や都道府県の行政機関が適切に対応しているかどうかをモニタリングし、プレッシャーを与える(22)ために、その結果等を公表することの必要性を裏付けるものとなっている。
(3)見守りのネットワークの必要性
及び内容合理性
 消費者被害は、行政機関が講じるアクションだけで予防することは困難である。市民一人ひとりが被害に遭わないようにするためには、庁内・庁外の連携による「くらし支えあい」の力が必要であることは、野洲市のこれまでの市民生活総合支援の取組みの中で実証されてきた。
 そうした事実が積み上げられた中で、本条例では、実証済みの野洲市市民生活総合支援推進委員会と野洲市支援調整会議を条例上の仕組みとして規定するとともに、新たに、消費者安全確保地域協議会と見守りネットワークを創設した。現に、消費者安全確保地域協議会は、消費者庁から情報提供を受けて「見守りリスト」を作成し効果的な見守りを実践しているし、見守りネットワークには、2018年1月時点で、19の訪問販売登録事業者を含む31の事業者が参加し「三方よし経営」を実践しながら、見守りの成果を挙げている。こうした成果が、見守りのネットワークの必要性や合理性を裏付ける結果となっている。

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