・受付通数 1,569通(うち、大阪市内336通、大阪市外・不明1,233通)〔市内21.4%〕
・意見総数 3,368件(うち、大阪市内720件、大阪市外・不明2,648件)〔市内21.4%〕
1 条例制定の趣旨や意義に関するもの(2,267件)〔67.3%〕
2 条例案要綱(案)に関するもの(903件)〔26.8%〕
⑴ 定義に関するもの(153件)
⑵ 措置や支援に関するもの(275件)
⑶ 審査に関するもの(400件)
⑷ その他(条例に関するもの)(75件)
3 その他(198件)〔5.9%〕
条例の論点を検討する上で有益なので、以下、具体的な意見の要旨(【 】)とそれに対する市の考え方(要約)を紹介する。
1 条例制定の趣旨や意義に関するもの(2,267件)
【本案は、表現の自由等を侵害し憲法違反】➡ ヘイトスピーチは、社会や人々に不安感や嫌悪感を与えるだけでなく、人としての尊厳を傷つけ、差別意識を生じさせることにつながりかねない。/市内において、ヘイトスピーチが行われている現実を踏まえ、「大阪市人権尊重の社会づくり条例」に基づき人権施策を積極的に推進している市として、ヘイトスピーチは許さないという姿勢を明確にし、ヘイトスピーチから市民等の人権を擁護し、その抑止を図っていくために、条例を制定する必要がある。/表現の自由等との関係では、人権施策推進審議会において、憲法や国際法などの専門家に検討していただいた答申内容をもとに制度を構築する。/制度の実施に当たっても、専門家で構成するヘイトスピーチ審査会を設置し、中立・公正な意見を聴くこととし、表現の自由を侵害することのないよう、適正に運用する。
【ヘイトスピーチの定義があいまい】➡ 定義については、表現活動の「目的」、「態様」及び「発信対象(受け手)」の3つの観点からの要件を設けるとともに、演説などの発言行為だけではなく、印刷物や光ディスク、インターネットのウェブサイト等への書き込み・掲載など一切の「表現活動」を含めるなど、定義づけを明確にしている。単なる批判や非難にとどまるものであれば、対象外となる。/ヘイトスピーチに該当するかどうかを判断するためには、必ず、ヘイトスピーチ審査会に諮問し、中立・公正な意見を聴くこととしている。
【外国人や特定の民族の利益となり、あるいは、日本人の言論弾圧】➡ 市内において現実に特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的な言動が行われている状況を踏まえ、条例を制定する必要がある。/本制度は、国籍を問わず市民の人権擁護を目的とするものであり、また、ヘイトスピーチを行っている者に対する義務付けその他の直接的な規制をするものではない。
2 条例案要綱(案)に関するもの(903件)
【市の区域外の行為も対象とすべきでない】➡ 市民等の人権を擁護する観点から、区域外で行われたものであっても市民等の人権を侵害するものには対処すべきであると考える。
【訴訟費用等の支援は税金の使途として問題】➡ ヘイトスピーチに係る訴訟費用等の支援は、市民等が司法救済を求めることを支援することに加え、ヘイトスピーチに関する司法判断を明らかにすることによりその抑止を図ることを目的とするもの。ヘイトスピーチに関する司法判断が示された場合には、その目的が達成されたことになるので、市が訴訟費用等を支援することについて公益上の必要性が認められる。
【ヘイトスピーチ審査会委員の選定基準が不明】➡ 委員については、審査の対象がヘイトスピーチであること、表現の自由との関わりがあること、措置の内容として訴訟等の支援があることから、憲法、国際法、行政法の分野の専門家及び弁護士で構成することとしている。また、答申において、審査会は中立的な立場の専門家で構成することが適当とされていることを踏まえて、条例化に際しては政治的中立性を新たな要件として設定することを考えている。
【条例制定は賛成だが、罰則、公共施設の利用制限も規定すべき】➡ 罰則規定については、国の人権侵犯事件調査処理手続に強制力を伴う措置がない中で、市が措置を講じるに当たり関係者に対して罰則を科すことを条例で定めることは困難であると考える。/公の施設の利用制限については、施設の利用が憲法が保障する表現の自由の行使という側面を持つものであることや、表現内容がヘイトスピーチに該当するかどうかはその内容を確認しなければ判断できないこと及び裁判例を踏まえると、ヘイトスピーチを行う団体であること又はヘイトスピーチが行われることのみを理由にその利用を制限することは困難である旨、人権施策推進審議会の答申でも示されており、同主旨を踏まえ、条例による規定は設けないことで考えている。
(4)他の関係機関との協議
条例制定に当たり、当時はヘイトスピーチに関連する法令が存在していなかったこと及び罰則を設けなかったことから、国、警察等の関係機関との協議は行っていない。
なお、条例制定後に、法務省及び大阪府警察に対し条例内容の説明を行っている。
(1) 魚住真司「大阪市反ヘイトスピーチ条例:その経緯と今後」人権を考える20巻(2017年)11頁は、日本経済新聞は「規制条例」を用いているが、他の主要紙は「抑止条例」等の表現を使用していると述べる。魚住准教授は、論文で「規制条例」を用いているが、条例1条が「ヘイトスピーチの抑止を図ることを目的とする」と規定しているように、「抑止条例」という表現が適当である。
(2) 1889年に、全国の市で初めての議会が開かれたとき、全ての市が「市会」という呼称を使っていた。1947年に地方自治法が公布され、市の議会のことは「市議会」と呼ぶことになるが、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸のいわゆる5大市は、それまでの「市会」という呼称を使用し、今日に至っている(http://www.city.yokohama.lg.jp/shikai/shikumi/qa.html参照)。
(3) http://www.city.osaka.lg.jp/shimin/page/0000275071.html
(4) http://www.city.osaka.lg.jp/shimin/page/0000270476.html
(5) 公益財団法人人権教育啓発推進センター「平成27年度法務省委託調査研究事業 ヘイトスピーチに関する実態調査報告書」(2016年3月)33~41頁(http://www.moj.go.jp/content/001201158)。
(6) http://www.city.osaka.lg.jp/shimin/cmsfiles/contents/0000007/7141/4bukaiyousi1.pdf
(7) http://www.city.osaka.lg.jp/shimin/cmsfiles/contents/0000223/223147/71.pdf
(8) 在特会及びそのメンバー9人が、2009年12月4日、2010年1月14日及び同年3月28日の3回にわたり、京都朝鮮第一初級学校の校門前に押しかけ、拡声器で「ここは北朝鮮のスパイ養成機関」、「朝鮮やくざ」、「こいつら密入国の子孫」、「不逞な朝鮮人を日本から叩き出せ」、「ゴキブリ、ウジ虫、朝鮮半島へ帰れー」等の発言を繰り返した。
(9) http://www.city.osaka.lg.jp/seisakukikakushitsu/page/0000266440.html
(10) http://www.city.osaka.lg.jp/shimin/page/ 0000299917.html
(11) http://www.city.osaka.lg.jp/shimin/page/0000309374.html