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議会REPORT

2017.11.27 議会改革

深化する四日市市議会の改革

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2 四日市市議会の改革の歴史(第2ステージ:2000年度~現在まで)

 振り返って1999年当時の四日市市議会を考えると、大切なことはすべて「各派代表者会議」において決められ、その会議は非公開で代表者以外の議員には決定プロセスは知らされず結論だけが会派代表者から告げられていた。毎年度の初めには、代表者による長時間の話合い(数日・夜間に及ぶ年もあり)により、正副議長など役員人事・委員会構成が決定される。1年生議員などは、ひたすら待ち続けた後、何も分からず決定に従うのみ、という習わしであった。
 議員説明会(重要政策に関する執行部説明と協議)での発言権は会派ごとに人数制限があり、1年生議員には発言権がない場合もあった。また、委員会でも代表者クラスの発言力が大きく、2期、3期議員たちは、常任委員会で発言することも今よりも格段に少なく、期数を重ねて正副議長の“適齢期”を待つ、という構えを続けていた。ちなみに、四日市市議会の“適齢期”は、議長が4期・5期、副議長は3期・4期とされていた。
 議員の仕事は会議にあらず――では、議員の“本分”は何かというと、道路整備に代表される“市民要望”対応である。自分の地盤地区や支持者の要望に応えるため、整備予算を獲得することであった。
 市民の声を背負って集まった議員が、より良いまちづくりを会議で徹底的に議論する、今では堂々と声に出せる「議員・議会の本分」とは、かけ離れた世界であり場所だったように感じる。このような状況は四日市市議会に限った状況ではなく、むしろ多くの地方議会のスタンダードだったのではないだろうか。
 2000年以降、四日市市議会における議会改革の流れは定着した感がある。例えば、議会は立法府であり新条例を提案・制定するのが重要な本来業務である、という認識が高まったし、議長選挙では候補者が改革提案を行うのも定番となった。くだんの「道路整備要望」については、市内各地区に予算配分し地区住民が整備箇所・内容を自ら決定する制度が導入された。議員有志からの提案による、この新制度導入により、道路整備に議員が関与する余地をなくし、それより後は、議員の意識が政策議論にシフトする大きな転機となったように思う。
 四日市市議会が現在、実施している特徴的な制度は次のとおりである。

(1)議会議論の活性化
○「議員政策研究会」
 市政の諸課題に対して全議員で意見交換を行い、政策立案機能の向上を目的に設置。必要に応じて分科会を設置し、掘り下げた調査・議論を行う。近年は、分科会研究の後に、発展的に特別委員会を設置して条例提案に至るケースが多い。
〈設定された分科会の一例〉
 「議会基本条例分科会」、「市民協働促進条例分科会」、「総合交通政策分科会」、「四日市公害分科会」、「市街化調整区域における土地活用の規制緩和分科会」、「新しい図書館を考える分科会」、「スポーツ振興条例分科会」、「公共交通のあり方を考える分科会」、「障害者差別解消調査研究分科会」

議員政策研究会四日市公害分科会の様子議員政策研究会四日市公害分科会の様子

○「通年議会」2011年度~
 会期を通年とすることで、市長の招集により「開会議会」を開いた後は、議長の権限で本会議を再開できることから、より速やかに本会議を開くことができ、災害などの突発的な事件や緊急の行政課題に対応できるようになった。また、通年会期の中で、常任委員会・特別委員会の活動を活発化し、より慎重な議案審査や、より専門的な調査を行うことが可能となった。
○「反問権」
 本会議・委員会で、議員の質問・質疑に対して執行部が、議論を明確にしようとするために反問することができるもの。「反問」には、議員の考え方を問い返すことや、対案の提示を議員に求める「反論」も含まれる。議論の明確化と活性化が目的。最近は、市長公約に関する応酬が多い。
○「専門的知見の活用」
 学識経験者等の専門的な知識を有する方に、議案や市の事務に関する調査を依頼し、その調査結果を議論に反映させる制度。
〈実施した事例〉
 「四日市市の補助金に関する調査業務委託」(大学院教授)
 「四日市市スポーツ振興条例制定に係る調査業務委託」(大学教授、准教授)
○「政策提言」
 明文化された制度ではないが、常任委員会・議員政策研究会で意見集約された事項について、市長に対して政策提言を行った事例が複数ある。
〈政策提言を行った事例〉
 「8分消防5分救急の実現について」(産業生活常任委員会)
 「補助金調査について」(決算常任委員会)
 「本市のスポーツ振興に関する提言」(議員政策研究会)
 「新しい図書館構想に向けた提言」(   〃   )
 「新しいデマンド型公共交通ネットワークの構築」(   〃   )
 「防災力のさらなる向上に向けた提言」(   〃   )
○「4常任委員会報告会」2017年4月~
 年度終了後の4月に、各常任委員会における1年間の所管事務調査等の議論内容について全議員に報告し、他の委員会所属議員からの質疑を受ける。全員協議会室で開催し、理事者の出席は求めない。
 期待する効果は、議会全体で情報共有を図ることに加えて、報告を想定して、委員会議論の中で「議員間討議の活性化」、「意見集約」の実現を促すこと。併せて、所管事務調査の重みを増すことにつながると考えられる。

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