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なり手不足を考える

2017.07.25 政策研究

自治の担い手の再生へ

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環境整備が急務

 議員のなり手不足をもたらす2つ目の要因が、地域内に議員活動を担いたいと思う人がいるにもかかわらず、議員活動を行える環境が整備されていないことだ。逆にいうと、特定の人にしか議員活動を担えないような仕組みになっている。地方議会の会期日数は、都道府県議会が年間98日(2009年度)、市区議会が87.1日(2014年)、町村議会が43.3日(2014年)なので、兼業は可能。だが、議会は常に平日の昼間に開かれるため、会社勤めの人が議員活動を担うのは事実上、不可能だ。このため、勤め人が議員になろうと考えた場合、会社に議員休職といった特別な制度がある人は別として、職を辞して選挙に打って出ることになる。当選する保証などなく、リスクはあまりにも大きい。こうして世の中の多数を占める勤め人は立候補に二の足を踏まざるを得なくなり、平日昼間の時間帯を自分の裁量で使える特定の人たちが議員になるのが、実態だ。
 さらに、議員報酬の問題も加わる。議員は高額報酬を手にしていると思い込んでいる人が多いが、べらぼうな額を得ているのは大都市部の議員のみ。町村議員の報酬は低く、全国平均で月額21万円余りにすぎない。子育て中の現役世代がやっていける報酬とはなっていない。地域の中に議員活動を担う意欲ある人たちが存在しながら、議員のなり手不足が進行している。誰もが議員活動を担えるような条件・環境となっていないからだ。
 こうした要因によるなり手不足を解消する策は、法律改正までは必要とはせず、地域がやろうと思えば、できる。例えば、議会の開会を平日昼間ではなく、土日ないしは平日の夜間に限定すれば、勤め人も議員の担い手になり得る。実際、こうした主張を掲げて議員選挙に挑んだのが、「地方議会を変える千代田区会議」という住民グループだ。2015年4月の東京・千代田区議選に複数の候補者を擁立し、「土日夜間議会」による議会改革を訴えた。結果は多くの支持を集めることにはならなかったが、注目すべき動きといえる。
 低額な議員報酬を現役世代が生活していける程度まで増やすことも考えるべきだ。斬新な策を講じたのが、長崎県小値賀町議会である。月額18万円の議員報酬を50歳以下に限り30万円に引き上げた。2015年4月の町議選直前のことで、若手住民の立候補を促すことを目的とした。当時の町議10人の平均年齢は65.3歳で、全員50歳以上。しかし、定数8に削減された町議選は9人が立候補したものの50歳以下はゼロ。報酬アップが効果となって現れるには、今少し、時間がかかるようだ。
 このほかに地域の企業が議員休職制度などを新設すれば、議員にチャレンジする人は今より増えると考えられる。固定化された議員供給ルートを拡大し、なり手の裾野を広げる環境整備に取り組むべきだ。多様な人たちが議員になれば、議論もより活発化し、地方議会が本来の機能を果たせるようになるのではないか。
 さて、議員のなり手不足の3つ目の要因である。これが最大の要因であり、かつ、一番の難題で、技術的な取組みで対処できるものではない。それは、地方議員になんぞなりたくないという住民が増えていることだ。議員活動を担える力のある人たちも含め、多くの住民が議会や議員に背を向けている。実は、こうした無関心層にメスを入れない限り、なり手不足の抜本的な解消も真の議会改革もあり得ない。地方自治を担う主体の再生こそが急務となっている。
 議員の仕事や役割がよく見えず、分からず、存在価値を見いだせずにいる住民が圧倒的多数となっている。現職議員の情けない姿ばかりを見せられ、聞かされ、リスペクトできずにいる。実際、地域の役に立たない低質な議員がほとんどなので、「議会・議員なんてあってもなくても同じだ」と、突き放す人も多い。だが、それは大きな間違いだ。議会・議員の役割は地域にとって重要極まりなく、役に立たない議会・議員を野放しにすることは自らの首を絞めることにほかならない。
 議会・議員に背を向けている人たちは3つのタイプに分かれる。ひとつは、議会や行政に全く関心を持たず、他人事と考えている人たちだ。主権者としての意識や自覚を持てずにいるのである。2つ目は、議会や議員と接する機会がなく、アプローチの仕方も分からず、その余裕もなく、議会・議員が遠い存在となってしまっている人たちだ。ないわけではない関心が眠ってしまっているのである。3つ目は、関心を持ってはいたが、議会のひどい実態にあきれ果て、さじを投げてしまった人たちだ。このタイプはそう多くない。
 1のタイプの方に議員のなり手になってもらうのは至難の業なので、ここは2と3のタイプの方に限定して考察したい。

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