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2017.07.25 政策研究

自治の担い手の再生へ

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ジャーナリスト 相川俊英

 地方議員のなり手不足が深刻化しており、とうとう議会廃止を検討する自治体さえ現れた。高知県大川村だ。全国の自治体関係者に大川村ショックが広がった。
 大川村は四国のほぼ中央に位置する山間の過疎の村。人口減と高齢化が急速に進み、住民の数はピーク時の10分の1に減り、約400人。村議会もなり手不足に見舞われ、定数削減を重ねる。2007年から6となったが、それでも2015年の村議選は無投票。しかも、名乗りを上げたのは高齢者ばかりで、村議の半数が70代後半だ。議会の存続そのものが危ぶまれる状況となっている。このため大川村の和田知士村長は6月議会で、議員のなり手不足で村議会を維持できなくなった場合に備え、「町村総会」の設置を検討すると表明し、日本中を驚愕(きょうがく)させたのである。有権者が直接参加して意思決定する「町村総会」の道も選択肢に入れざるを得ないほど、議員のなり手不足が深刻化しているのである。
 存亡の危機に見舞われている地方議会は大川村のような小規模自治体に限らない。高額な議員報酬に魅(ひ)かれて議員志願者が殺到する大都市部の議会は別として、なり手不足が地方議会の最大の課題となっている。多くの自治体にとって、大川村の苦悩は他人事ではなく「明日は我が身」なのである。

なり手不足3つの要因とその対策

 ではなぜ、地方議会がなり手不足に苦しむようになったのか。そして、どのような対策が考えられ、さらにはどのような解消実践事例があるのだろうか。
 議員のなり手不足の要因は3つある。ひとつは、議員活動をできる人こなせる人そのものが激減しているケースである。大川村のように人口減と高齢化がもたらした現象だ。この場合、どこも決まって議員定数の削減という策を講じるが、対症療法でしかない。議員のなり手を増やすことにはつながらず、早晩、行き詰まる。より大胆な対策に取り組まざるを得ない。法改正を伴うものだ。
 例えば、被選挙権の要件の見直しだ。25歳以上という年齢制限を18歳以上に引き下げたり、住民以外にも議会の門戸を広げる策である。つまり、首長選と同様に、住民でなくても(引き続き3か月以上同一の市区町村に住所がなくても)地方議員選に立候補できるようにする。現行法は、首長選には住民でなくても立候補できるようにしてあり、地方議員選にはそれを認めていない。なぜ、そうした違いが設けられたか、理由ははっきりしない。この要件を撤廃し、地域外から議員の助っ人を求めやすくしてはどうか。荒唐無稽な案のように思われるかもしれないが、検討に値すると思う。
 実は、今や安倍政権の汚れた看板政策となった感のある「国家戦略特区」に、これに近い趣旨の提案をしたコンサルタント会社があった。それは「ふるさと選挙」制度を新設するというアイデアだ。特定の自治体に一定額以上のふるさと納税をした人に、その自治体の首長選や議員選に投票でき、さらには議員選にも立候補できるよう公職選挙法に地域限定で特例を設けてはどうかという提案だった。特区は実現していないが、議員のなり手不足の解消につながる策のひとつと考えられる。
 兼業が認められている地方議員だが、職務専念義務のある公務員は議員を兼務することは許されていない。小規模自治体になればなるほど、住民の中の公務員率は高く、それだけ議員になれる人が絞られてしまうことになる。この公務員兼業制限を緩和する手もありうる。
 最後の策が、議会を廃止し「町村総会」に切り替えるドラスティックなものである。

相川俊英

この記事の著者

相川俊英

地方自治ジャーナリスト。1956年群馬県生まれ。地方自治の取材を四半世紀以上にわたって続ける。2017年3月に『地方議会を再生する』(集英社新書)を出版し、本来の機能を果たす地方議会の実例とその作り方をまとめた。この他に『奇跡の村 地方は人で再生する』(集英社新書、2015年)『トンデモ地方議員の問題』(ディスカヴァー携書、2014年)など多数。

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