(4)内部統制に関する方針の策定等について
〈内部統制に関する方針の策定等(地方公共団体の財務に関する事務等の適正な管理及び執行を確保するための方針の策定等)〉
ア 都道府県知事及び指定都市の市長は、財務に関する事務等の適正な管理及び執行を確保するための方針を定め、これに基づき必要な体制を整備しなければならないこととし、その他の市町村長には、これらについて努力義務を課す。
イ 当該方針を策定した地方公共団体の長は、毎会計年度、当該方針及びこれに基づき整備した体制について評価した報告書を作成し、議会に提出しなければならない。
個々に行われていたリスク回避を総合的に考える内部統制に関する方針を首長が策定すること、そして体制を整備することは意義あることである。改正のように大きな自治体に限って義務付けをすることは必要であるが、今後その他の市町村でも策定すべきであろう。
その上で、内部統制の文脈での改正ではあるが、いわゆる「外部」の責任も増加させる。内部統制報告書の作成、それを監査委員が審議し、議会に提出、住民に公表することとなっている。
議会は、政策提言機能を強化しているが、執行へのチェックも重要な役割である。この改正はその素材にできるし活用しなければならない。監査委員は、執行機関なので外部といえるか難しいが、その統制報告書の審査を行うだけではなく、これを活用して監査を充実させることができる。また、住民に対する公表によって、住民は監視に役立てることができる。
ともかく、この方針や報告書の作成は、内部の問題だけではなく、地域経営にとって重要な改正だと考えている。
内部統制の方針等の整備は市町村も必要であるというより、むしろ不可欠である。義務化されていなくとも、方針等の整備を行ってほしい。内部統制を地制調等において議論していることを知っている市区町村は41.1%にとどまっている(町村では33.8%、地方自治研究機構 2017:97)。
議会には同様にリスクマネジメントが必要である。政務活動費の不正受給などを含めた政治倫理の規定などが想定できる。そして、その中には、議会事務局を対象としたリスクマネジメントは不可欠である。
3 地方独立行政法人法の一部改正の論点
〈地方独立行政法人の業務への市町村の申請等関係事務の処理業務の追加〉
地方独立行政法人の業務に市町村の長その他の執行機関に対する申請、届出その他の行為の処理に関する事務であって定型的なもの等を処理することを追加する。
〈地方独立行政法人における適正な業務の確保〉
地方独立行政法人の業務における適正を確保するため、必要な体制の整備に関する事項を業務方法書に記載しなければならないものとする等の見直しを行う。
一部の審査や交付決定等には公権力の行使に当たる事務が含まれ、一連の事務の一括した民間委託等、効果的な委託が困難であり、町村などの小規模自治体では事務量が少なく単独で委託先の確保が困難であるという認識の下で、外部資源活用の新たな選択肢として地方独立行政法人に窓口業務を行わせることができるようにしようという改正である。
図 現行制度上の、住民異動窓口(転入届の受付かつ住民票の写しの交付)における業務フロー図
そもそも、公権力の行使に当たって2つの考え方がある。
① 公権力の定義を再考する。放置車両確認業務の民間委託(駐車監視員)、指定工場での民間車検、建築確認の民営化といった今日の状況を考慮し、公権力を再定義し、縮小することを想定する立場である(今井 2017)。
② 公権力を踏まえて、公権力を担えるようにする立場である。
今回の地方独法改正は、2つの立場のうち後者を採用して「申請等関連事務処理法人」の設置により選択肢を増やしたことである。前者の議論も、そろそろ考えたい。
今回の改正に当たって、まず選択制であることを確認したい。選択肢を増やしたということであるが、活用するかどうかは、当然ではあるが自治体に委ねられている。
実際に選択するかどうかを議論する場合(従来からも可能な委託を含めて)、今回の地方独法改正については、いくつかの留意点がある。
窓口や出先といわれる機関には、地域の実情を把握できる重要な役割がある。いわゆる出先こそが先端である。アウトリーチというように、窓口、出先を通じて住民と接触し、地域経営に生かす。
生活保護の受理や、戸籍事務などは対象から除かれている。活用する自治体では、相談窓口の位置付けを議論し整備してもらいたい。
ワーキングプア、ひいては地方創生に逆行する危惧もある。効率的な行政経営の手法である。ただし、そこで働く人たちの労働条件を考慮することが必要だ。
地方独法の改正は選択肢を広げたものであるが、慎重な議論や導入が必要である。