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2017.07.10 議会改革

地方自治法等の一部改正と住民自治(下) ――議会による活用の可能性を探る――

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(2)決算不認定の場合における議会等への報告規定の整備

〈決算不認定の場合における地方公共団体の長から議会への報告規定の整備〉
 地方公共団体の長等は、決算が不認定となった場合において、当該不認定を踏まえて必要と認める措置を講じたときは、その内容を議会等に報告し、公表しなければならない。

 今までこの規定がなぜなかったのか。もちろん、規定がなくとも、それぞれの自治体でこのようなことを行うことはできた。
 先般の自治法改正における専決処分の承認の否決後の対応が義務化されている。議会の権限を奪ったわけだから当然必要である。第30次地制調では、専決処分が否決されたら首長は条例改正案や補正予算を提出しなければならないと主張する方もいた。専決処分はそのくらい重いものである。
 今回の改正は、それを決算不認定にスライドさせたものである。決算不認定の場合の首長の対応は、今日の議会改革にとって極めて重要である。一方で、決算は終わったことだから軽視するという風潮は、それこそなくさなければならない。他方で、関連事項が動いているから重要だという狭い活用の仕方ではない。
 今日、本丸として財政過程に積極的にかかわる議会も登場している。予算は重要ではあるが、充実した予算審議をするためには、決算審査とそれに基づく予算要望を議会として提出する、そして、その決算審査を充実させるために議会として行政評価を行う、こうした一連のサイクルの中で決算審査は重要となる。そのため改正法では、不認定の場合の首長の対応が明記された。
 ただし、今回の改正では、「必要と認める措置を講じたときは」という限定がある。政治的あつれきからの不認定を考慮して、このような改正条文となったのだろう。
 不認定の場合には、議会側からも説得的な理由を提示する必要がある。

(3)地方公共団体の長等の損害賠償責任の見直し等

〈地方公共団体の長等の損害賠償責任の見直し等〉
ア 地方公共団体は、条例で、地方公共団体の長や職員等の当該地方公共団体に対する損害を賠償する責任を、その職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、賠償の責任を負う額から、政令で定める基準を参酌して、政令で定める額以上で当該条例で定める額を控除して得た額について免れさせる旨を定めることができる。
イ 地方公共団体の議会は、住民監査請求があった後に、当該請求に係る行為又は怠る事実に関する損害賠償又は不当利得返還の請求権その他の権利の放棄に関する議決をしようとするときは、あらかじめ監査委員の意見を聴かなければならない。

 第31次地制調でも多くの議論があり、答申後にもいろいろと議論がある法改正の項目である。
 改正点は、概略すれば2つである。
 ① 1つは、善意で軽過失の場合に「賠償限度額を限定してそれ以上の額を免責する」ことを条例で定めること。
 ② もう1つは、住民監査請求に関する損害賠償請求等の放棄を議会が議決するときは、監査委員からの意見聴取を必要とすること。
 1点目は、軽過失免責をとっておらず、一方で従来どおり監査請求・住民訴訟は可能であり、他方で過大な責任とはならない配慮がされている。
 問題となる事項は2点目である。第31次地制調答申においては、係属中の賠償請求を放棄することを制限するものだった。そう主張する方も多い。今回の改正は妥協点として評価できる。その内容とともに、1点目と合わせて理解すべきである。
 そもそも筆者は、原則論として地方分権時代、議会の役割が高まっている時期に、係属中という限定はありながらも、議会の権限を制限することは問題があると考えていた。ただ、賠償額が確定していない段階で全額免除することは、住民感覚からすれば問題も残していた。
 そこで、監査委員からの意見聴取を組み込んでいる。監査委員に問題があるから住民訴訟になっている事柄について、監査委員に聞いても同じではないかという問題もあるが、独立性・専門性を有した監査委員制度に期待する程度のものである。したがって、これだけ読めば、何の進展もない、あるいは悪くなっていると感じる方もいる(例えば、阿部 2016、2017)。
 この問題を考える上で、より重要なことは、1点目の効力である。すでに賠償責任額を限定してそれ以上の額を免責としている。そのため、それ以上の免責・放棄をするには、その根拠が問われる。また従来、議会が放棄する金額は、一部ではなく全額免除としていた。軽過失の場合、条例で減額していることで、それ以上の金額を放棄するのであれば、相当の理由付けが必要になる。
 議会にも、監査委員にも説明責任が今以上に求められる。
 すでに指摘したように、第31次地制調答申では係属中の放棄の禁止が強調されていた。しかし、議会の権限を奪うのは分権時代に、そして地方政治の時代に逆行している。住民感覚とはずれた行動を議会にとらせないために、説明責任の強化によって外堀を埋める改正である。
 なお、巨額の損失を自治体に被らせないために、内部統制の強化が必要となる。それが次の論点である。

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