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2017.07.10 議会改革

地方自治法等の一部改正と住民自治(下) ――議会による活用の可能性を探る――

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イ 監査基準の策定に当たっての国のかかわり
 監査委員が監査基準を策定する際に、国が指針を出し、策定や改正の際は大臣が助言すること(義務付けではあるが、その意味については注意を要する(大臣に義務付ける構成))になっている。後述するように、国が指針を示すことは否定されるべきものではない。すでに技術的助言ができる(自治法245の4)。今回の大臣の助言は、自治法245条の4と同じように法的拘束力があるわけではない。大臣の助言の意義等は十分議論すべきである。
 第31次地制調答申との関連を指摘したい。今回の自治法等の一部改正はほぼ答申に即している。ただ、3つの提案((ⅰ)全国を通じて統一的な監査基準を策定する、(ⅱ)監査委員等の研修制度、(ⅲ)これらのほか、監査事務の助言等を行う全国組織)は盛り込まれていない。
 そもそもそういうことは行われている。今さら全国組織の意味はないし、どこがそのような組織を期待しているのか分からない。論点は次のようになる(安念 2017)。
 ① ほぼ統一的な監査基準がすでにある。全国都市監査委員会「都市監査基準」「都市監査基準逐条解説」、全国町村監査委員協議会「標準町村監査基準」などである。
 ② すでに研修する組織はあり、行われている。市町村アカデミー(JAMP)、全国市町村国際文化研究所(JIAM)、自治大学校、全国都道府県監査委員協議会などや、弁護士会、公認会計士協会、税理士会などで行われている。
 ③ 多様な全国組織はすでにある。それを活用すればよい。全国都市監査委員会、全国町村監査委員協議会、全国都道府県監査委員協議会が想定できる。

 監査基準の策定自治体は、都道府県98%、市57%、町村45%となっている(総務省資料(2015年4月1日現在))。監査基準がない自治体が監査を行う祭の基準・参考としているものは、監査委員の判断、都市監査基準準則、標準町村監査基準、自治法に基づく基準となっている。なお、監査計画の種類(例えば、都市監査基準準則)には、基本計画(種類別(各種監査、検査、実査)、予定)と実施計画(種類別(監査項目)、重点)があり、それらに基づき実践されている。

 監査基準の策定は必要であり、それを義務化することは全国組織の設立よりは、ずっとベターである。助言は屋上屋を重ねるものだという気もする。自治法245条の4との整合性である。
 監査の重要性に鑑み、国が指針を示し、基準は監査委員が策定するということは理解できる。もちろん、地方分権の成果を考えれば、この指針は、法的拘束力はなく、またマニュアルでもない形式的なもの、基本的な原則・視点である。監査の目的、監査委員の役割・責任・重視すべき点・報告の際の項目が想定できる。基準の中身にかかわることではない。
 監査基準の策定変更に当たって、「行うものとする」というように大臣に義務付けている。全国組織ではなく国が指針を示すこと、大臣に助言を義務化することで、全国的に監査の質の向上を図ろうとしている。注意すべきは、個別の監査にかかわることではないということ、要するに全国組織によるのではなく、監査の質の向上を意図したものということである。ただし、繰り返しになるが、今後屋上屋を重ねる、今回の助言のような方式が条文化されることは慎重でなければならない。

 地方分権一括法の施行によって、国等の関与には3つの原則が明確になった。法定主義の原則、必要最小限度の原則、公正・透明の原則である。その上で、国の関与は、自治事務については4類型(助言・勧告、資料の提出の要求、是正の要求、協議)、法定受託事務については7類型(助言・勧告、資料の提出の要求、同意、許可・認可・承認、指示、代執行、協議)がある。
 監査委員が監査基準を策定する際に、国が指針を出し、策定や改正の際は大臣が助言することになるが、すでに「助言」がある(自治事務の助言と同様と理解できる)。今回の改正とすでに自治法で挿入されている助言との整合性が問われる。今回の改正で挿入される助言は、大臣に義務付けるというものだとすれば、監査基準の策定や改正の際は積極的にかかわるというものである。勘ぐれば、従来から挿入されている「助言」は曖昧なものなのであろうか。それを作動させる根拠・要素が議論されるべきであろう。
 今後の監査基準の策定や、改正の際の大臣の「助言」がどのように行われるか注視していきたい。とりわけ、助言を大臣に義務付ける意味と大臣による助言の範囲については、国会での議論を参照して記憶にとどめておきたい(後掲資料参照)。

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