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立法事実から見た条例づくり

2016.12.12 政策研究

補助金等の交付に関する条例と立法事実(上)

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(4)市長等及び補助事業者等の責務(4条・5条)
 まず、市長等の責務として、補助金等に係る予算の執行に当たっては、補助金等の交付の目的及び効用、補助の対象となる事業の目的、性質及び実施状況、市の財政状況その他諸般の状況を総合的に考慮して、補助金等の公正かつ効率的な執行に努めなければならないとしている。
 次に、補助金等の交付を受ける事業者等の責務として、補助金等については、その交付の目的に従って誠実に補助事業等を行うように努めなければならないとしている。
(5)補助金等の交付(6条)
 市長等は、補助金等の交付に当たっては、あらかじめ補助金等ごとに、交付の目的、補助事業等、補助金等の交付の対象者及び補助金等の額の算定方法を定めなければならないとしている。具体的には、「○○事業補助金等交付要綱」といった形で定めることが想定される。
(6)補助金等の有効性及び効率性の検証等(7条)
 市長等は、社会経済情勢の変化その他諸般の状況に的確に対応するために、補助金等の交付の有効性及び効率性を検証し、必要があると認めるときは、補助金等の新設、充実、統合、廃止その他適切な措置を講じるとしている。
(7)補助金等の交付状況の公表(8条)
 市長等は、毎年1回、補助金等の交付の状況を取りまとめて、補助金等の名称、交付の目的、交付額その他市長等が定める事項を公表するとしている。
(8)交付の申請(9条)
 補助金等の交付を受けようとするものは、市長等が定める事項を記載した申請書と添付書類を、市長等が定める期日までに提出しなければならないとしている。
(9)交付の決定等(10条・11条)
 市長等は、補助金等の交付申請があった場合には、書類等の審査、現地調査その他の方法により、補助事業等の目的及び内容が適正であるか否かを調査し、補助金等を交付することが適当であると認めるときは、速やかに、補助金等の交付及び交付予定額を決定するとしている。また、市長等は、補助金等の交付の目的を達成するために必要があると認めるときは、条件を付するとしている。
(10)事情変更による決定の取消し等(14条)
 市長等は、補助金等の交付を決定した場合において、その後の事情の変更により特別の必要が生じたときは、補助金等の交付決定の全部若しくは一部を取り消し、又はその決定の内容若しくはこれに付した条件を変更できるとしている。
(11)補助事業等の遂行(15条)
 補助事業者等は、法令の定め、補助金等の交付決定の内容及びこれに付された条件並びに本条例に基づく市長等の処分に従い、善良な管理者の注意をもって補助事業等を行わなければならないこととしている。また、補助事業者等は、補助金等を他の用途に使用してはならないとしている。
(12)関係書類の整備(16条)
 補助事業者等は、補助事業等に係る経費の支出等を明らかにした書類を整備し、市長等が定める期間保存しなければならないとしている。
(13)補助事業等の遂行等の命令(17条)
 市長等は、補助事業等が法令の規定、補助金等の交付決定の内容若しくはこれに付された条件又は本条例に基づく市長等の処分に従って遂行されていないと認めるときは、補助事業者等に対し、これらに従って当該補助事業等を遂行すべきことを命じることができるとしている。
(14)実績報告(18条)
 補助事業者等は、補助事業等が完了したときは、原則として、当該補助事業等の実績を記載した報告書に市長等が定める書類を添えて、市長等に報告しなければならないとしている。
(15)補助金等の交付額の決定等(19条)
 市長等は、実績報告を受けた場合等は、報告書等の審査、現地調査その他の方法により、補助事業等の実績が補助金等の交付の決定の内容及びこれに付した条件に適合するか否かを調査し、適合すると認めるときは、補助金等の交付額を決定し、補助事業者等に通知するとしている。
(16)是正のための措置(20条)
 市長等は、補助事業等の実績が補助金等の交付決定の内容及びこれに付した条件に適合しないと認めるときは、当該補助事業者等に対し、これに適合させるために必要な措置をとることを命じることができるとしている。
(17)交付の時期(21条)
 市長等は、(15)の補助金等の交付額の決定後に補助金等を交付するものとし、例外的に、補助金等の交付の目的を達成するため特に必要があると認めるときには、補助事業等の完了前に、補助金等の交付予定額の全部又は一部について概算払又は前金払をすることができるとしている。
(18)決定の取消し(22条)
 市長等は、補助事業者等が本条例の規定又はこれに基づく処分に違反したときなどは、補助金等の交付決定の全部若しくは一部を取り消し、又は交付予定額若しくは交付額を変更することができるとしている。
(19)補助金等の返還(23条)
 市長等は、補助金等の交付決定を取り消した場合に、既に補助金等が交付されているときは、期限を定めて、その返還を命じるものとしている。
(20)財産の処分の制限(26条)
 補助事業者等は、原則として、補助事業等により取得し、又は効用の増加した財産のうち不動産及びその従物並びに機械及び重要な器具で市長等が定めるものを、市長等の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならないとしている。
(21)委任(28条)
 本条例において別に定めることとされている事項及び本条例の施行に関し必要な事項は、市長等が定めるとしている。この定めとして、京都市補助金等の交付等に関する条例施行規則(平成22年規則119号)が制定されている。この規則には、補助金等交付状況の公表に関する事項、補助金等交付申請書の記載事項、補助金等交付申請の取下げ期限、補助事業者等による関係書類の保存期間、立入調査における身分証明書の様式といった細目的な事項が定められている。


(1) ただし、公の支配の解釈については、おおむね、厳格説、緩和説(非厳格説)、それらの中間説に分かれている。辻村みよ子『憲法〈第5版〉』日本評論社(2016年)486頁・487頁などを参照。
(2) 通常、個別の補助金の交付については、その対象者、範囲、金額などを定める要綱(補助金交付要綱)が策定されるが、補助金によっては企業立地促進条例や乳幼児医療費補助条例のように条例が制定されることもある。これらは、補助金の交付の根拠を定めた「根拠規範」であって、本稿が取り上げる「規制規範」ではない。
(3) 補助金等の交付に関する条例(昭和29年高知市条例19号)、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する条例(昭和30年大網白里市条例4号)、常陸太田市補助金等交付に関する条例(昭和30年常陸太田市条例61号)、香川県単独県費補助条例(昭和31年香川県条例1号)、宇多津町補助金交付条例(昭和32年宇多津町条例16号)、補助金交付条例(沖縄県与那原町1957年10月)、田上町補助金等適正化条例(昭和50年田上町条例24号)、南国市補助金の交付に関する条例(昭和53年南国市条例20号)、鳴門市補助金等交付条例(平成13年鳴門市条例36号)、芦別市補助金等交付条例(平成14年芦別市条例1号)、由利本荘市補助金等の適正に関する条例(平成17年由利本荘市条例53号)、大仙市補助金等の適正に関する条例(平成17年大仙市条例60号)、上三川町補助金等基本条例(平成20年上三川町条例9号)、田布施町補助金等適正化条例(平成20年田布施町条例23号)などに限られる。そのほかにも、補助金等の基本的な考え方や、補助金等の見直し、議会への説明責任などを定める三重県における補助金等の基本的な在り方等に関する条例(平成15年三重県条例31号)、補助金等の基本的な原則、評価、見直し及び公募型補助金等の取扱いを定める指宿市補助金等の適正化に関する条例(平成19年指宿市条例21号)、責務規定を中心とした理念的な条例である霧島市補助金等理念条例(平成18年霧島市条例134号)及び広陵町団体補助金等適正化条例(平成23年広陵町条例13号)などがあり、これらの条例の立法事実も興味深いところではあるが、紙数の関係から本稿では取り上げない。
(4) 監査報告は、問題となった市補助金についての京都市の事務執行を監査した「京都市保育園連盟に対する援護費の執行に係る市長要求監査(平成21年6月17日・監査公表611号)」と、京都市と連盟における事務執行や業務委託に係る事務執行などを監査した「京都市保育園連盟における事務の執行に係る市長要求監査(平成21年7月31日・監査公表615号)」の2段階に分かれている。
(5) 平成10年度〜平成20年度の累計で約8億9,000万円。なお、遅くとも昭和57年には余剰金の発生が確認されている。
(6) 再発防止策としては、本条例の制定のほか、京都市職員コンプライアンス推進指針(平成21年9月10日)が策定され、職員に対するコンプライアンスの徹底が行われている。
(7) 平成21年10月1日・平成21年9月定例会(第4回)
(8) 平成21年12月3日・経済総務委員会(第18回)
(9) 平成21年12月3日・教育福祉委員会(第17回)

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