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立法事実から見た条例づくり

2016.11.10 政策研究

伊勢志摩サミット開催時の対象地域及び対象施設周辺地域の上空における小型無人機の飛行の禁止に関する条例─同時進行的な立法事実の検討に基づく時限条例─

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3 条例制定過程

(1)条例案の策定
 伊勢志摩サミットの開催決定を受けて、決定から3日後の6月8日、三重県庁では雇用経済部に、3課16名による「みえ伊勢志摩サミット推進局」が設置された。本条例の制定に向けては、局内のサミット開催支援課が担当した。
 サミットの開催日程が確定した後に、同局は34名の体制へと拡充された。しかし、本条例の制定作業にはさほどの人員を配分することはできなかったように見受けられる。
 条例案の策定が開始された時点では、改正航空法や禁止法は成立しておらず、これらと並行的に検討がなされた。当初の条例による規制の位置づけとしては、国の法令を補充するというものであった。議会での質問に対する、みえ伊勢志摩サミット推進局長による「サミット関係施設への規制につきましては、検討されている法案によりある程度規制されるものとは考えておりますけれども、規制が及ばない施設等につきましては県での条例を制定する必要があると考えております」(4)という答弁が如実に示すとおりである。
 しかし後に検討するとおり、国の立法の動き、とりわけ禁止法の成立がずれ込むことにより、条例案の策定過程では、本条例の立法事実及びその認識は変容することになった。
 条例案の検討に当たっては、禁止法の法案が参照されながら、検察庁・警察庁・外務省・国土交通省・海上保安庁等の関係機関との間で相当に入念な協議がなされたようである。また、外国におけるドローン規制の制度の検討作業も行ってはいたが、日本に出回っている一般的な大きさのドローンにフィットするような制度は見当たらなかったため、本条例案で採用されるようなものはなかったという。

(2)パブリックコメント
 策定された「伊勢志摩サミット開催時における小型無人機の飛行の禁止に関する条例(仮称)」の案は、平成27年8月12日から9月10日までパブリックコメントにかけられた。この条例案に対しては、合計で4通の意見書(意見総数:10件)が寄せられた。
 内訳としては、規制する期間に関するもの、許可の基準に関するもの、条例の執行に関するものが各1件、規制する場所に関するものが2件、その他が5件であった。この5件は、本条例の案に対する意見というよりも、ドローンに関する一般的な提言やドローンを通じた三重県の観光振興の提言といった性格の強いものであった。
 条例案の修正につながった意見は、規制する場所に関するものである。これは、賢島の規制範囲の設定が非常に分かりにくいという意見であった。この指摘を受けて、規制範囲の設定方法を変更する修正がなされた。

(3)議会での議論
 本条例案は、11月定例月議会に提案された。
 条例案の内容の、禁止期間が約2か月と長期間にわたること、対象として想定される地域が広範であること、罰則が重いものであることへの懸念による、県民の生活に対して過剰な不自由をかけることを避けるべきであるという理由による1会派の反対はあったが、平成27年12月21日に原案のとおり可決された。
 本条例は12月25日に公布され、同日に、本条例の施行規則(平成27年12月25日三重県規則90号、以下「本条例施行規則」という)も公布された。

(4)愛知県の条例制定への対応
 なお、伊勢志摩サミットに向けては、本条例の制定からおよそ3か月後に、愛知県においても、中部国際空港とその周辺を対象としたドローン規制を行う条例が制定された(平成28年3月29日愛知県条例4号、以下「愛知県条例」という)。
 この愛知県条例の制定過程に際して、三重県は関係情報を愛知県側に提供したということである。愛知県条例の内容は、一部を除いては、本条例とほぼ同じ内容であった。

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