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立法事実から見た条例づくり

2016.11.10 政策研究

伊勢志摩サミット開催時の対象地域及び対象施設周辺地域の上空における小型無人機の飛行の禁止に関する条例─同時進行的な立法事実の検討に基づく時限条例─

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名城大学法学部准教授 北見宏介

1 はじめに

 今回の対象は、三重県「伊勢志摩サミット開催時の対象地域及び対象施設周辺地域の上空における小型無人機の飛行の禁止に関する条例」(平成27年三重県条例73号、以下「本条例」という)である。本条例は、第42回主要国首脳会議(いわゆる伊勢志摩サミット)の開催に向けて、全国で初めてドローン(無人小型飛行機)等を主たる対象とした規制を行うものとして注目を集めた。また本条例は、伊勢志摩サミット開催に合わせた時限条例でもあった点、さらに、同じくドローン等を規制対象とした国の法律の制定の動きが、条例の制定・執行に影響を及ぼしている点で、条例づくりにおける立法事実という本連載の視点からは、検討の意義の大きいものと思われる(1)

2 条例制定の背景・経緯

(1)ドローンに関する事件と法規制の状況
 我が国では従来、ドローン等を主たる対象として念頭に置いた法的な枠組みは確固とした形では存在していなかった。こうした中、ドローンのビジネス活用を進める動きと、それに向けた検討がなされつつある(2)
 しかし他方で、平成27年4月22日には、内閣総理大臣官邸の屋上に、放射性物質を含有する土砂と加工済みの緊急保安炎筒を搭載したドローンを落下させる事件が発生した。また平成27年5月9日には、長野市の善光寺の行事中に境内にドローンが落下するという事件も発生した。
 官邸の事件では後に、威力業務妨害と火薬類取締法違反の有罪判決(3)が下されたが、こうした事件の発生もあり、国はドローン等の規制として、航空法の改正と、ドローンを対象とした新たな規制法の制定による対応に動いた。
 改正航空法は、平成27年9月11日に公布され、12月10日から施行された。他方、ドローンに関する新たな規制を行う法案の議員提案もなされたが、参議院において継続審議とされた。最終的には、「国会議事堂、内閣総理大臣官邸その他の国の重要な施設等、外国公館等及び原子力事業所の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」(平成28年法律9号、以下「禁止法」という)が、平成28年3月18日に公布され、4月7日に施行された。
 また各自治体も、ドローンの使用が各都市公園条例において規定されている迷惑行為・危険行為・管理に支障を及ぼす行為といった禁止行為に該当するという解釈により、規制の動きをとるところが見られる。

(2)伊勢志摩サミット開催の決定
 上記の事件発生から間もない平成27年6月5日に、三重県志摩市の賢島を会場とした、伊勢志摩サミットの開催が決定された。会場決定の要因としては、賢島が海に囲まれており、会場への陸路が2か所に限定されていること等の、警備に際しての地理的な好適さがあったとの報道がなされている。もっとも同時に、会場付近には多くの入り江や小島などがあり、テロリスト等が潜伏しやすいことを懸念する報道も見られたように、賢島はリアス海岸に囲まれた英虞湾内に位置している。
 このためサミット開催に係る警備では、離発着に広いスペースを必要としないドローン等のことも想定しつつ、複雑に入り組んでいる海岸線に沿って見回りを行う必要性が存在していた。
 そこで三重県においては、伊勢志摩サミット開催の決定前の時点から、すでにドローンの飛行を規制する独自条例の検討をスタートしていた。

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