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2016.08.10 議会改革

第1回 中尾修さん(元栗山町議会事務局長)~人口減少時代の今だからこそ取り組むべき議会改革~

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潮目が変わったきっかけは、地方分権改革と小泉行政改革だった

――栗山町議会にとって、そういった議会改革の方向に舵(かじ)を切っていく、潮目が変わった要因というのは何であったとお考えでしょうか?
 大きくは2つあると考えています。ひとつは、地方分権改革により国と地方とが対等・協力の関係と位置付けられたこと。もうひとつは、小泉行政改革により官から民への流れが加速したことが挙げられます。地方交付税が大幅に減額され、こうした財政的なショックからも市町村合併が進みました。議会が国の施策と向き合わざるを得ない状況に置かれたということがいえると思います。取り組む姿勢がおのずと変わりました。
 例えば、栗山町では平成20年に合併のための議会側説明会が、5回にわたって実施されました。このときは、執行側と議会側とが別々に説明会を開くような状況があったのです。一見すると違いが分からないように思えるかもしれませんが、二元代表制のもと積極的に合併を推進する執行側と合併推進・慎重の両方の住民の意見を聴こうとする議会がそれぞれ住民と向き合いました。当時、説明会に参加した住民の方からは、双方の意見が聴けて傾聴に値するものだったと評価をいただいたのが印象に残っています。議会の役割や意義を実感した出来事でもありました。

――議会や議員が、より活発に活動するようになっていったのですね。
 そうです。しかし、活発に活動するようになったといっても、議員の質問・質疑が的外れでかみ合っていないものではまずいのです。町の台所事情が分かっていない中で将来の話を皆で議論することはできません。やはり長期行政計画や財政の分野についてはひととおり知っておかないと議論にはならない。その意味で、議論の土台となるような事項についてはきちんとご理解いただけるように、議長や議会運営委員長の指示により議会事務局としても腐心をしましたね。
 当時の議長は、中長期の町の財政状況を全議員で検証し認識する特別委員会を設置することを提案しました。それまで行政側が当たり前のように行っていた守備範囲にどこまで議会が手を出すのか、正直なところ行政側も議会がそこまでやるのかと驚いたようです。
 ただ、そのような取組があって、ようやく議会は住民の前に自信を持って出ることができるようになったといえます。

議会事務局はどのように改革にコミットできるのか

――議会改革においては、議会事務局の役割も大きかったのではないかと思うのですが。
 当時、栗山町では議会事務局は3名体制でした。決して多い人員ではないのですが、議員向けに研修の機会を多く持てるようにしていました。時には、講師として財政課から人を呼んだりもしました。行政側の人は根拠のある数字を持ってきてくれるので、非常に精緻な情報が得られ勉強になるのです。
 議会事務局の仕事で大事なことは、常にアンテナを高くして、地方自治の現場での様々な取組をしっかり集めて、必要に応じて議会に提示できるようにしておくことだと考えています。議会が判断するための材料を集めること、ともいえます。
 実際のところ、栗山町議会では平成17年に宮城県の旧元吉町(現気仙沼町)に続いて議会報告会を行いました。すると、この報告会を制度として確立してほしいという意見が各会場の住民から出まして、そこでこの議会報告会を実施する条例をどのようにすべきかと考えていたときに、札幌市職員の渡辺三省氏が考えた議会基本条例要綱(試案)が『北海道自治研究』に掲載され、求めているものに非常にマッチするということで、栗山町の活動に合わせたものへと修正をし、平成18年に制定しました。
 このように、各自治体や議会での取組をしっかり調査・収集し、議員が検討をするに当たって必要に応じて類似の先行事例の提示をするのも議会事務局の役割のひとつだと感じています。
 栗山町での議会改革がだんだんと進み、議会が本来の役割をきちんと果たせるようになってきたことで、住民の議会を見る目も変化が生じてきました。議会も役所も、住民にとっては違いが分かりにくいものだと思いますが、それが変わっていきました。例えば、栗山町の住民にとって議会報告会はお祭りのような年中行事と同じものといった感覚が出てきて、報告会に出るのが当たり前になってきました。また住民からも積極的に提案がなされるようになりましたし、前述の合併の報告会にもたくさんの人が集まりました。この意味で、地方議会改革は結果的に住民自治を推し進めることにつながるのだと、強く感じます。

――なるほど。ところで、案件によって積極的な議員とそうでもない議員がいるような場合、特定の積極的な議員の方に向き合う時間が多くなりそうですが、そういうものなのでしょうか。
 議会事務局が、議員に対してどのように情報を発信していくかということはとても重要で、まず全体に対して公平性を保って接していくことが求められると考えます。政治はきれいごとではなく権力闘争の場ですからね。議会事務局としてもどこまでコミットしていくべきなのかは難しいところです。
 議会として最も重要な事項は情報伝達です。議員同士の間での情報伝達のスピードに差が生じるようなことは絶対に避けなければなりません。合議体の場においては、感情的な部分に左右されるような形で、伝えるべき情報に漏れがあったり一部の議員への情報伝達が遅くなったりするのは問題になります。政治的な対立や熱のある議論は大いになされるべきであり、その議論が成り立つよう、その前提条件として議員に伝える情報に違いがあってはいけないのです。この情報の伝達について、事務局職員は非常に神経を使うべきです。

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