(11)重大事態への対処
条例第5章は、「重大事態への対処」として、28条から33条までの規定を置き、第1節「道立学校に係る対処」(28条~30条)、第2節「私立学校に係る対処」(31条・32条)、第3節「市町村立学校に係る調査及び報告徴収」(33条)という構成である。これは、4(2)(ⅰ)で述べた主な論点の⑥である。
(ⅰ) 道立学校に係る対処(図「道立学校における対処」参照)
条例28条は、道立学校で重大事態が発生した疑いのあるときは、道立学校が教育委員会を通じて、その旨を知事に報告しなければならないと規定する。条例29条は、道立学校からの報告、児童生徒又はその保護者から申立てがあったときは、道教育委員会の附属機関である「北海道いじめ問題審議会」において調査を行い(1項)、その結果を知事に報告する(2項)ことを規定する。また、同条3項は、教育委員会の調査が終了したときその他必要があると認めるときは、いじめを受けた児童生徒及びその保護者に対し、当該調査に係る重大事態の事実関係等の情報を適切かつ迅速に提供することを義務付けている。
条例30条は、教育委員会からの報告を受けた知事は、必要があると認めるときは、知事の附属機関である「北海道いじめ調査委員会」に、道立学校で発生した重大事態に係る調査の結果について調査を行わせるものとすると規定する(1項)。知事は、調査が終了したときその他必要があると認めるときは、いじめを受けた児童生徒及びその保護者に対し当該調査に係る事実関係等の情報を適切に提供することを義務付けている(3項)。また、知事は調査結果を議会に報告しなければならない(4項)。
(ⅱ) 私立学校に係る対処
条例31条は、私立学校で重大事態が発生した疑いがあると認められるときは、法31条1項の規定により、知事に報告しなければならないことを規定する。条例32条は、1項で、学校法人又は当該学校が組織を設けて調査を行った結果について知事が報告を求めることを、2項で、報告を受けた知事は、必要があると認めるときは、知事の附属機関である「北海道いじめ調査委員会」に、私立学校で発生した重大事態に係る調査の結果について調査を行わせることを、4項で、知事は、調査が終了したときその他必要があると認めるときは、いじめを受けた児童生徒及びその保護者に対し当該調査に係る事実関係等の情報を適切に提供することを規定している。また、条例32条5項は、知事が私立学校法6条に規定する権限の適切な行使等をするものとすると規定している。これは、4(2)(ⅰ)で述べた主な論点の③である。
(ⅲ) 市町村立学校に係る調査及び報告徴収
市町村立学校で発生した重大事態については、法28条・30条の規定により、設置者又は当該学校が組織を設けて調査を行い、その結果を市町村長に報告する。市町村長は、必要があると認めるときは、当該調査の結果について調査を行うことができることになっている。
条例33条は、道教育委員会が、1項で地教行法53条1項の規定に基づき、必要な調査を行うことを、また、2項で同法54条2項の規定に基づき、市町村長又は市町村教育委員会に対し必要な報告を求めるものとすると規定する。詳細は、「6 条例の立法事実の検討」で述べる。
(12)組織
(ⅰ) 北海道いじめ問題対策連絡協議会(第6章(34条・35条))
いじめの防止等に関係する機関及び団体の連携を図るために設置される。
(ⅱ) 北海道いじめ問題審議会(第7章(36条~45条))
道教育委員会の附属機関として設置され、いじめの防止等のための対策の推進に関する重要事項を調査審議し、道立学校で発生した重大事態について調査を実施する。
(ⅲ) 北海道いじめ調査委員会(第8章(46条~53条))
知事の附属機関として設置され、道教育委員会、学校法人又は私立学校が行った重大事態に関する調査の結果に対し、必要な場合に再調査を実施する。