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立法事実から見た条例づくり

2016.07.11 政策研究

北海道いじめの防止等に関する条例(上)─いじめ問題をどのように認識し、いかに対応するのか─

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3 法の制定

 2011年に滋賀県大津市で市立中学校の女子生徒のいじめ自殺事件が起きた。この事件は、校内で発生していた悪質ないじめを学校側が十分に把握しておらず、更に、いじめの実態把握のために行ったアンケート調査の一部を隠蔽した事実が発覚し、社会に大きな衝撃を与えた。2012年暮れの衆議院総選挙で大勝した自民党の第2次安倍内閣は、教育再生実行会議を設置し、同会議は、「社会総がかりでいじめに対峙していくための法律の制定」を提言した。一方、国会では与野党が協議を重ね、議員立法として、いじめ防止法案が国会に提出された。同法案は国会で可決・成立し、2013年6月に公布され、同年9月28日から施行された。
 個々の条文の表現が説明調でやや冗長に感じられるのは、妥協のため、各党・会派・議員の主張を総花的に並べたものにならざるを得ない議員立法の性格によるものと思われる(2)。法の内容を見ると、これまでに文部科学省通知で示してきたものがほとんどである。しかし、単なる助言・指導である通知(行政規則)と異なり、法律には法的拘束力があり、各学校は、いじめ問題により厳しい対応が求められることになる(3)
 以上の経緯で制定された法は、6条で「地方公共団体は、基本理念にのっとり、いじめの防止等のための対策について、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する」と規定し、自治体の一般的総合的な責務規定を置いている。また、法は、地方公共団体の具体的な責務として、「財政上の措置等」(10条)、「地方いじめ防止基本方針の策定」(12条)、「いじめの早期発見のための措置」(16条2項)、「関係機関等との連携等」(17条)、「いじめの防止等のための対策に従事する人材の確保及び資質の向上」(18条)、「インターネットを通じて行われるいじめに対する対策の推進」(19条2項)、「いじめの防止等のための対策の調査研究の推進等」(20条)、「啓発活動」(21条)、「学校相互間の連携協力体制の整備」(27条)等を規定している。
 加えて、法14条1項は、いじめの防止等に関係する機関及び団体の連携を図るため、条例の定めるところにより、学校、教育委員会、児童相談所、法務局又は地方法務局、都道府県警察その他の関係者により構成される「いじめ問題対策連絡協議会」を置くことができる旨規定している。このいじめ問題対策連絡協議会は、任意設置主義がとられているものの、いじめの防止等の中核的組織となることから、条例措置が求められることになろう。同条2項は、都道府県のいじめ問題対策連絡協議会が、都道府県の区域内の市町村が設置する学校におけるいじめの防止等に活用されることを想定している。
 また、同条3項は、教育委員会といじめ問題対策連絡協議会との円滑な連携の下に、いじめの防止等のための政策を実効的に行うために必要があるときは、教育委員会に附属機関として必要な組織を置くことができると規定している。この場合も条例制定が求められることになる。

4 条例の制定

(1)どのような条例を制定するのか
 北海道では、2006年に小学校で、いじめによる自殺事件が発生し、その後、道教育委員会では重点的にいじめ問題に取り組んでいるが、大きな改善が見られない状況にある。そこで、法の制定を受け、北海道として法のメッセージを全面的に取り込む形で、最高の規範を用いて総合的かつ効果的に対策を推進することを内外に宣言することとした。条例周知のパンフレットには、北海道が子どものいじめをなくしていくために、全国に先駆けていじめの防止に関する条例を制定したこと、条例は法で努力義務とされている規定を全て義務規定にし、北海道におけるいじめの防止に向けた取組をより厳格に推進することを述べている。
 法の制定を受けての各県の対応は、総合条例で対応するものと附属機関設置条例で対応するものとに分かれている。長野県教育委員会事務局心の支援室が2014年11月6日現在の法に基づく各都道府県の条例制定状況をインターネットで公開している(4)。それによると、総合条例で対応しているのが北海道(54条構成)、東京都(13条構成)、千葉県(23条構成)の3都道県であり、2015年に制定した長野県(16条構成)が4番目となっている。そのほかの35府県は附属機関設置条例で対応している。後者のケースでは、高知県は、いじめ防止対策推進法施行条例(35条構成)とし、1条は趣旨規定となっている(5)。山梨県(24条構成)、徳島県(23条構成)も同様である。

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