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立法事実から見た条例づくり

2016.06.10 政策研究

京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例(下) ─動物愛護と餌やり禁止─

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(3)条例の合理性
 本条例の規定において、一番注目を浴びているのが、不適切な給餌の禁止等(9条)である。
 条例9条2項において、「市長は(中略)適切な給餌の方法に関し市民等が遵守すべき基準を定めることができる」としており、基準の大まかな内容については、「野良猫へ餌を与える方に守っていただきたいマナーについて」を定め、届出制度の主旨や概要についても記載している。
 さらに京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例第9条第2項の規定に基づく適切な給餌の方法に関し市民等が遵守すべき基準(平成27年4月1日京都市告示32号)及び京都市野良猫への給餌に係る届出掲示制度実施要綱を定め、条例と同様に平成27年7月1日から施行又は実施している。
 この基準は、環境省の「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン(平成22年2月)」における「地域猫」の要件に準拠して、条例2条4号に規定する野良猫に対し、継続的に又は反復して給餌(給水を含む。以下同じ)を行うものに適用する。ただし、この基準に定める方法によらない給餌(以下「基準外の給餌方法」という)であっても、基準外の給餌方法によることについて、給餌を行う場所の周辺の住民(以下「周辺住民」という)の理解の下に行われていると認められるもの又は基準外の給餌方法によることが周辺住民の生活環境に支障を生じさせることを防止するうえで合理的であり若しくは支障を生じさせるおそれがないと認められるものにあっては、この限りでないとしている。
 このように給餌自体を何ら禁止しているものではないのであるが、一部には、給餌そのものが禁止されているとか、規制内容が曖昧で、周辺の住民の生活環境に悪影響を及ぼすような給餌の中身が具体的に示されていない、ふん尿などの野良猫被害に遭っている猫嫌いの中から拡大解釈する人が出てくるおそれがある、問題のない給餌の方法を差し示すべきであるとの意見(25)もあるが、京都市はかなり丁寧に周知・解説を行っており、それほどの問題はないと思われる。
 実は、すでに東京都荒川区は、荒川区良好な生活環境の確保に関する条例(平成20年12月17日条例23号)を制定し、その中で、給餌による不良状態の禁止(5条)、廃棄物等による不良状態の禁止(6条)について規定し、食べ残した餌の放置などを禁じ、期限内にやめない場合、5万円以下の罰金を科すという全国初の条例を制定している。これまで命令や罰金を科したことはないが、改善勧告は3件(同一ケース)出したという(26)
 このときも、新聞各紙で取り上げられたこともあり、「餌やり禁止条例」と、区内外からかなりの反響があった。
 コラムニストのオバタカズユキ氏(27)が指摘するように、「しょせんは好き嫌いの次元の話なのに、動物愛護には過剰な『正義』が伴いがちで、その『正義』を敵視する『正義』も強固に存在する。こういう言ったら『百害あって一利なしの問題と一緒にするな!』とお叱りを受けそうだが、動物愛護の問題はすぐ喧嘩になりやすい点で喫煙問題と似ている。(中略)
 どちらの側も、極論を言う人は実のところ全体の中で少数派。けれども、小数派だからこそというか、もの言う際の声がでかい。彼らが勝手に言い争いをして完結してくれるなら構わないのだが、(中略)世の中全体のギスギス感がそのぶん強まっているようなところもある。

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