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立法事実から見た条例づくり

2016.05.10 政策研究

京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例(上) ─動物愛護と餌やり禁止─

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大阪経済法科大学法学部教授 藤島光雄

1 はじめに

 今回は、京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例(平成27年3月27日条例76号)を取り上げる。
 この条例の名前を聞いて、北九州市のモラル・マナーアップ関連条例を連想する人や荒川区良好な生活環境の確保に関する条例(平成20年12月17日条例23号)を思い浮かべる人がいるかもしれないが、この条例の議案上程時の当初の条例案は、「京都市動物による迷惑等の防止に関する条例」であり、議会で修正の上、可決されてこの条例名になっている。
 本条例制定に至る過程も含めて非常に興味深いものがあり、その立法事実について検討を加える。

2 条例制定の背景・経緯

 本稿では、紙数の制限もあり、本条例の対象とする動物の中でも猫(とりわけ野良猫)に焦点を当て検討を加えることとする。

(1)動物愛護と京都動物愛護憲章の制定
 現在、動物の虐待及び遺棄の防止、動物の適正な取扱いその他動物の健康及び安全の保持等の動物の愛護に関することを目的として、「動物の愛護及び管理に関する法律」(以下「動物愛護管理法」という)が、昭和48年に議員立法で制定されているが、制定当時の名称は、「動物の保護及び管理に関する法律」であり、わずか13条からなる法律であったが、平成11年の改正で全31条となり、平成17年の改正で全50条にもなる法律になっている。
 同法が我が国の動物愛護管理に関する基本法であるから、その充実ぶりはとりもなおさず、動物の愛護と管理の問題が単なる「モラルの問題」ではなく「法の問題」になってきていることを示している
 法律の内容は、動物の愛護と動物の適切な管理(危害や迷惑の防止等)に大別でき、対象動物は、家庭動物、展示動物、産業動物(畜産動物)、実験動物等の人の飼養に係る動物になる。
 また、動物愛護管理法5条の規定に基づき、環境省は「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針」(以下「動物愛護管理基本指針」という)を平成18年10月31日に策定している。この基本指針は、動物の愛護及び管理に関する行政の基本的方向性及び中長期的な目標を明確化し、計画的かつ統一的な施策の遂行等を目的とし、都道府県は基本指針に即し、地域の実情に応じて「動物愛護管理推進計画」を策定することとされている。
 この指針には、動物の愛護の基本は、「人においてその命が大切なように、動物の命についてもその尊厳を守るということにある」こと、動物の管理に関しては、「人と動物とが共生する社会を形成するためには、動物の命を尊重する考え方及び態度を確立することと併せて、動物の鳴き声、糞尿等による迷惑の防止を含め、動物が人の生命、身体又は財産を侵害することのないよう適切に管理される必要がある」こと、そのためには、動物の愛護及び管理の考え方を、国民的な合意の下に形成していくことが必要であるとしている。
 京都府では、動物の飼養管理と愛護に関する条例(昭和46年10月29日京都府条例30号、平成12年条例41号により、動物の飼養管理に関する条例から改称、以下「府条例」という)が制定されており、平成20年3月には、人と動物が共生する社会の実現を目指して「京都府動物愛護管理推進計画」を作成し、平成25年8月に動物愛護管理法改正に伴い動物愛護管理基本指針が見直されたことにより本推進計画を一部見直し、種々の事業に取り組んでいる。
 一方、京都市においても「京都府動物愛護管理推進計画」が策定されたことを受け、これまでの取組を総括し、今後の動物愛護施策のさらなる充実を図るため、①従来の動物管理行政から動物愛護行政へのステップアップ、②獣医師会、動物取扱業者、動物愛護団体、市民、行政など関係するすべての人々による取組、③計画策定からその進行管理、評価などの各段階における情報公開と市民参加の推進などの新たな視点を加え、京都市特有の都市環境や地域事情に即したより具体的な施策等について「京都市動物愛護行動計画」(愛称:京(みやこ)・どうぶつ共生プラン)を策定している。なお、この計画は、京都市の基本的かつ総合的な計画とされる「京都市基本構想」及び「京都市基本計画」と調和した分野別計画としての側面を持つものとされている。
 こうした中、平成26年12月12日に、「人と動物が共生できるうるおいのある豊かな社会」の具体的な姿を示すとともに、様々な人々がそれぞれの立場から動物愛護のあり方について自ら考え、積極的に行動するためのよりどころとなる「京都動物愛護憲章」を、京都府と京都市の共同により制定した。
 12月12日を犬と猫の鳴き声になぞらえて、「1(ワン)2(ニャン)の日」として制定し、全国で初めての府市共同で「京都動物愛護センター」を平成27年度に設置することを契機に、府市共同での憲章の制定に向け、平成26年度に有識者や動物愛護団体その他の関連団体の代表者で構成する「京都動物愛護憲章懇話会」から全4回にわたり意見聴取を行うとともに、シンポジウムを開催するなどして制定に向けて検討を進めてきたものである。自治体が制定する動物愛護に関する憲章として、日本で初めてとなるもので、その内容は以下のとおりである。
〈京都動物愛護憲章〉
 わたくしたちは、ここ京都で、四季のうつろいを感じながら、いきものと関わり、その命を尊ぶわが国ならではの暮らしのかたちを千年以上の永きにわたってつむいできました。そして、わたくしたちは、さらに進んで、ここ京都を人と動物が共に暮らすうるおいのある豊かなまちにすることを目指します。
 わたくしたちと同じようにかけがえのない命を持ち、わたくしたちの身近なところで共に生きている動物との関わりについて、わたくしたち一人ひとりが自ら考え、行動するためにこの憲章を定めます。
 わたくしたちは、
1.動物を思いやりましょう。
1.動物のことを学びましょう。
1.動物との正しい関わりを考えましょう。
1.動物との絆を最後まで大切にしましょう。
1.人にも動物にも心地よいまちをつくりましょう。

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